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FOOD NEWS vol.31 平野紗季子のMY STANDARD GOURMET 『みかさ』のイカエビ入り ソースやきそば

FOOD NEWS
  • RESTAURANT _ 犬養裕美子
  • GIFT _ 真野知子
  • SWEETS _ chico
  • NEW STANDARD _ 平野紗季子
vol.31
平野紗季子のMY STANDARD GOURMET
『みかさ』のイカエビ入り ソースやきそば
イカエビ入り ソースやきそば並¥850 驚きの美味しさなのに、ちゃんと懐かしい。「研究しすぎると正解がわからなくなるんですね。そうするとUFO焼きそば食べてね。初心に帰るんです」。その秘密はUFOにあったのか。
イカエビ入り ソースやきそば並¥850 驚きの美味しさなのに、ちゃんと懐かしい。「研究しすぎると正解がわからなくなるんですね。そうするとUFO焼きそば食べてね。初心に帰るんです」。その秘密はUFOにあったのか。
 
じゅわ〜〜。店に入った瞬間、鉄板に落ちたソースの、胃の奥に染みわたる香りと音が厨房から響いてくる。うっとりする。ああこれは、日本人にとって最も分かりやすい色気の味かも…。珈琲と古本とカレーの街に、新しい香り。神保町『みかさ』は焼きそばの専門店だ。

うねるような自家製ちぢれ太麺に、入り乱れてカリッとした豚肉、歯ごたえのイカエビ。上からはどっさりと白髪葱に半熟卵が輝いて、全体を甘辛い自家製ソースが生き生きと包んでる。これはもう大変。「踊る焼きそばです」。店主の福島三郎さんは嬉しそうに語る。

福島さんは、熊本の焼きそば屋の息子として生まれ、子供の頃から鉄板の前でヘラを操る生粋の焼きそば少年だった。身に染み込んだ焼きそば愛。だからこそ彼は人生を通して「本当に感動できる焼きそば」を求めてきた。「世の焼きそばの多くは、作り手の都合で油を多くしたり、蒸し麺を使うことがあるんです。僕は妥協したくなかった。だって本当は釜茹での麺をすぐに焼くのがうまいから」「焼きそばの〝焼き〞っていうのは、焦げ付かせて香りを引き出すことなの。苦みにならない絶妙なところで。炒めるんじゃダメ」。焼きそばをなめてはいけない。福島さんの焼きそば哲学と愛情は深い。「だって僕、おいしそうだなあと思いながら焼いてるんですよ、いっつも」

ひらの・さきこ 1991年生まれ。食ブロガー。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
 
みかさ
みかさ
東京都千代田区神田神保町2-24-3
☎03・3239・5110 11:00~22:00(麺が切れ次第終了) 第1・第3日曜休
写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子