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食品の大量廃棄に悩む企業と、食料を求める人々。両者を橋渡しするのがフードバンク活動です。

あなたに伝えたい

食品の大量廃棄に悩む企業と、食料を求める人々。両者を橋渡しするのがフードバンク活動です。

「もったいない」を「ありがとう」に。
処分される食品、必要な人に届けたい。

井出留美さん
いで・るみ セカンドハーベスト・ジャパン広報室長
「office 3.11」代表としても活躍。栄養学、広報の実績を生かし書籍等の執筆や講演を行う。女子栄養大学非常勤講師。
「office 3.11」代表としても活躍。栄養学、広報の実績を生かし書籍等の執筆や講演を行う。女子栄養大学非常勤講師。
日本でもこんなに多くの人々が食べ物に困っている。

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パンや缶詰など、賞味期限前でおいしく食べられる食品が、流通の都合で大量廃棄される。もったいない、生活に困っている人々に届けられないか——。

このような、食品を企業から寄贈してもらい福祉施設などに届ける「フードバンク」活動を14年前、日本で初めてスタートさせた「セカンドハーベスト・ジャパン」。広報室長の井出留美さんは「受け取った方々から『本当に助かる』と感謝されます。ホームレスの方たちへの炊き出しもボランティアの協力で毎週実施しています」と話す。

日本でスーパーや食品メーカーなどの事業者から、食べられるのに廃棄される食品は、年間約300~400万トン。世界各国から途上国に送られる食糧援助1年分に迫る。なぜ捨てられるのか。食品メーカーの管理職だった井出さんは業界の事情に詳しい。

「メーカーは、スーパーなど小売店への商品供給が間に合わず欠品を起こすと罰金を払う羽目になる。だから多めに生産せざるを得ず、需要より供給が多くなりがちです」

また、食品業界では「3分の1ルール」という慣習がある。製造日から賞味期限まで3カ月ある食品の場合、店頭での販売期限は2カ月後。賞味期限まで1カ月あっても廃棄・返品され、家畜の飼料かゴミとなってしまう。

「ほかにも新商品への切り替え、包装の印刷ミスなど様々な理由で膨大な食品ロスが生まれています」

大学で食物学を専攻した井出さんは20代の頃、会社勤めを辞め、青年海外協力隊に入り、フィリピンの農村で住民の栄養改善に取り組んだ。帰国後、食品メーカーに入社。広報・栄養業務担当、ʼ08年からセカンドハーベストへの寄贈窓口も兼任した。転機となったのは東日本大震災だ。「自社食品を被災地に届けようと駆け回りましたが10日かかり、海外の支援物資は役所をたらい回しされました」

1個のおにぎりを4人で分け合っているという状況が耳に入る。

「もどかしくて仕方がなくて、4月には何度も会社を休んでセカンドハーベストのトラックに乗せてもらい被災地に食料を届けました」

3月11日は井出さんの誕生日。運命を感じ、その年の9月に退社、〝食を通じた社会貢献〟を目指して会社を立ち上げた。同時期にセカンドハーベストの創始者チャールズ・マクジルトン理事長から誘いを受け広報室長を任されることに。

食料支援した石巻市のシングルマザーから「自分は一人じゃないんだ、と精神的に支えられました」と手紙が来た時は感動した。一方で、都内でお弁当をもらいに来る子たちが家でまともな食事をしていない現状に胸を痛める。

「食べ物は命をつなぐだけでなくコミュニケーションツールでもあり、気持ちをほっとさせ心を支えてくれます。無駄に廃棄することなく、必要とする方たちに届けられる仕組みをさらに広げていきたい」


「すべての人に、食べ物を。」が私たちの合言葉です。
昨年開催したシンポジウムで、フィリピンで始めた新事業を井出さんが報告。日本で規格外のため廃棄されるオクラを現地に提供する。
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施設の子どもたちに食材を配るチャールズさん。米国の留学生として来日。隅田川べりでホームレスを15カ月体験し、活動を始めた。
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企業の担当者との会合。フードバンクや食品ロスに関するアイデアを出し合う。政策に生かしてほしいと国会議員や農水省の職員も招く。
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写真提供・セカンドハーベスト・ジャパン 文・魚住みゆき