マガジンワールド


From Editors No. 762 フロム エディターズ

From Editors 1

そういえば自分もブルータス持ってニューヨークを旅したな、って。

「雑」な事柄のひとつ。ブルックリンの奥地、ブッシュウィックのライブハウスで髪を切った。ライブハウスの一角にあるバーバーで、おしゃれなのかなんなのか、それよりもバーバーの免許持ってるのかこの人。なぜなら本職はラジオのDJですって。腕はなかなか、値段は言い値。ちなみに写っているのは私ではありません。

今年のニューヨークは猛烈に暑かった。ヒート・ウェーブにより連日焼けるような暑さ。湿度のない分それは文字通りチリチリと肌を焦がした。帰国後の東京の夏が随分と涼しく感じられたものだがその割にほとんど日焼けしなかった。編集部で「焼けたね」と誰からも言われなかったのが口惜しい。あれだけ炎天下を歩きまわったというのに。

空港から市内へは地下鉄やバスで移動するのが好きだ。それはニューヨークに限ったことではない。地下鉄やバスが好きというよりはそこに暮らす人たちに混じることで少しでも早くその国の空気を吸いたいのだと思う。昔から家電や靴を買うと家まで待ち切れずに帰りの電車で箱を開けてしまう性分だが、自分の中では、その「急く」気持ちにも似ている。

今回は仕事で荷物も多かったのでマンハッタンまではタクシーに乗るつもりだったが、行列ができていたから、と自分に言い訳をしてさっそくMTA(市営地下鉄)でいくことにした。なんと説明していいのか、ニューヨークの改札は大きな鉄の三本指が回転する仕組みのためスーツケースを通すのが大変むずかしい。案の定、回転した指のひとつにスーツケースがっちりハマり抜けるのに大変苦労した。やっとの思いで地下鉄に乗り込むと週末の夕方だったせいかビーチ帰りの若い男女が多く乗っていた。西陽にあたり潮焼けしたブロンドヘアがまぶしい。そういえば夏のニューヨークは初めてだった。落書きのビル、流れる景色を見るでもなく眺める。そういえば13年前はバスでいったことを思い出す。

当時はまだ学生。『地球の歩き方』の言うことを聞かずに空港からバスに乗り込んだ。ブルックリンの知人宅に行く予定だったがはじめてのニューヨークで左右わからない。適当に降りるとそこは125丁目の中心部で後に知人からは「初めてなのに」「夜なのに」「ハーレムなのに」とあきれられた。その知人はブルータスのニューヨーク特集をコーディネートした直後で、私もその号を持って遊びにきていたのでその話でひとしきり盛り上がった。

今こうして、ニューヨーク特集をブルータスで作ることになるとは思いもよらなかった。当時と比べニューヨークは随分変わったし雑誌の作り方も変わったと思う。それでも私の好きなニューヨークは流行とか他人がどうとかじゃない雑多な部分で、それは雑誌の「雑」にも似た面白さだと勝手に思っている。今回はほかのザッシでは取り上げないような「雑」な事柄をたくさん紹介した。

●町田雄二(本誌担当編集)


From Editors 2

NY最長の行列の先にあったものとは?

この日の先頭はニュージャージーから2回目の参戦という3人組の奥様方(椅子持参)でした。クロナッツが何たるかは本誌で。それぞれのNYを自由に書き込めるよう、マンハッタンのほぼ全域&ブルックリンの広いエリアをカバーしたMAPも旅にお役立てください。これひとつ持って街で遊べるよう工夫しました。

とあるスイーツが、NYで大ブレイクしているらしい。

特集のリサーチ中、方々からその噂を聞き、食べるのを楽しみにしていたものがある。 “クロナッツ”というNY発のそのスイーツは、アメリカ人の大好物“ドーナッツ”と、フランス人が生み出した伝統の“クロワッサン”を掛け合わせたお菓子。パリの〈フォション〉とNYの3つ星レストラン〈ダニエル〉を経て、2011年ソーホーに自身の店〈ドミニク・アンセル・ベーカリー〉をオープンした実力派、ドミニク・アンセル氏が考案したものだ。パッと見はドーナッツ、断面はクロワッサン。ありそうでなかった新しいデザートにネットと口コミで火がつき、今NYで最も長い行列ができる店になっているという。これは美味しいに違いない……。東京での打ち合わせの最中から期待は高まり、クロナッツ話でひとしきり盛り上がりまくり。日本でも早々と、これを真似た商品を売るパン屋まで登場しているらしい。必ずや東京で待つスタッフに、本家本元のクロナッツの味を届けなければ!と心に誓い、NYへと飛び立ったのだった。

さて、NYで。ある朝9時半の待ち合わせの前に買えるかな~♪と、軽い気持ちで店に立ち寄ったものの、すでに時遅し。クロナッツのポストカード(買えなかった人のために、お土産で売られている)だけを悲しく眺めて、退散……。当然だ。これは本気で取り組まねばならない(!)と、帰国日にようやく奮起し、朝6時起きで店へ。3時間ほど並んだ末にギリギリで手に入れたのが、本誌P.23のクロナッツ!(すでにプレーンは売り切れ)。ひとり2個までしか買えない、1日限定数しか販売されないそのスイーツを求めて、先頭の見えない長い列に並んだ我々の苦悩がお分かりいただけたら嬉しいのだが……。(本誌にパノラマで掲載している写真は、行列のほんの一部なのだ!)あまりに入手困難なため、ゲットしたクロナッツを列の最後の方の人に数倍の値で売る悪い人もいたくらいです(実話)。とにもかくにも、ようやくゲットしたクロナッツ。その味は感動のあまり、いまいち覚えていません(嘘)。是非みなさんにもニューヨーカーに混ざって行列に並び、このムーブメントを体感して欲しい! そう思えるエンターテイメントな体験でした。

ところで、この貴重なクロナッツを、もうひとつの名物クイニーアマンとともに編集部へ持ち帰ったのですが、クロナッツ話でさんざん一緒に盛り上がった副編集長がクロナッツだと思って食べていたのがクイニーアマンだったこと……。それだけが無念です。また、並びに行かなければ!

● 大池明日香(本誌担当編集)