マガジンワールド


From Editors No. 837 フロム エディターズ

From Editors 1

映画選びが楽しいのは、
保存する人がいるからです。

ブルータスの映画特集は、他誌に比べて新作紹介が少ない。それは専門誌や情報誌、ネットにお任せすべきことだと、どこかで割り切っているところがあるから。さておき、過去作を含めた映画選びとなった場合、その数は膨大なものになり途方に暮れてしまう。映画選び方のコツは、この特集をぜひ参考にしてもらえればと思い作りました。一方で、こんなことにも考えが及ぶ。作品の好みや評価に関わらず、選択肢がある恵まれた環境は本当にありがたいことなのだと。

実は、作品保存に尽力する “フィルム・アーキビスト”と呼ばれる人たちについても触れています。巻末の定例ページBRUT@STYLE(P124)にご注目。ファッションページの舞台として登場するのは、国内随一のフィルム保管施設、東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館(一般非公開施設)です。その道のスペシャリスト、主任学芸員の岡田秀則さんが寄せてくれた文章もぜひ読んでいただきたい。

話は特集に戻るが、特集前半に登場いただいたのは、「日活ロマンポルノ」「NY舞台の恋愛映画」「続編もの」などなど、好きなジャンルを突き詰めている人たち。情報を整理して保管するという意味ではフィルム・アーカイブの草の根活動と言えるかもしれない。特集後半には映画の良さを伝え続ける地元密着のミニシアターや、フィルム映写機保存に奔走するギンレイホールの加藤忠さんも登場する。みんな熱い想いを持って活動されている。

そして、扉前のTOP6ページで、年明け1月21日公開予定の新作映画『沈黙』をいち早く(!)紹介していますが、監督のマーティン・スコセッシもまた、世界的に知られたフィルム・アーキビストの一人だって知っていましたか?

 
●︎︎鮎川隆史(本誌担当編集)
東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館にて、実際のフィルムアーキビストが作業している様子。修復作業中の70mmフィルムは、35mmに比べて収録できる情報量が多く、画像は鮮明で、音声も格段に良いという。いまとなっては上映できる映画館は京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターしかないというが、残念ながら諸事情により上映の予定は未定だという。
東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館にて、実際のフィルムアーキビストが作業している様子。修復作業中の70mmフィルムは、35mmに比べて収録できる情報量が多く、画像は鮮明で、音声も格段に良いという。いまとなっては上映できる映画館は京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターしかないというが、残念ながら諸事情により上映の予定は未定だという。



From Editors 2

ハズレ映画もどんと来い、どんどん来い!

「どうしたら、面白い映画に出会えますか?」映画特集の取材で、何人もの映画好きたちに投げかけた質問です。そして、最も多く返ってきた答えがこちら。

「いや、面白い映画だけじゃなく、つまらない映画も色々観てください!」

飯田橋ギンレイホールの主・加藤忠さんは「玉石混交のなかから見つけるのが楽しいんだよなあ」と嬉しそうに語ってくれました。中田秀夫監督からは、「退屈な3本立てをこなして辿り着いたほうが、これが自分の一本だという作品に巡り合えると思いますよ」という一言が。横浜・戸部のミニシアター、シネマノヴェチェントの館主である箕輪克彦さんは「つまんない作品を観て、そのあとみんなで酒を飲みながらここがダメだった、ってワイワイやるのが楽しい」からと、映画館の横にバーを設けるほど。

興味の湧くままいくつもの作品を観るうち、一般的には駄作とされている作品の楽しみ方も分かる境地に達した映画好きたち。彼らにとってはもはや“ハズレ”を引くことすら楽しみのうちなのです……ですが! 今回は特別に、誌面で彼らの映画選びの“美味しいとこどり”をさせていただきました、スミマセン! 「こんな楽しみ方もあるのか」とページをめくるうち、映画選びの軸が必ず見つかる、そんな1冊をどうぞ。

 
●鴨志田早紀(本誌担当編集)
横浜・戸部のミニシアター、シネマノヴェチェント館主の箕輪さん。上映後に声をかけると、「これ、つまんなかっただろ~?」と言いつつ、作品の見どころを教えてくれた。
横浜・戸部のミニシアター、シネマノヴェチェント館主の箕輪さん。上映後に声をかけると、「これ、つまんなかっただろ~?」と言いつつ、作品の見どころを教えてくれた。