マガジンワールド


From Editors No. 778 フロム エディターズ

From Editors 1

父親の理想と、母親の真理。
まずは子育てに参加しよう。
もし、子育ての方法に決まった模範解答があったら、どんなにつまらないものになっただろう? この特集を作り終えて改めての雑感。そもそも“答え”を出す必要なんてないはずなのに、ふと気付くと、心のどこかで探している自分がいる。

特集をキックオフするにあたり、子育て真っ最中の男女スタッフ7名が編集部に集合し企画会議。リアルな子育て苦労話もチラホラ混じる。そこで男性ライターMが、「ある教育学者の著書に、3歳までにできるだけ子どもを抱きしめてあげると良い、とあったので実践しています」と愛情たっぷりの発言。「それ読みたい!」と、思った瞬間である。女性陣は口を揃えてこう言うのだ。「男の人は教育本を読む時間と、気持ちの余裕があるのよ。働く母親の子育てって、毎日が精一杯だから読めないもん」。この意見もまた真理なのである。

実際の取材では、30組の親子にルールを聞き、いろんな気付きがあった。「あれ、こんなやり方もアリなんですね」とか「子どもと向き合う姿に余裕があるなぁ」など、子どもとの距離感や愛情の形に、仕事を忘れて関心することがしばしば。成長著しく、毎日変化していく子どもたち。寄り添う親たちもまた、変化を余儀なくされる。そこで編み出された「わたしの子育てルール。」(p20〜29)には、参考になるヒントや、真似したくなるアイデアがたくさん。心の処方箋として、ぜひご一読いただきたい。

私自身も、2歳と4歳の男の子を持つ父親。いろんな人に話を聞いて家に帰ると、やはり子育ての話をしてしまう。妻と意見を交わしても、偉そうに理想論を語る私と、仕事と子育てを両立する妻との間で、ピッタリと意見が合うわけがない。週末に、私が家でゴロゴロしていると、「そんなことで子育て特集を作れるの!?」とチクリ。ぐうの音も出ないとはこのことだ。慌てて子どもを公園に連れて行き、ふと抱きしめてみたりして。なにやってんだか。。。

公園で息子と本気でトレーニングをする、Jazzy SportのMASAYA FANTASISTAさん。父親の理想的な在り方として、お手本にさせていただきます!(写真・三浦安間)
公園で息子と本気でトレーニングをする、Jazzy SportのMASAYA FANTASISTAさん。父親の理想的な在り方として、お手本にさせていただきます!(写真・三浦安間)


●鮎川隆史(本誌担当編集)
 

From Editors 2

ヒューマニズム3部作、
これにて、完結(?)です。
「次のブルータスの特集は“親と子”だよ」と身近な人に話をすると、十中八九、「面白そうだね」と返してくれます。「ブルータスが“親と子”を特集するなんて“時代”だね」なんて言う人もいれば、「ライフスタイル流行りの中、家族はその中心だもんね」なんて、それっぽいことを言ってくれる人もいます。では、なぜ、ブルータスが“親と子”の特集を作ったのか。そう聞かれると、僕なりに2つぐらい答えは用意しています。ひとつは、ブルータスに参加している人たち(30代、40代の作り手、読み手)の生活の中心に“子ども”がいることが多いから(妊活中。もしくは、すぐではないけど、想定している人も含め)。そして、もうひとつは“親と子”というテーマは、すべての人が人生のテーマとして必ず持っているから。それは、親としても、子としても。ファッション、映画、自動車、レストラン…、ブルータスでは多くの看板特集があります。でも、それらとは比にならないほど“自分ごと”にできる特集が“親と子”ではないかと思います。ですから、この特集、読んでもらえればわかりますが、誰もが、自分のための特集じゃないかと錯覚するほど、誰の胸にもキュンとするポイントが散りばめられています。結婚なんてまだまだという学生さんから、子育てが終わって、次は孫をというご年配の方まで。いつもとは様相の違うブルータス、ぜひ、お楽しみください。

最後に、私の個人的なお薦めポイントをひとつ。3年前に『恋の、答え。』という特集を、2年前に『ぼくのともだち。』という特集を、そして、今年、『親と子/こう育てられた。こう育てている』という特集を作らせていただきました。恋、友達、親子。ブルータスのヒューマニズム3部作の完結編としてもお楽しみください。

この春、プラントハンターの西畠清順さんもお父さんになりました。 本誌では、はじめての親子3ショットが掲載されています。
この春、プラントハンターの西畠清順さんもお父さんになりました。
本誌では、はじめての親子3ショットが掲載されています。


●伊藤総研(本誌担当編集)
 

From Editors 3

強烈な草いきれと土の香りに
一体何を感じるのか。
田舎で子育てをする4家族を訪ね、岡山県に足を運びました。中には、岡山市内から2時間ほどクルマを走らせた先にある村に住んでいる家族もいます。彼ら彼女らが田舎で子育てをするメリットとデメリットを聞き、生活シーンを写真で切り取ってきました。

林業が盛んな西粟倉村に暮らす家族を訪れたときのこと。取材と撮影を終え、近くをひとりでふらりと歩いていると、一瞬ですが強烈な草いきれと土の臭いを感じました。そのとき込み上げてきたのは“懐かしさ”でした。私は田舎育ちではありません。東京育ちです。ただ、母親の実家が瀬戸内海の島なので、夏休みには母に連れられて自然豊かな島で時間を過ごしました。西粟倉村の草いきれと土の臭いは、私に島の野原や山遊びを思い起こさせたのです。

自然の力強い香りを感じる機会があまりない都会だけで育てられると、むっとした草いきれや土の香りを「不快なもの、臭いもの」と認識してしまうかも知れません。幼少期にその経験があるかないかで感じ方は違ってくるのではないでしょうか。田舎での子育てがよい、とか、都会はダメ、と言っているわけではありません。ただ、子供の頃の体験や経験は、その後の“感覚”を豊かにするのだと思います。

子育てに正解はありません。そして、親子の数だけ育て方が存在します。不便なことはあるにせよ、「田舎で子育てをする」という選択肢を選んだ4家族の子供たちは自然に対して繊細な感覚を身につけるのではないでしょうか。4歳の娘を東京で育てる私には、彼らの姿が少しだけ羨ましく映るのです。

取材中に飛んできた虫。西粟倉村の子どもたちは見慣れているせいか驚きませんでしたが、東京育ちの私の娘は大騒ぎすること必至です。(写真・中川正子)
取材中に飛んできた虫。西粟倉村の子どもたちは見慣れているせいか驚きませんでしたが、東京育ちの私の娘は大騒ぎすること必至です。(写真・中川正子)


●阿部太一(本誌担当編集)