マガジンワールド


From Editors No. 177 フロム エディターズ

特集内容

MADE IN KYOTO CATALOGUE
メイド・イン京都カタログ

紅葉に栗! 11月の京都は魅力がいっぱいです。京都好きは「京都は底なし」といいます。古い町並み、有名な老舗、ため息がでるようなしつらえの飲食店、何度通っても新たな発見があるそう。なかでも最もアツイのは京都の物作りシーン。美しい仕上がりと確かな仕事が施された品々を求め、旅行者だけでなくビジネス関係の人も世界中からこの地にやって来るのです。そんな、世界が注目する京都で生まれた品々をカーサ ブルータスが集めてみました。

今、一番の注目株といえば140年余りの歴史がある茶筒の工房〈開化堂〉。この8年でロンドン、台湾、ロシアからも注文がやってくるようになったとか。〈開化堂〉の”世界進出”計画を伺いながら、世界を魅了するプロダクトをずらっと見せていただきました。

そして京都を料理の作り手としての出発点と語るのは、料理家の野村友里さん。仕事の”原点”となる調味料や料理道具のお店、古道具店さんを野村さんと訪ねました。取材をしているうちに、スタッフたちもすっかり”京都マジック”にハマってしまい、鍋を3つに箸を数客買い込み、帰りの新幹線で我に返ったようです。

〈ARTS&SCIENCE〉のオーナー、ソニア パークさんも京都に魅せられ、ここ数年何度となく通っています。ソニアさんの京都通いに同行し、”今、気になる”京都の伝統的な物作りを訪ねました。

「生活の拠点を日本にしている一つの理由として、日本の物作りのすばらしさがあります。今回、京都ではあえて伝統的なものを見直すことで新たな発見があるということを自覚した」というソニアさん。ついに来春、京都にお店を出すそうです。

“底なし”な魅力あふれる京都の物作りの世界を一冊にとじ込めるのは至難の技でしたが、京都にハマった方たちの愛用品から、お取り寄せができる”おいしい”おもたせまで、あらゆる角度からその魅力を探る日々を重ねました。でも、取材すればするほど、”終わりが見えない京都”を実感するばかり。今回は第一ラウンド終了といった感じでしょうか。カーサ ブルータスの京都ハンティングはまだまだ続きそうです。

第二特集は、NIGO®さんの珠玉のコレクション107ロットが出品されたサザビーズ・オークションに潜入。あの20世紀デザインの名品に一体いくらの値段がついたのか、全アイテム落札金額付きでレポートします。


 

Editor’s Voice

1杯のコーヒーが京都を感じさせる理由。

京都・三条の路地に人から「止まり木」と言われているコーヒー屋さんがある。古い建物の引き戸を開ければ、東京からのお上りさんは「さすが京都」と唸ってしまうような割烹料理屋風のたたずまい。そこは午前11時30分から夜10時まで、1杯600円のコーヒーで飲めるコーヒー屋さんだ。

オーナーは若干30歳の渡邉直人さん。だから店の名前は〈直(なお)珈琲〉という。土壁に木のカウンター。座ると目の前には、直くんが毎日隣の老舗の花屋さんで選んだ花が一輪目に入る設計だ。カウンターに座りコーヒーを飲む。手持ち無沙汰だなと思えば、直くんが話し相手になってくれたり、時には夕飯のお店の相談にも乗ってくれる。

「1時間という方は結構いらっしゃいますよ。でも、新しいお客さんが来るとさっとその方に席を譲ってくださいます」

一見、敷居が高そうだが思い切ってその飛び込んでみると、なかなか居心地のよい空間。この心地よさにハマる人が多いのだろう。実はここ、インテリアから器、花もすべて京都では一目置かれるオーナーさんたちの協力のもとに実現したという。つい面白くなって、コーヒーカップから建具まで、京都のどこの店のものなのか根掘り葉掘り聞いたら、イヤな顔もしないで直くんは種明かししてくれた。

「見えない棚は自分で作るなどしています。予算がありませんから」と直くん。京都の先輩にアドバイスを受けながら創意工夫の末、完成した直珈琲。敷居が高いと思っていた京都に私にも「止まる」場所ができてうれしくなった。

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photo_Taro Hirano


特集担当編集/西村由美