クロワッサン - CROISSANT | 辰巳芳子の「いのちの食卓」野菜に習う。

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辰巳芳子の「いのちの食卓」野菜に習う。 | 39

陽だまりの霜柱がじわっと溶けるその中に、蕗の薹(ふきのとう)は頭をもたげる。
健気なものだ。
三つも摘めば二人分は充分、場合により、外側の葉だけ三、四枚もらうこともある。味噌汁の仕上がりに、ぱっと散らして、春の訪れを総身に受けるため。
摘み立ての蕗の薹から春をもらう。贅沢の骨頂かもしれない。
マンションのベランダで野草が育つか否か知らないが、根三つ葉・芹・蕗・野蒜・日本たんぽぽ・嫁菜など、育つ可能性を見出し、試作なさると、労せずして、季節は身近になる。

蕗の薹の食べ方は、無理のないところ、味噌汁に散らす・蕗味噌・天ぷらというところだろうか。何によらず、蕗の薹独特の香りとほろ苦さを丁重に活かさねばならない。
茹でる必要のあるものは、灰汁水で茹で、水にさらす。灰汁を用いるのは、蕗の性根には毒性もあると読んだ記憶からだ。
蕗味噌の美味は、胡桃の脂肪と性根の調和であり、天ぷらの食べ心地もそのあたりを押さえているからだと思う。こうした性根は、人間の春先の代謝をどれほど助けるか、計り知れない。

たつみ・よしこ●家庭料理家、随筆家。「春の野草は、一種の毒消しでしょう。その季節に少しずつ毎日、が食べ方のコツです」


灰は、栗のイガの灰が上等と聞く。今は庭でイガを焼く家は少ないだろう。料理に使える灰(汁)は、ネットでも手に入れられるらしい。

材料(10人分) 

蕗の薹(できる限り摘み立てのもの)10~15個灰適宜 水適宜

茹で方

1水1カップに対して灰を大匙1の割合で灰汁水を作る。 2布巾やペーパータオルで漉す。 3鍋に入れ火にかけ、沸騰したら、ざるに入れた蕗の薹を静かに沈め、茹でる。茹だったら、ざるをあげ、水によくさらす。

※茹でた蕗の薹は、蕗味噌にする。水にさらした蕗の薹の水気をよくしぼり、細かく刻む。擂り鉢で、胡桃をよく擂っておき、同量の味噌、好みで甘口の日本酒少々を加え、蕗の薹と和える。蕗の薹の分量と、胡桃味噌の分量は、ほぼ同等がおいしい。

1 以前は塩だけで茹でていたが、灰汁水で茹でたほうが、苦味をおさめてくれる。


2 灰を溶いた水は、必ず漉してから用いること。火にかけ、沸騰させる。


3 蕗の薹に限らず、青菜などを茹でる際にも、ざるを用いたい。さっと上げ、水にさらせる。


撮影・小林庸浩