マガジンワールド


From Editors No. 777 フロム エディターズ

From Editors 1

1枚の旗がもたらしてくれた、
カッコいい部屋づくりのスタート地点。
『居住空間学2008』から数えて、今回の特集で7冊目。計188軒の居住空間を紹介してきたことになる。もちろんすべての取材に立ち会えたわけではないけれど、少なくとも150軒を超えるカッコいい部屋にボクは実際訪れ、住まい手に話を聞き、スミズミまで目を凝らして、写真家とともに撮影する場所を考えてきた。

紹介した部屋部屋すべてに、編集者としての愛情はあるけれど、振り返ってみて個人的に好きな居住空間の傾向があることを今回あらためて知ることができた。

2009年に紹介した彫刻家のRicky SwallowとペインターのLesley Vanceが住むSilver Lakeの家もそのひとつ。そして、今回取材した陶芸家の岩田圭介さん、立体造形作家の岩田美智子さんの家も新たに加わったお気に入りのひとつだ。2つの居住空間の共通点は、カーテン代わりに、そしてインスタレーションとして室内に飾られる旗。イメージは、秘密基地みたいな空間。

カッコいい部屋を見れば見るほど、そこに行き着くまでの苦労とこだわりを聞けば聞くほど、いま住んでいる小さな賃貸マンションに帰っては、とても真似することができない、と凹んでいた日々。でも、自分がイメージするような空間のひな形みたいなものが、ようやく見えてきた。そして、そういう空間に住みたいという欲求が持ち上がってきた。

7年目を作り終え、そろそろ重い腰をあげようと思っている。

読者のみなさんにとっても、自分らしい空間を知るためのきっかけとなる1冊になってくれれば。

初めて写真を買った。今回の巻頭ページ・こばやしゆうさんの撮影を担当した伊藤徹也がハワイで撮影したものだ。サイズは728mm×728mm。大きな旗とはいかないが、まずは、これを飾る場所を考えることから、ボクの居住空間学を始めたいと思う(注・これは展示されていたスペースで、ボクの家ではありません)。
初めて写真を買った。今回の巻頭ページ・こばやしゆうさんの撮影を担当した伊藤徹也がハワイで撮影したものだ。サイズは728mm×728mm。大きな旗とはいかないが、まずは、これを飾る場所を考えることから、ボクの居住空間学を始めたいと思う(注・これは展示されていたスペースで、ボクの家ではありません)。


●杉江宣洋(本誌担当編集)
 

From Editors 2

家の話より猫の話?
取材に無駄話はありません。
15年ほど前のこと、ファッション・プロデューサーのチダコウイチさんは、たまたま通りがかったペットショップで運命の出会いをします。毛足の長い、フワフワの子猫。「こんな生き物がいるんだ!」と目が釘付けになったんだとか。当時彼は交通事故による重傷を負っていて、「包帯ぐるぐる巻きのヨレヨレ状態」。それでも子猫をポケットに入れて持ち帰り、記念すべきその日に、自身の会社も設立。以来、人生の紆余曲折を共にしてきました。名前は美美男。今もフワフワの長い毛をゆらしながら優雅に歩く、美しい猫です。

「居住空間学」の取材なので、もちろん、家のあれこれについて聞きます。飼っているペットの話を聞きに行くわけではありません。でも、犬とか猫の話で盛り上がっている時間もけっこうあります。無駄話? いえいえ、住み手の人となりを知ることができる、とても貴重な時間です。

取材で家を訪ね続けて、個人的には18年ほどになるのですが、なかでも「居住空間学」の取材って、特殊だなあ、と、改めて思います。住み手の哲学というか、住まいに対する思いや「在り方」を知りたいと思うので、家のことと同じくらい、住んでいる「人」のことが知りたい。その人のこと、まるごとなんて到底、知れないわけですが、「大事にしていること」、ひとつだけでいいから、知りたい。だから、住み手が話し出す話なら、家と関係のないような旅の話やコーヒーの話、ぬいぐるみの話にも、じっと耳を澄ますような気持ちで、いつもいます。

チダ家の美男子、美美男くん。取材陣にもまったく臆せず、水場の前に立っていたら「ちょっとどいてくんない?」と言わんばかりに、すーっと来て、存在をアピール。
チダ家の美男子、美美男くん。取材陣にもまったく臆せず、水場の前に立っていたら「ちょっとどいてくんない?」と言わんばかりに、すーっと来て、存在をアピール。


●岡野民(本誌担当ライター)