マガジンワールド


From Editors No. 804 フロム エディターズ

From Editors 1

美しい日本語の歌の特集は、
美しい言葉の特集でもあります。

8歳、初めての夜更かしは『ルビーの指環』。
10歳、嫉妬という感情を覚えた『ハイティーン・ブギ』、
12歳、女の子の覚めた部分におののいた『卒業』。
そして42歳。センチメンタルな男心が身に沁みる『Tシャツに口紅』。

大人の階段は、作詞家・松本隆とともにのぼってきました。
そして、今聴いても、のぼり階段が見つかります。

言葉の選び方、配し方で感情を揺さぶり、行間で色彩溢れるドラマを想像させる。俳句や短歌など、日本で昔から愛されてきたものと同様、松本隆の歌詞には、美しい日本語の魅力がいっぱいに詰め込まれています。

人それぞれに異なる感情が昂ぶり、心象風景の中で様々なストーリーが描かれていく。聴いて、歌って、口ずさむだけでなく、歌詞カードを見ながら隣の人と話し込む、松本隆ワールドには、さまざまな楽しみ方があります。

吉本ばななさん、ジョン・カビラさん、岡村靖幸さん、川内倫子さんら、松本隆ワールドにはまったど真ん中世代をはじめ、広瀬すずさん、OKAMOTO’Sなどの若手“松本隆”愛好家たち含め45人が登場。彼らの好きな歌(詞)について思う存分語ってもらいました。

みなさんの好きな歌は入っていましたか?

 
●杉江宣洋(本誌担当編集)
出会った風景が、歌の世界とシンクロして口ずさんでしまう時がある。松本隆の詞で、この体験をすることは多い。おいらは肩すくめ 帰るさベイビイ @三鷹の森ジブリ美術館。小坂忠「しらけちまうぜ」(作詞・松本隆 作曲・細野晴臣)
出会った風景が、歌の世界とシンクロして口ずさんでしまう時がある。松本隆の詞で、この体験をすることは多い。おいらは肩すくめ 帰るさベイビイ @三鷹の森ジブリ美術館。小坂忠「しらけちまうぜ」(作詞・松本隆 作曲・細野晴臣)



From Editors 2

カラオケスナックで改めて知る
松本隆という作詞家のすごさ。

この特集がキックオフしてから、カラオケの曲のタイトル画面を意識して見るようになりました。彼の定番、彼女の十八番。場が盛り上がる名曲の数々にはかなり高い確率で、「作詞/松本隆」の文字が。
そういえば松本さん自身が言ってたっけ。
「最近の若い子は、カラオケで僕の名前を知るんだよね」と。
手がけた曲は約2100曲。「ああ、この曲も松本さんの作詞だったんだ」と、そのすごさを改めて噛み締めるのです。行きつけの、スナックにて。

意識する、しないにかかわらず、松本隆が紡ぐ日本語は、多くの人の心の深層に染み込んでいます。例えば1982年生まれ、いきものがかりの水野良樹さんは、子どもの頃お茶の間で流れている曲たちに触れたことで「松本隆さんの歌詞が無意識に自分の中に血肉化している」ことに、大人になって気づいたと言います。J-POP前夜。ちょうど、松本さんの歌が、オリコンのランキングを席巻していた頃でしょうか。

自分にも血肉化している歌詞がたくさんあります。「制服の胸のボタンを 下級生たちにねだられ」「くもり硝子の向うは 風の街」。聞いていた頃の情景が今でもくっきり浮かび上がるような、想い出に寄り添う言葉たち。なにより、歌わずとも、すらすら口から出てくる歌詞って、そうはありません。

そんな言葉を生み出してきた松本隆とは一体、何者なのか。今回の特集では、たくさんの人に話を聞きました。盟友から、影響を受けた人まで。彼(彼女)らが語る言葉から、また見えてくる松本隆の創作の奥深さと素顔。希代の作詞家、そしてドラマーの魅力にあらためて触れてください。

 
●星野 徹(本誌担当編集)
細野晴臣、松任谷由実など、松本隆を知るキーマンの取材ページのポートレイトは、笠井爾示さんがモノクロで撮りおろしました。お楽しみに。
細野晴臣、松任谷由実など、松本隆を知るキーマンの取材ページのポートレイトは、笠井爾示さんがモノクロで撮りおろしました。お楽しみに。