マガジンワールド


From Editors No. 793 フロム エディターズ

From Editors 1

夢に値をつけるとしたら?
物事の“価値”を
改めて考えてみる機会に。
今回の特集は、記事をつくるという通常の仕事とは別に、夢の商品を考えて、それを叶えてくれる人と交渉し、価格を決めるという作業がありました。このなかでもっとも新鮮だったのは、価格を決める作業で。

かつて「夢」といえば、イコール「贅沢」だった時代もあったと思います。いえ、値段が高い=素晴しいものという考え方は今もあるでしょうし、逆にとにかく安い=素晴しいという考えの人もいるでしょう。
ただ、今回の特集を通して自分自身が別の考え方に気づきました。以前、ダウンタウンの松ちゃんがライブのチケットの価格を、観に来た客自身に決めさせるという試みをしたことがありましたが、それを思い出したりもして。
価値というのは、自分が決めるものだということです。当たり前のことのようで、実は決められた金額の大小のみから、価値を判断していたのではないかと。

企画が決まると、夢の製作者から「だいたいこれくらいの金額になります」という見積もりが出てきます。そこで一般的な商品に比べて高額だったとしても、ひたすらに「なんとかお安く!」という頼み方はしていません。その商品が購入者にとって満足できる価格であること、それを考えながら価格の交渉をしていました。
今回の特集には数千円で購入できるものから、百万、一千万単位の商品まで取り揃えています。単純に金額の大小やレア度だけで「高い」「安い」を決めるのでなく、ある商品を作るのに、製作者がそのために使う時間、アイデア、思い……そういったことを想像しながら、それが自分にとって価値ある商品なのか検討していただければ幸いです。

良い出会いがありますように!

 
●中西 剛(本誌担当編集)
今回は、企画に協力してくれた方々が、楽しそうに夢の商品作りに取り組んでいたのも印象的でした。茶筒で知られる京都の老舗・開化堂さんは真鍮&ブリキ製のスペシャルな図面筒を製作。開化堂6代目の八木隆裕さん(右)と革職人の上月建太朗さん(左)は仕上がりにドヤ顔!
今回は、企画に協力してくれた方々が、楽しそうに夢の商品作りに取り組んでいたのも印象的でした。茶筒で知られる京都の老舗・開化堂さんは真鍮&ブリキ製のスペシャルな図面筒を製作。開化堂6代目の八木隆裕さん(右)と革職人の上月建太朗さん(左)は仕上がりにドヤ顔!


 

From Editors 2

夢を形にする作業は、十人十色でした。

「夢の値段」という枠組みの中で、どなたにどんなものを作って頂くか。今回の特集では、最初の企画段階で、ものすごく頭を悩ませました。

その中で、1年ほど前に見た、長嶋りかこさんの展覧会「Between human and nature」に展示されていた、指輪に思い当たりました。それは、灰色の石ころに台座がついた指輪がたくさん並んでいる展示でした。河原に落ちていた石ころの指輪の中に、パッと見は分からないけど、じつは宝石の原石に台座をつけた指輪が紛れ込んでいる、というものです。「同じ“石”なのに、ものの価値って誰が決めるの?」と問いかけるその作品の作者に、今回の企画について相談するのは順当な気がしました。

長嶋さんに伺うと、「子供のころから大好きで、ずっと作ってみたかった」と、凧をデザインしてくれることに。思いもよらぬ展開でしたが、風と戯れるツールとは、なんと長嶋さんらしいこと。和紙でできたデルタカイトに、「風を視覚化するデザイン」を施してくれました。本誌では、「走らなくても原理を理解すれば揚がりますよ」と年季の入ったテクを披露。長嶋さんたっての希望で、撮影はホンマタカシさんにお願いしました。

また、毎晩満席のイタリアンとして有名な目黒〈メッシタ〉のシェフ、鈴木美樹さんは、和食のイベント「小料理めっした」を開催してくださることに。ホームパーティなどで出し、身内に大評判のポテトサラダや鍋料理、ごはんものなど、普段はお店で食べられないお料理を、イベント当日に向けて、いろいろ構想中です。鈴木さんのご自宅で行った本誌の撮影後の試食会は、まさにホームパーティ状態。撮影したものばかりでなく、次々にお料理を出して下さり、鈴木さんのもてなし力を垣間みました。イベントも、楽しみなことになりそうです。

2つだけの紹介になりましたが、こんな調子で、ファッション、工芸、日用品、植物など、様々な夢の形が50個揃いました。それぞれのストーリーは、本誌でとくとご覧下さい。

 
●草野 裕紀子(本誌担当編集)
サンプルを使って凧の揚げ方について説明する長嶋さん。
サンプルを使って凧の揚げ方について説明する長嶋さん。