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とんかつは日本のソウルフードです。 From Editors No.852

From EditorsNo.852 フロム エディターズ

とんかつは日本のソウルフードです。

この特集の担当をするまで、とんかつを一人で食べたことがありませんでした。つまり自分の中では、優先順位があまり高くない存在。そんな新人とんかつ喰いが毎日のように2ヶ月、時には1日2とんを食べて感じたとんかつ観です。

担当が決まってすぐのある日曜日、行列ができると評判のお店に13時頃に行きました。お昼は14時までと聞いていたからです。店先には行列が見えました。10人弱の列の最後尾につくと様子がおかしい。じつは昼の部は売り切れでおしまい。列は17時からの夜の部のものだったのです。その日は泣く泣く諦めました。2時間待ちも当たり前とは聞いていたものの、確固たるとんかつ人気を体感した午後でした。

またある平日のランチタイムには、カウンターにズラリ並んだビジネスマン達が、黙々ととんかつを食べる背中を目にしました。あぁ、男にはとんかつを食べねばならない時がある。それが高度経済成長期を支え、今の日本を作って来たのではないか、そんな思いにかられ、とんかつにロマンを感じた昼下がりでした。

男ばかりではありません。「最近は女性一人のお客様も多いですよ」というとんかつ屋さんの言葉通り、ある夜にはひとり客の女性3人、カウンターに並んだことも。定食を食べながら店主夫妻とひとしきり話していた常連が、夫用のとんかつ弁当を持って帰る背中を見送り、夫婦の蝶番となっているとんかつを微笑ましく思った夜でした。

この特集を担当して、とんかつはごちそうでありながら、私たちの生活にいろんな形で溶け込んでいるソウルフードなのだ、と改めて感じました。とんかつ大好きな人も、あまり気にしていなかった人も、読んで1軒行って見てください。きっと共感していただけると思います。

 
●︎︎︎草野裕紀子(本誌担当編集)
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今回の取材で初めて通称「追いカレー」なる小鉢のカレーの存在を知りました。とんかつ屋さんのとんかつ定食をセルフでカツカレーにできるアイテムで、メニューに発見したら絶対頼むようにしています。こちらは人形町の〈かつ好〉の「一口すっぽんカレー」(写真左)。


ブルータス No. 852

とんかつ好き。

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