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伊勢の注連縄 みやげもんコレクション 246 BRUTUS No.841

みやげもんコレクション 246伊勢の注連縄

三重県/伊勢市
文 / 川端正吾

蘇民将来子孫家門注連縄(中寸/橙が付きます)3,150円(三重テラス☎03・5542・1033)。

年中、家の玄関に飾られ続ける蘇民将来の縄。

玄関に注連縄(しめなわ)を飾って歳神様を迎えるのはお正月ならではの習慣ですが、三重県の伊勢では、お正月だけでなく一年を通して玄関に注連縄を飾ります。これは、この地域に伝わる「蘇民将来(そみんしょうらい)」の逸話に由来します。その昔、伊勢の地を旅していた須佐之男命(すさのおのみこと)は、夜、泊めてもらえる家を探していました。とても裕福であった巨旦将来(こたんしょうらい)という男に、1晩泊まらせてくれるように頼みますが、断られてしまいます。それを見た巨旦の兄である蘇民将来は、とても貧しい身ながら、須佐之男命を家に泊め、手厚くもてなします。これに感激した須佐之男命は、お礼に茅(ち)の輪を与え「後の世に疫病あらば、蘇民将来の子孫と云いて、その茅の輪を腰に付けたる者は、難を逃れるであろう」と告げて、去りました。その後、どんな疫病が猛威を振るおうとも蘇民将来の子孫たちは免れることができ、代々栄えたそうです。この話にあやかり、蘇民将来子孫家門の護り札を注連縄に付けて、年中玄関に飾って、家族の無病息災を願うようになりました。

そんな伊勢の注連縄には木札のほか、橙(だいだい)やヒイラギ、ユズリハ、裏白などをつけて飾ります。

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写真上/蘇民将来子孫家門注連縄(中寸/橙が付きます)3,150円(三重テラス☎03・5542・1033)。 写真中・下/木札は「蘇民将来子孫家門」のほか「笑門」などもある。「笑門」が伊勢では一番一般的。


 

掲載:BRUTUS#841 (2017年3月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。