マガジンワールド

みやげもんコレクション 224 九尾の狐

栃木県/那須町
文 / 川端正吾

約35年前から諸国郷土民芸館にて販売され、那須名物となっていた九尾の狐の張り子。胴模様には地元の名物である花のリンドウとツツジが左右の側面に。1,300円(☎0287・76・3366)。

九本の尾を持つ恐ろしい妖狐の張り子玩具が復活。

栃木の那須野ヶ原には、今も残る「九尾の狐」伝説があります。妖狐は玉藻前(たまものまえ)という絶世の美女に化けて女官となり、鳥羽上皇の寵愛(ちょうあい)を受けるようになります。以来、上皇は病床に伏せるようになったのを不審に思い、陰陽師の安倍泰親が祈祷したところ、全身が金色の毛で覆われ、顔は白く、その尾はなんと九本もある妖狐が現れました。追い詰められた妖狐は、雷を起こし、那須野ヶ原に逃げ込みます。ここでも暴れ回り、ついに領主は1万5000の兵をもって、やっとのことで妖狐退治をしました。ところが妖狐の亡骸はそのまま巨大な石となり、その石に近づくものはたちまち毒に侵されて死んでしまうのでした。その呪いを解くため、源翁禅師という僧が石に杖を打ちつけると、石は3つに砕け、妖気は消えたのです。2つは飛び去りましたが、そのうち1つは現在も那須町にあり、殺生石として残っています。

そんな那須町では、九尾の狐をモチーフにした張り子玩具が、土産物として長く愛されていました。ここ15年ほど途絶していたのですが、去年、新たな作り手が現れ、見事復活しました。

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写真/約35年前から諸国郷土民芸館にて販売され、那須名物となっていた九尾の狐の張り子。胴模様には地元の名物である花のリンドウとツツジが左右の側面に。1,300円(☎0287・76・3366)。


 

掲載:BRUTUS#819 (2016年3月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。