マガジンワールド


From Editors No. 784 フロム エディターズ

From Editors 1

男にとって、
自分にとって
大切なものとは何か。
手帳を見返してみると、この特集のために松浦さんと最初に会ったのは、去年の12月10日。気がつけば、もう8ヶ月もたつのか。弊誌の編集長と3人、新宿〈中村屋〉で待ち合わせてカリーを食べたのだ。「男にとって一流とは?」「いまこそ男のカタログを作ろう!」と、興奮して話をしたけれど、その頃の僕はまだ「一流」と口にするのが少し恥ずかしかった。一流とはそういう照れも出る、なかなか不思議な単語だと思うのだ。

8ヶ月をかけて、特集「松浦弥太郎の一流品カタログ」はゆっくりと完成したけれど、これは通常よりもかなり長い制作期間。どちらかというと、雑誌の顔をした書籍に近いのかもしれません。ある時、松浦さんは「よくぞここまでの量を書かせたよね、って感心されるくらいの『ブルータス』になるといいよね」と笑って話してくださったのですが、真に受けて相当量の執筆(おそらく想像以上)をお願いしてしまった。

この特集は、巻頭のエッセイ集、『僕の一流品カタログ』(松浦さんが選ぶ80の一流品/もちろん文章も執筆いただきました)、憧れの人4名との対談など、たっぷりの全80ページ。松浦さんと「男にとって大切なもの」をあらためて定義することができたように思います。忙しい『暮しの手帖』の仕事の合間をぬって、執筆いただき、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。

男にとって大切なものは、夢、希望、ロマン、そして学びである。表紙にも書いた言葉ですが、改めてここにも残したいと思います。夢やロマンといった、最近忘れられがちな、口にするとなぜだか恥ずかしくなってしまう言葉を、僕らがもう一度取り戻せるために。そしてそのきっかけとして、この「男の一流品カタログ」が機能してくれたなら。さあ、男たちよ!

 
●矢作雄介(本誌編集担当)
毛織物の工房を取材するために盛岡へ。宿泊は〈北ホテル〉だった。
毛織物の工房を取材するために盛岡へ。宿泊は〈北ホテル〉だった。

ジャケットを仕立てに、何度も横浜・山下町へ。昼食は〈萬来亭〉だった。
ジャケットを仕立てに、何度も横浜・山下町へ。昼食は〈萬来亭〉だった。

撮影スタジオにて、生まれて初めてハンス・コパーを触った。手が震えた。
撮影スタジオにて、生まれて初めてハンス・コパーを触った。手が震えた。


 

From Editors 2

僕らには一流品が不足していました。
何かあるとwikiで調べてわかった気になることへの自戒も込めて、最近、強く思うことは、ネット環境によって知識が広がったのではなく、ひたすら「自分と関係のないものを増やしつづけている」のでは? ということです。

あのレストランは評判そこそこらしい、あの映画は評価まっぷたつみたい…その場に行って、この目で見て、自分で判断しなくても、うっすら「わかった気になれる」のは、とっても時間の節約ですね! ……じゃなくて、うっかり出会ったものに心動かされて、その後の原動力、原体験になる経験を遠くにしてるのでは? と。

頭に引っかかるものは、人に聞く前に自分で調べたうえで、聞いて答え合わせして、彼我の考えの差を実感しつつ、自分の定見を重ねていく。自分が若手だった頃は、評価はいちばん後に来るものだった記憶がある。どう思う? と尋ねるときには「自分はこう思ってる」が必要でした。今、自分でも、答え(的なもの)を先に見ちゃうから、なんにも根付かない。

最初の打合せから8ヶ月あまり。集まっては話し合い、一流品について考えてきました。好きなもの、は自分が好きであればいいけれど、一流品は、一人だけでも賛同者が必要です。だから、説明しなくちゃならない。そのために言葉を磨いて、考えを整える。一流品とは「人にすすめる価値を見つける」こと。それ、やる価値ありました。

一流品は手に入らなくてもいい。一流品は「それがあること」を知っているだけでいい。いつか手で触れたい。いつか誰かとその話をしたい。「そこに人格があるもの」と、松浦さんは一流品の十の条件の中に書いています。僕らには一流品が不足していました。不必要だと見つめていなかったそれらには、存在する強い価値があることをあらためて知ることになりました。

ありがとう、松浦弥太郎さん。楽しかった。

●西田善太(ブルータス編集長)
僕の隣の作業台が松浦編集長の席となりました。夕方になると現れて、話し込み、決めていく。僕は、松浦弥太郎はじめての雑誌連載「BOOK BLESS YOU」(GINZA)の初代担当ですから、20年近い付き合いになりますが、こうやって編集部で一緒に仕事をするなんて想像もしていなかった。本当にこの人、仕事がていねいで、僕は少し恥ずかしくなりましたよ。
僕の隣の作業台が松浦編集長の席となりました。夕方になると現れて、話し込み、決めていく。僕は、松浦弥太郎はじめての雑誌連載「BOOK BLESS YOU」(GINZA)の初代担当ですから、20年近い付き合いになりますが、こうやって編集部で一緒に仕事をするなんて想像もしていなかった。本当にこの人、仕事がていねいで、僕は少し恥ずかしくなりましたよ。