マガジンワールド


FOOD NEWS vol. 03 平野紗季子のMY STANDARD GOURMET 『ツバメおこわ』の蓮の実おこわ

FOOD NEWS
  • RESTAURANT _ 犬養裕美子
  • GIFT _ 真野知子
  • SWEETS _ chico
  • NEW STANDARD _ 平野紗季子
vol. 03
平野紗季子のMY STANDARD GOURMET
『ツバメおこわ』の蓮の実おこわ
左・「蓮の実おこわ」(676円)にはナマスとハス茶がつく。右・「バイン・イット・チャン」は1つ(231円)から注文できる。すべてテイクアウト可。
左・「蓮の実おこわ」(676円)にはナマスとハス茶がつく。右・「バイン・イット・チャン」は1つ(231円)から注文できる。すべてテイクアウト可。
 
かもめとかことりとか。鳥の名前の食べもの屋さんはなぜか幸せな空気をまとっていることが多いけれど、つばめの名前が舞うこの店もやっぱりそうだった。『ツバメおこわ』はベトナムのおこわを専門にした食堂。ハノイやホーチミンの街角の写真が貼られたアルバムみたいなメニューには、主食からデザートまでいくつものおこわが並ぶ。

代表メニューは蓮の実おこわ。蓮の葉の甘くて爽やかな香りをまとった湯気をかきわけて頬張る一口は、蓮の実がぽっくりと弾け、きくらげやチャーボン(鶏肉や豚肉を裂いてニョクマムで炒めたもの)が騒ぎ、広大なおこわがそれらをむっちりと支えてくれる。辛い醤油をたらっとかければ、紅白な酢の物をシャキシャキ噛めば、生まれ変わるおこわの表情に食欲は止まらない。

ちょっと無理してだって頼みたいベトナム餅も大きな楽しみで、丸もちのバイン・イット・チャンはもっちもち食感の中に、緑豆(旨味たっぷり卵の黄身みたい)、ひき肉、えびが潜んでる。

ベトナムが大好きな店主のお姉さんが、ちゃんとベトナムで修業をして、日本の人があんまり知らないおいしいベトナム料理をどっさりこしらえてくれる。それはいままで出会ったこともない新鮮な味なのに、不思議とすとんと腑に落ちて、蓮茶の残り香はいつまでも愛おしいのだった。

ひらの・さきこ/1991年生まれ。食ブロガー。4/23に初の著書『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)が発売に。
 
ツバメおこわツバメおこわ
東京都杉並区高円寺北2-39-15  
☎03・6321・3207 11:30~21:00 水曜休 
おこわは全部で4種類。デザート類も充実。
http://xoiyen.exblog.jp


写真・清水奈緒 文・平野紗季子