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Special Contents あなたの心をとらえた、松本隆の歌詞はなんですか?

人は誰でも、心に残る松本隆の歌詞がある。巻頭ページでは24人の著名人に、その心をとらえた歌とその理由を教えてもらっています。ここではその中から3名を紹介。ところで、あなたの心に残る歌は?


——大滝詠一「それはぼくぢゃないよ」
大滝詠一「それはぼくぢゃないよ」
『大瀧詠一』収録 ©キングレコード
曽我部恵一音楽家
恋人のいる部屋。この歌は、いつか自分がいた風景。恋はいつも“好き”とか“愛してる”の言葉じゃなしに、こんなまぶしい光や透明な匂いを纏まとって、そこにいる。強い気持ちが宿るその部屋は、とても平和で静かだ。それは、僕にふと「永遠」という概念を想い出させる。この言葉たちを歌った歌手が、大滝詠一で、本当に良かった。このようなコード進行とメロディが、ともにあってよかった、とも思う。 さて、この後、この歌に出てくる2人はどこへ行ったのだろう。どうなったのだろう。果たして、どこから来たのだろう。いや、恋は物語の中にはいない。恋人の髪が翻る瞬間に、それはある。そして、その瞬間の中にしか永遠はない。2人はずっと、この風景の中にいるのだ。
そかべ・けいいち 1994年、サニーデイ・サービスのVo. & Gt.としてデビュー、ローズ・レコーズ主宰。7月2日にサニーデイ・サービスのライブ盤『Birth of a Kiss』が発売になる。

——中山美穂「派手!!!」
中山美穂「派手!!!」
©キングレコード
権八成裕CMプランナー
僕が初めて夢中になった芸能人は中山美穂さんことミポリン。刺激的な『毎度おさわがせします』がドラマデビューで、主題歌はC‒C‒B「Romanticが止まらない」。イントロが鳴っただけで当時の思春期男子が内股になっちゃう松本作品の超名曲ですが、ミポリン自身の初期曲も松本作品が多い。ドラマ『ママはアイドル!』の主題歌「派手!!!」も「WAKUWAKUさせて」も「ツイてるね ノッてるね」も。この“理性より本能”な哲学で貫かれたビビッドでキャッチーな歌詞群が多感な少年の人格形成にどう悪影響したかは謎。ちなみに「ツイてるね」て呟くと反射的に「ノッてるね」て一応返しちゃうやつがいまだにいるし、何か見て「派手……」て呟くと元気一杯に「だね!!!」てレスポンスが返ってきます。嫁から。
ごんぱ・なるひろ 話題のCMを多数手がける。TOKYO FMラジオ『澤本・権八のすぐに終わりますから。』(金曜20時~)も好評放送中。作詞を手がけたSMAP最新シングル「ユーモアしちゃうよ」が発売中。

——はっぴいえんど「春よ来い」
はっぴいえんど「春よ来い」
『はっぴいえんど』収録 ©ポニーキャニオン
高田 漣ミュージシャン
一年で最も好きなのがお正月。雑煮が好物で、元日は大好きな日本酒を解禁して、大好きな「春よ来い」を大音量で聴いて過ごします。発表されたのは、ロックに日本語の歌詞を乗せることが当たり前でなかった時代。デビューアルバムの1曲目にして、出だしが「お正月」って斬新すぎですよね(笑)。続く「ものです」の音節がすごく長くて。初めて聴いた時は衝撃的でした。松本さんの意図なのか、大滝さんの歌い方なのか、そうした“引っかかり”がまさに、はっぴいえんどらしさ。歌留多(かるた)のようなトラディショナルな言葉遣いと、当時最先端のサウンドが融合しているのも含め、音楽のいろんな楽しさを教えてもらいました。言葉が耳に残るロックって後にも先にも出てこないんじゃないかな。
たかだ・れん 1973年生まれ。日本を代表するフォークシンガー高田渡の長男。高田渡トリビュート『イキテル・ソング~オールタイム・ベスト~』、高田漣『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』発売中。