マガジンワールド


From Editors No. 763 フロム エディターズ

From Editors 1

ずっと実現したかった解体企画が現実のものに。

解体をしてくれた西岡毅先生はモデリスト。デザイン、パターン、裁断、縫製などを1人でこなし、オールハンドでスーツを作る職人だ。

今回の目玉企画でもある「美しい解体」。〈サンローラン〉のアイコンともいえるスモーキングジャケットを、バラバラに解体しました。その様子は特集の両観音ページにてお楽しみください。実はこの企画、いつか実現させたいと思い温めてきたものでした。これには2つのアイデアソースがあったんです。

ひとつは30年くらい前に某インテリア雑誌(現在は休刊)で連載していた、家具を壊してしまう企画。ただ壊すのではなく、検証し、良い点を見つけたり、時には忌憚のない意見を述べたり。読み応えのある素晴らしいものでした。調べれば彼らの企画も『暮しの手帖』から着想を得たとか。もうひとつは、子供が観ていた「デザインあ」(NHK Eテレ)という番組。これはご覧になった方も多いでしょう。握り寿司をバラして、お米一粒ずつになるまでストップモーションで並べていく様が秀逸で、脳裏に焼き付いて離れませんでした。

今回の特集テーマが「ファッションの細かいこと」。意味のある解体にするために周到な準備が必要でした。実際に撮影に向けて動き始めたのは数ヶ月前。プレスの方を通じて、本国からの許可を得る必要がありました。こちらの企画意図を理解いただき、ご尽力をいただいたPRマネージャーの松沼リナさん、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼したい人たちが他にも。解体に協力してくれた西岡毅先生とコーダ洋服工房さんの仕事ぶりは職人そのもの。サンローランのスタッフも息を呑む手際の良さでした。そして、取材を担当したスタッフは、解体されたパーツの1枚ずつにアイロンをかけ、美しくピンで刺して撮影に望みました。解体の過程を録画した10時間弱のビデオを編集しながら知り得たことは、ぜひ両観音ページ後の2ページをご一読ください。

●鮎川隆史(本誌担当編集)


From Editors 2

親愛なる“オヤジ”5人のおしゃれ話は必読です。

吉田克幸さんは自身が経営する銀座のポーンショップで取材。世界中の貴重な骨董品が並ぶ。

野村訓市さんが、各界の大御所たちにおしゃれ話を聞くインタビューページを担当しました。ご登場願ったのは、ポータークラシック代表の吉田克幸さん、スタイリスト山本康一郎さん、馬場圭介さん、写真家の小暮徹さん、建築家の伊東豊雄さん。いずれ劣らぬ、おしゃれで濃いメンバーが揃いました。

当初は、もの選びや着こなしのルール、愛用の品々、コレクションについて“細かく”話してもらおう、と考えていたのですが、歴戦の強者たち、一筋縄ではいきません。

「こだわりなんてないよ」「細かいことは気にしないな」「好きなものの理由? わかんない」。果てに「もう(←ここがポイント)あんまりファッションに興味がない」まで。直球の質問はだいたい笑顔でかわされます。そこを野村さんが手変え品変え、引き出していくのですが、たとえ意図通りの答えはもらえなくとも、引き込まれていく。なぜなら、皆さん話が面白いから。ファッションの話から広がる、人生論や仕事論。取材を進めていくうち、はたと気づく。彼らのいまの趣味嗜好にまつわる“細かい話”はあまり必要ではない。さまざまな経験談と、その経験を重ね達した深い考えこそ価値があるのだ、と。

企画タイトルは「オヤジの深濃ゆいおしゃれ話」。“オヤジ”。時にネガティブにも聞こえるこのフレーズを、今回はあえてタイトルに使わせてもらいました。長時間のインタビューも厭わず、お話してくれた魅力的な先輩たちに、親愛と尊敬の念を込めて。

●星野 徹(本誌担当編集)