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みやげもんコレクション 195 麦藁竜

栃木県/足利市
文 / 川端正吾

麦藁竜

渡良瀬川の大洪水を救った悪水除けの藁守り。

かつて、栃木県足利地方では、渡良瀬川の流れが変わってしまうほどの大洪水が起こりました。この時、下浅間神社の山裏の濁流から竜が現れ、浅間山に昇ってそのまま雲の中に消えるとたちまち雨風がやんだという逸話が残っています。以来、その竜は浅間様のお使いであると信じられ、毎年6月1日の足利富士浅間神社の初山開きには、農家の人々が麦藁で作った竜を御守りに貰い受けて帰るのが慣例となりました。

1945年頃まで続いていたこの習慣も、麦を作る農家が次第にいなくなってしまい、途絶えてしまいました。そこで有志の方々が知り合いの農家さんと協力して、御守りに使うための大麦栽培を始めたのです。ある程度の数が作れるようになるまで年月がかかりましたが、98年、約半世紀ぶりに復活。この時作ることができたのは、わずか35個。以来、授与の習慣は続いていますが、毎年コンスタントに多くの麦藁を収穫するのが難しく、授与されるのは十分な収穫があった年のみとなっています。今年は不作でほんの少数しか授与されませんでした。さて、来年はいかに⁉

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写真大/足利富士浅間神社の麦藁竜。写真上/ほかの富士神社では、藁蛇が多く授与されている。富岡八幡宮の富士浅間神社と駒込富士神社で授与される藁蛇。写真下/浅草浅間神社と十条富士神社の藁蛇。



掲載:BRUTUS#790 (2014年12月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。