マガジンワールド


From Editors No. 764 フロム エディターズ

From Editors 1

ほめて、ほめられて、そしてまた撮る。写真がうまくなるコツって、これだったんだ!

ほめられる写真家ってのは、フォトジェニックでもある。こちらは、今回大特集した、ブルータスでお馴染みの伊藤徹也さんの撮影シーン。犬に愛されすぎているこの男のページ裏話は担当ライターの村岡俊也から、どうぞ。

ブルータス最長の連載企画『人間関係』。92年から続いており、今年で21年目。巨匠・篠山紀信が総勢483組を一度も休むことなく撮り続けてきた。ボクがこの連載の担当になって6年目の今も、百戦錬磨の仕事ぶりは、まいど“物語のある現場”。撮影秘話、そして篠山紀信名語録だけで、1冊の本ができるくらいなのである。その中から、ひとつエピソードを。

現在、メジャーリーグで活躍する青木宣親選手を撮影する時のこと。シーズン200本安打を打つなど、押しも押されぬTOP PLAYERの青木選手に、先生(ボクたちは、篠山さんのことをこう呼ぶ)が、はじめの挨拶で「青木さん、野球うまいですね〜」と言ったのだ。“青木選手が野球がうまい“言わずもがな、なはずなのだが、先生は言った。すると青木選手が満面の笑みで「ありがとうございます!」と返し、撮影は始まった。撮影後、「プロになると、みんなストレートにほめてもらえない。当たり前なことこそ、きちんとほめたほうがいい。自分も現場で『写真がうまい!』って言われると嬉しくて、がんばれるんだから」と先生が言った。数えきれないほどの写真を撮り続けてきた男が。たしかに、いまだにほめられると嬉しそうに写真を撮っている。ほめられる、それが巨匠たる所以であり、いい写真を撮る原動力なのだ。

FacebookやInstagramなど、自分が撮った写真を他人にほめてもらえるチャンスがいま、たくさんある。『いいね!』をいっぱいもらえれば、それは、また次に撮る写真がうまくなる肥料となるはずだ。

ほめられる写真を撮ろう、そして写真をほめよう。みんなで一緒に写真、うまくなろう!

●杉江宣洋(本誌担当編集)


From Editors 2

ボウズで派手で最高なカメラマン。伊藤徹也が愛される理由。

『旅に行きたくなる』特集。ラオスで、造花の陰に隠れて写真を撮ることを要求する伊藤カメラマン。Tシャツと坊主頭が眩しい。こうやってスキを作って、懐に飛び込んでいく。

およそ9年前、憧れのブルータスでの初仕事で撮影をお願いしたカメラマンが伊藤徹也さんだった。『サーフィン』特集で、鎌倉の海でサーファーのスナップを撮るという仕事。撮影前に言われた「15時以降の光じゃないと撮らないから」という言葉にビックリした。マジか。ブルータス、やっぱり違うわ。今になってみれば、海から上がってきたサーファーの笑顔を撮るためには、夕方の斜めからの光が必要で、やわらかいニュアンスを出したかったということはすんなり理解できる。けれど、写真もろくに知らない駆け出しのライターには、伊藤さんの言葉は少し怖かった。

『サーフィン』特集以降、伊藤さんとは国内外、本当にいろんな場所を旅した。『ヨガ』特集ではインドの修行寺のシャワーもない部屋で寝起きし、『COOL JAPAN』特集では、ロシアの赤の広場でコスプレギャルを撮影していて警察に捕まりそうになった。撮影の度、伊藤さんは少しずつ写真を撮るときのポイントを教えてくれた。本人は教えている気なんてなかっただろうけれど。

伊藤さんと仕事をしたことのあるライターや編集者は、必ずと言っていいほど、被写体へのしつこさや絵作りに対する細やかさに、閉口しつつ尊敬の念を抱いて、夜の飲みっぷりにその尊敬を打ち砕かれて、好きになる。背が低くて、頭はボウズで、派手な服装をしている筋肉質のオッサンに、どうしてあんなにカッコいい絵が撮れるのか。そのギャップに仕事を頼まずにはいられなくなる。

伊藤さんは、カメラマンだ。自身で作品を発表しているわけではない。必然、誌面でインタビューが取り上げられることなどない。けれども、少なくともこの9年間、誰よりもブルータスで写真を撮ってきたのは伊藤さんなのだ。ならば、写真特集で話を聞くべきは伊藤さんの写真術についてなんじゃないだろうか。そんなシンプルな発想から、ブルータス誌面を作例とした伊藤さんのページを作った。事務所に何度も通ってふたりで写真を選ぶ作業は、この9年間を振り返るような、ちょっとセンチメンタルな時間だった。

初めてのサーファーのスナップから今年の『旅に行きたくなる』特集のラオスまで、伊藤さんから僕が学んだ9年間の写真についての諸々が詰まったページになったと思う。とても実践的で、写真を撮ることの楽しさを感じることができるはず。伊藤さんのページを担当することができるなんて、とても幸せな仕事だった。

●村岡俊也(本誌担当ライター)