マガジンワールド


From Editors No. 775 フロム エディターズ

From Editors 1

東京がまた面白い。
それに気付いてますか?
昨年のニューヨーク特集に続く『ブルータス』のシティガイド第2弾、今度は東京について。「見る、買う、食べる、101のこと。」ということで、ショップ、レストラン、スーパーマーケット、博物館、バーなど、いま様々な方面で起きている「面白い東京」を合計101のコラムとして紹介しています。

実をいうと企画がスタートした時、僕は「8のこと。」しか思いつかなかった。面白さの端っこもつかめないというか。普段自分が暮らしている街だから客観視しにくいのはあるけれど、これはダイジョウブなんだろうか。後々分かってきたのは、いま面白いことの多くはまだ「芽」のような状態で、確実に顔を出しているものの目をこらさないと見つけられない、そんな状態というか。数ヶ月前の自分がそうだったように、東京はいま案外分かりにくいのだ。

今回の僕らの作業は、その芽を集めて、整理して、広めること。101かけて、東京の面白さを再確認してもらう作業といってもいい。初耳な話もたくさんあると思いますよ。ギリギリ、間に合ったものもかなりありますから。

東京がいま面白いか面白くないかと聞かれたら、僕は「面白いよ!」と声高に答えたい。その理由、根拠、新しい芽のカタチをできるだけ多くの人に知ってもらえたらと思います。なんてったって、101個もありますから。


全く余談なんですけど、たまには並んだことのない行列に並んでみるのはどうでしょうか? 「行列の理由を知る」のもなかなか面白い東京の楽しみ方のような気がします。迷ったら並ぶ。これらは銀座〜虎ノ門で。
全く余談なんですけど、たまには並んだことのない行列に並んでみるのはどうでしょうか? 「行列の理由を知る」のもなかなか面白い東京の楽しみ方のような気がします。迷ったら並ぶ。これらは銀座〜虎ノ門で。


●矢作雄介(本誌担当編集)
 

From Editors 2

海外発! が目白押しの中、
東京発に引かれる理由って?
いま、原宿〜表参道〜青山を歩くと、いくつもの行列に出くわします。その行列は、矢作が上に示した銀座〜虎ノ門のランチタイムの行列とは違って、文字通り、朝から晩まで、お店のオープン前から閉店まで続くのです。原宿〜数年前まで青山エリアは、「ファッションやビューティの街」で行列といえば限定品目当ての人達でしたが、ちょっと趣が違っている。行列の先にあるのは、海外発のスイーツ屋さん。イスラエルのチョコレート屋さん、シアトルのポップコーン屋さん、ニューヨークのパンケーキ……5月には、ドラマ『Sex And The City』で世界的に有名になったカップケーキ屋さんも上陸するとあって、この傾向にはますます拍車がかかることが予想されます。青山のスイーツばかりではありません。いながらにして、海外からお店がやってきてくれるのが東京の醍醐味。海外に行かなくても世界で話題の味が楽しめる。もちろん、海外で経験済みなら「やっぱり美味しいね」とか「向こうの方がいいね」なんて比べたりもできる。でも、そんな海外発のお店が目白押しだからこそ、東京発のよさを再認識できたりすることもあります。東京生まれのお店からは、どこか懐かしさとか、安心感とかが感じられる。

今回の東京特集は、目まぐるしく変貌を遂げる東京の最新情報ばかりでなく、最新情報から見えて来た定番の良さ、みたいなこともお伝えできる内容にできたのではないかと思います。

どちらも東京発の、ホッとする味わいです。
老舗フルーツパーラーのスタッフが再結集した赤坂〈ホットケーキパーラーFru-Full〉のフルーツホットケーキ。
老舗フルーツパーラーのスタッフが再結集した赤坂〈ホットケーキパーラーFru-Full〉のフルーツホットケーキ。

青山で15年に渡って手づくりパンケーキを焼いている〈A Piece of Cake〉の姉妹店でパンケーキ専門店の〈APOC〉バターミルクパンケーキ。
青山で15年に渡って手づくりパンケーキを焼いている〈A Piece of Cake〉の姉妹店でパンケーキ専門店の〈APOC〉バターミルクパンケーキ。


●草野 裕紀子(本誌担当編集)
 

From Editors 3

東京の「新しい」から、「定番」まで。
街は蟻の視点で、小さな動きをつぶさに追っていくと面白いけど、いまの東京は空の上からでも確認できるような、例えば日本橋、虎ノ門、渋谷のような、巨大再開発地区が案外面白い。三越新館からコレド室町方面、高さの揃えられた重厚な建築群の壮観なこと。神田万世橋にも明治時代の赤レンガ高架橋にマーチエキュートなる商業施設ができていて、万世橋から眺めると、夕暮れ時の神田川に灯がともる。新橋から虎ノ門には環状二号線と呼ばれる広い道路ができていた。東京の風景はいま刻一刻と変わってきている。

その一方で、町のとても小さな店も魅力的で、例えば「MIN-NANO」のように、自転車好きの店主が好きなものだけを集めて作った、とても偏ったセレクトショップを客の側も面白がる。場所も渋谷でも下北沢でもなく、その間の池ノ上というのも今らしい。松陰神社前の古本屋「nostos books」、浅草橋のプランツショップ「ティランジアガーデン」など、東京中心部から少し外れたところに個人経営の面白い店はできている。

今回はあえて新しくできたところを中心に、いまの東京を俯瞰できる101のネタを集めたが、最後の101番目は東京の定番を紹介した。目黒のとんかつ「とんき」。長く美しい檜のカウンター、店の清潔感、客さばきの素晴らしさ、そして薄くカリッとした衣に包まれたとんかつ。とんかつを食べるのではなく、劇場で舞台鑑賞するような感覚。東京に来て良かったな、住んでいて良かったな、と思える場所。

とんきのとんかつには、はじめからちょこんと1滴だけソースがかかっている。これがどうしてなのか、ずっと気になっていて、今回の取材で聞いてみたのだけれど、ただ習慣でやっているだけなので深い意味や理由はないとのこと。私はソースも塩もかけずにそのまま頂き、最後にソースが "ちょこっと" かかった一切れを食べるのをなによりの楽しみとしている。が、なぜか、撮影したとんかつにはソースがかかっていなかった。むしろ、その理由を聞くべきだったか。はじめは何か理由があったのかもしれないが、いつの間にか習慣になったのかもしれない。1滴のソースの理由を考えているうちに、いまのような食べ方に至ったのだが、私はそれでとても満足している。
とんきのとんかつには、はじめからちょこんと1滴だけソースがかかっている。これがどうしてなのか、ずっと気になっていて、今回の取材で聞いてみたのだけれど、ただ習慣でやっているだけなので深い意味や理由はないとのこと。私はソースも塩もかけずにそのまま頂き、最後にソースが “ちょこっと” かかった一切れを食べるのをなによりの楽しみとしている。が、なぜか、撮影したとんかつにはソースがかかっていなかった。むしろ、その理由を聞くべきだったか。はじめは何か理由があったのかもしれないが、いつの間にか習慣になったのかもしれない。1滴のソースの理由を考えているうちに、いまのような食べ方に至ったのだが、私はそれでとても満足している。


●町田雄二(本誌担当編集)