マガジンワールド


From Editors No. 774 フロム エディターズ

From Editors 1

長いトンネルの先に
広がる異空間への旅。
半年に1度のファッション特大号。いつも1冊を作り終える前に、次の号のテーマを考え始めている。言葉を集めて、絞り込んで、あれやこれやと捻り出す。実際の撮影が始まるのはずいぶん先の話だけど、長いトンネルを歩いているような気分になることも。いわゆる月刊ファッション誌のペースを思えば贅沢な話なのだが、時間があると考えが散らかったり、不安にもなる。

ところで今回、テーマを「勝手に着やがれ!」に決めたとき、真っ先に頭に浮かんだ人物がいる。その気になる人とは、パリコレの会場や、青山の路地、そして地元の駅(!)など、いろいろな場所ですれ違う機会があった。スタイリングは常に独特。東京の街を行く所謂“オシャレさん”とは一線を画し、他者の追随を許さない圧倒的なオーラを発していた。真似できない格好良さというものは、少し遠巻きに観察したくなるもので、距離を置いて1ブロックほど跡をつけて歩いたこともあった。「あの人のルール」(p120)で取材させていただいたジャーナリストの平川武治さんがその人。

なにせ電話を持たない方なので、連絡手段は数日おきにチェックするというPCメール。あとは、ご自宅に赴くしかない。やり取りをしたところ、やはり同じ町にお住まいということが判明。地元気分で多少、気分が緩んでいました。まず最初に伺ったとき、玄関アプローチで度肝を抜かれることに。50mほどあるトンネルは、照明もなければ、壁も削りっぱなし。何度通ってもそこは別世界への入り口のよう。通り抜けた先に突然広がる竹林。その中のご自宅で待つ平川さんもまた、異次元の人だった。

人と場所の印象が、こうも象徴的に繋がるものだろうか? 長くも短いそのトンネルを行き来するたびに、私はたくさんの知らない話を聞き、刺激を受け、ヒントを貰った。特集を作るための一筋の光を見い出したような気がする。時間を忘れて聞き入ってしまう話の数々から、ほんの一部をページにまとめてみました。トンネル前で撮影に応じてくださった平川さんの“勝手な”スタイルにも注目していただきたい。

「太陽の角度が変わるとね、光の筋がパァーっと入って来て、サァーっと明るくなるときがあるんですよ」という平川さんの言葉が印象的。通って2回目で、その瞬間を捉えたのがこの写真。異次元トリップできそう!?
「太陽の角度が変わるとね、光の筋がパァーっと入って来て、サァーっと明るくなるときがあるんですよ」という平川さんの言葉が印象的。通って2回目で、その瞬間を捉えたのがこの写真。異次元トリップできそう!?


●鮎川隆史(本誌担当編集)
 

From Editors 2

ルールは自分で作るもの。
この春は、勝手に着てこそ面白い。
ファッションには、基本的なルール(セオリー)はあると思います。例えば色合わせや素材の相性だったり、ネクタイとラペル幅の関係といった組み合わせ方だったり。スーツの着こなしなんて、その最たるものですね。

もちろん、知っておいた方がいいと思うけど、それにとらわれすぎてもつまらない。どんなに正しい組み合わせで隙がない着こなしでも、ガチガチの着せ替え人形みたいに見えたら、おしゃれでもなんでもないですからね。

「オリーブの上着はなるべく買わない。なぜなら穿くパンツがほとんど軍パンなので」
「ほぼスエットパンツで生活しています。それで仕事にもパーティにも結婚式にもでます」
「新しいシャツは、一度水を通してアイロンをかけてからはじめて袖を通す」

著名人にアンケートで伺った、「勝手なるファッションのマイルール」の一例です。どの方のコメントかは誌面で確認していただきたいのですが、みな個性的で、おしゃれな方々ばかり。着こなしに関してのみならず、クローゼットの整理の仕方にこだわりがある、なんて人も。18人18様のマイルール。あえて共通点を挙げるなら、①セオリーにはあまりとらわれず自由かつ勝手な組み合わせで、②服が自分に馴染む心地よさを意識している、ということでしょうか。

みなさんのマイルールはなんですか? もし、心当たりがないようでしたら、この春は自分こそ、というスタイルを見つけるチャンスかも。花柄やリネンなど個性を発揮できるアイテムも揃っていますし。

余談ですが、自分はこの春、気づいたら紺のアイテムばっかり買っていました。

実にオーソドックスなセレクション。
これをどうやって勝手に着るのか!?

この春、自分への課題です。

突然ですが、撮影中のヒトコマ。ファッションエディター、松本有加氏。得意技は撮影プロップの自主制作。作業時には軍パンに履き替える、というのが彼のルール。
突然ですが、撮影中のヒトコマ。ファッションエディター、松本有加氏。得意技は撮影プロップの自主制作。作業時には軍パンに履き替える、というのが彼のルール。


●星野 徹(本誌担当編集)