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第102回「結婚記念日の高級中華で愛を再確認。」

ブスの瞳に恋してる

 
イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ
 
第102回「結婚記念日の高級中華で愛を再確認。」
結婚13年目に入りました。丸12年たつということは、小中高校と一緒にいたということです。大学生です。でも、13年、あっという間。

結婚13年目記念として、夫婦で中華を食べに行きました。六本木の名店です。結婚記念日だから贅沢です。お店につき、着席。もう妻の目が中華になってます。メニューを開くと、まず最初に言います。「あー、全部食いてえ」と。僕は結構せっかちな方なので、どんどん決めていくと、妻は「そんなに急ぐんじゃないよ」と注意。通常、メニューというのは選ぶものですが、おそらく妻はメニューを見て一品ずつ妄想で食べているのでしょう。だからゆっくり。食いしん坊です。

中華といえば、結婚してまだ5年目くらいだったでしょうか? 一緒に食べに行ったときに、お店が自信満々で出してきた「あわび」を妻は口に入れた途端「うめーー! イカみてーーー」と言って店員を仰天させました。世間的に明らかにイカよりアワビの方が高級なのですが、妻はアワビよりカジュアルなものに例えてしまいました。そのあとに出てきた、店自慢の「豚の角煮」を食べた時にも「うめーーー! ビーフジャーキーみてーーー」と発言して、店員さん、二度目の仰天。まあ、例えば、ビーフ、牛肉だからいいかもだけど、でもね、ジャーキーついちゃってるからね。酒のつまみ。

さすがに妻も大人になったので、そんなやんちゃさはありません。メニューを見て妻は妄想食事を終えたのかオーダー開始。妻が何よりうまそうだと頼んだのが、フカヒレ入りのスープです。このスープ、シェアするタイプではなく、一個ずつ頼みました。

待つこと10分。頼んだものが続々登場。妻は「うまい、うまい」と言って食べます。僕ね、妻のすごく好きなところは、食べた後に、うまいと「うめーー」って表現するところ。一緒に食べてる人が「うめー」と言ってくれると自分もどんどんうまくなる。うまさアップ。食べてて感想言わない人、いるじゃないですか。うまいって口にすると、どんどんうまくなるんですよね。

妻のすごいところは、食べてる途中にメニューを開く。僕が「食べ終わってから見なさい」と注意すると、妻は言います。「うまいものは食べれば食べるほど腹が減るんだよな」と。

名言です。食べているのにどんどん腹が減るらしいです。食べているのに腹が減るからメニューを見て、別のものまで妄想で食べるんでしょうね。こんな人います? 僕のまわりでは妻だけですよ。

でね、来たんです。フカヒレのスープが。いや確かに味の濃厚さとフカヒレの食感がかなりうまかったです。妻もペロリと食べました。

結婚記念日だということで、カロリー気にせず食べまくり。腹いっぱいになったーと思ったら妻がまたメニューを開く。さすがに「いっぱい食べたんだから、もうダメ」と言うと、妻は「結婚記念日だからいいじゃねえかよ」と、クリスマスにプレゼントをほしがる少年のような目をします。妻は「フカヒレのスープ、もう一回頼んでいいかな?」。アンコールです。

さすがです。僕はお腹いっぱいだったので、妻だけ頼むことに。が、そこで妻が僕に、あるお願いをしてきました。「あのー、恥ずかしいので、私が頼んだってことじゃない風にしてもらえますか?」と小声で言ってきたのです。そうです。食い意地張ってると思われたくないみたいなんです。でもね、そこまでで散々食ってるしね、妻の体型見たらわかるじゃないですか。食い意地張ってるの。でも、恥ずかしいんです。だから頼みました。店員さんに「すいません。さっきのスープおいしかったので、一人前、僕にお願いします」と。僕が食べますよとアピール満点でしょ? 不自然すぎるくらい僕のだよ! ってアピールすごいでしょ。

そして、待っていると店員さんが持ってきました。フカヒレスープ。でね、僕のところにスープを置くと、妻は僕に言ったんです。「ちょっとー。二杯も食べすぎじゃないのーー?」

えーーーーーーーーーー!?? なんて裏切り行為。自分が食べる癖に、なんたる発言。

店員さんが去ったのを見ると、妻は僕の前のスープをさっと取って、腹を空かした野武士のように食べ始めました。

店員さんは、去ったとは言え、近くにいます。スープを妻が食べているのを、見て見ぬフリしてくれた。大人ですね。

そう言えば。何年か前にも一緒に寿司屋に行って、妻が大好きなウニを何回も頼むのが恥ずかしいからと言って、僕に頼ませて、それを三回くらい繰り返してたら、店員さんが、僕が頼んだのに、ウニを妻の前に置き始める……なんてことあったな。

変わってねえなー。やってること。結婚13年目。こうやって笑ってバカバカしくご飯を食べられてることが一番の幸せ。おじいちゃんとおばあちゃんになっても、こういうこと出来てますように。


 
今回の格言
結婚記念日は、笑えることがあると、ずっと忘れない
うまそうに食べる人と一緒に食べる、これは鉄則ですね。これから結婚しようかという方、デート中に相手のことをよく観察しましょうね! おふたりのハッピーな日常おもしろ実話は、単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1〜4)にも!



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。