マガジンワールド

From Editors No. 806 フロム エディターズ

From Editors 1

大切なのはグレードではなく、
その土地を敬う気持ちでした。

つい先日、アマンリゾーツが2016年春、三重県志摩市に「Amanemu(アマネム)」を開業することを発表。来る2020年のオリンピックに向け、日本のホテルの未来が楽しみになってきました。私が初めてアマンに触れたのは1999年。担当した「どうせなら日本人のいないリゾートへ」という特集でした。あれから16年、当時流行った“アマンジャンキー”なんていう言葉は今は昔ですが、その思想に大いなる影響を受けたホテルたちが世界中に散らばっています。例えば、今回巻頭で紹介するニセコ〈坐忘林〉。惜しげもなく広く取った部屋やつくり手の想いが詰まった建築デザインなど、今まで日本では見たことの無かったリゾートとしてのポテンシャルを垣間見ることができました。今回、チリ・アタカマ砂漠で逗留した〈Tierra Atacama〉もそう。南米のホテルシーンを大きく変えた〈Explora〉出身のオーナーによるこのブランドは、〈Explora〉同様「ホテルの外で楽しんでもらう」ことを最たるおもてなしと考え、ゲストが全力で遊び倒すアクティヴィティの開発に余念がありません。

アマンがもたらした功績は、そのOne to Oneのサービスやインフィニティプールの普及などいろいろありますが、大事なことは、食やアクティヴィティからその土地に滞在していることの愉しみを享受できる、徹底したローカリズムへの姿勢だったのではないでしょうか。今回誌面で紹介する宿は、リゾートや旅館、ゲストハウスにモーテル、ペンションまで一見さまざま。ただ、共通しているのは、その土地を敬い、その土地とつながり、その土地の良さをもっと知ってもらおうとしているということ。大切なのは宿のグレードではなく、その宿を支える人々の想いであることを改めて感じた今回の取材でした。では皆様、よい夏休み、よい旅を!

 
●田島 朗(本誌担当編集)
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ニセコ〈坐忘林〉より。各部屋に備え付けられた立派な露天風呂や近場の山や清流で採った食材にも目を奪われたが、一番感動したのが、毎朝、野の花や草を生けて部屋に飾り付けてくれるその気持ち。これらの写真だけを見ても、ここが日本だとは思えない完成度かと。
ニセコ〈坐忘林〉より。各部屋に備え付けられた立派な露天風呂や近場の山や清流で採った食材にも目を奪われたが、一番感動したのが、毎朝、野の花や草を生けて部屋に飾り付けてくれるその気持ち。これらの写真だけを見ても、ここが日本だとは思えない完成度かと。



From Editors 2

ホテルも街も、「再生」で活気づくみたいです。

今年3月に出たBRUTUSロンドン特集のためにロンドンに滞在した時に、エースホテルに泊まりました。このホテルは、ポートランド、ニューヨーク、そしてロンドンで、古く活気のなくなったホテルをリノベーションし、再生させ、大成功しています。ロビーは、日中はロングテーブルをオフィスのデスク代わりに仕事する人、夜はラウンジづかいでくつろぐ人々で毎日溢れかえっていました。

昨今のホテルや宿泊施設、やはり世界的に「再生」がキーワードになっているみたいです。今回のホテル特集のブックインブックでは、「あたらしい泊まりかたBOOK」と題し、さまざまな形態の宿泊施設を紹介しています。

ランドスケープ・プロダクツの中原慎一郎さんが近ごろ注目しているのは、西海岸の再生モーテル。日本各地で古民家をいまの生活にも馴染むよう和洋折衷にリノベーションして宿泊施設にしているのは、アメリカ出身の東洋文化研究者、アレックス・カーさん。また、最近各地で増えている、ゲストハウスやホステルと呼ばれるドミトリー形式の宿でも、料亭や喫茶店などをリノベーションして宿にしているところがあります。さらに、ゲストハウスでは、共用部分がカフェやバーになっていたり、ワークショップが行われたり、人が自然に集うよう、工夫されているのもポイント。

ちょっと古い建物でも、リノベーションして再生、共用スペースに人がワイワイいるだけで、その周辺まで活気づいてくるから不思議です。ホテルや宿泊施設の、新しい形、今後もどんどん増えそうな予感です。

 
●草野裕紀子(本誌担当編集)
6月にオープンしたばかりの〈Kai〉は、赤坂の料亭をリノベーション。photo:Tomoyo Yamazaki
6月にオープンしたばかりの〈Kai〉は、赤坂の料亭をリノベーション。photo:Tomoyo Yamazaki


 
ブルータス No. 806

わざわざいきたくなるホテル。

650円 — 2015.08.01
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ブルータス No. 806 —『わざわざいきたくなるホテル。』

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