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第110回「100%妊娠している!」

ブスの瞳に恋してる♥ 妊活ダイアリー

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ

第110回「100%妊娠している!」

凄腕の中国人の鍼の先生、ブンブン先生。女性だけど、はっきりものを言う。僕の体を診てボロボロだと言い、僕の体で作られる精子もボロボロだと言い、僕の精子のせいで妻が流産しているのだと言いきった。

2014年一杯で、僕の体の治療をして元気な精子を作り出せる体にしてあげるから、年内は子供を作るな! と言ったブンブン先生でしたが、僕らは人生で初めての人工授精を行った後だったのです。

そして。妻と初めての人工授精をしたあとの生理の時期。生理が遅れました。一週間来なかったのです。ブンブン先生に言われてました。「生理が一週間遅れたら病院じゃなく、私のところに連れてきなさい」と。

だから病院には行かずに、妻を連れていきました。ブンブン先生のところに。

ブンブン先生は体は細目。ですが、その細い体の中にすごくパワーを感じます。日本語は喋れますが、カタコト感もあるため、言葉が厳しく聞こえます。っていうか、たまにすごく厳しい言葉を浴びせるのですが。でも、その厳しさの裏に愛、あり。

先生の部屋に入り、僕は「妻です」と紹介すると、先生は妻の手をさっと取り、脈をはかりました。目を瞑(つむ)る。30秒か? 40秒か? すごく長く感じました。ブンブン先生は時折、香港映画のカンフーものに出てくる師匠のような空気を醸し出します。先生が妻の脈を診たあとに言いました。「100%妊娠してるよ」と。そして「家帰って、検査薬やったら絶対出るよ」と。

正直、妻の中では信じていいかどうか半信半疑だったと思います。でも、先生は妻の脈を診ただけで、「あなた、最近○○の薬飲まなかった?」と一週間前に飲んでいた薬を言い当てたのです。

妊娠してると言われて、嬉しい気持ちのメーターは上がっていきましたが、そのメーターを止めるように、ブンブン先生、ショックな一言を言いました。「でも、すごく生命力が弱いよ」と。

やはり主な責任は僕の精子のせいである。先生は「とりあえず出来る限りやってみるけど、言うことは聞いてね」と厳しい目で言いました。

ブンブン先生は妻に、食べ物の制限。ニンニク、ニラ、辛いものなどの匂いの強いもの、刺激の強いものをしばらく食べないこと。そして動きの制限。肩より上に手を上げないこと。他にもいくつも日常生活の制限を受けました。

妻は妊活休業で休みを取れていたため、体に負担をかけない生活を心がけ、とにかく休む。寝る。守ることが出来ました。

しかし。10月になると妻は映画「福福荘の福ちゃん」のプロモーションのため、二週間ほど仕事をすることになったのです。そのときも、ブンブン先生は、あの動きはするな! この動きはするな! と動きで笑いを取っていく妻の手足をもぎ取るようなことを言いました。でも、仕方ないです。

先生が妻に一番厳しく言ったのが、「あまりカメラの前にたつな!」ということ。「フラッシュの前に立たないでほしい!」と。でも無理な話です。映画の公開日で記者がいれば、当然フラッシュはたかれます。ブンブン先生が「全員フラッシュ禁止にならないのか!?」と言いますが、無茶です。カメラのフラッシュが良くないというのです。妻が、それは無理だと返すと、ブンブン先生は、「とにかく首と甲状腺を守りなさい」。首の近くを衣装で隠して、フラッシュから守れと言うのです。このブンブン先生の言うことに「何の根拠があるのだ」と言う人もいるかもしれません。だけどね、一度信じる! と決めたら、信じるんです。

妻と出来る限りのことをやりました。

ブンブン先生のアドバイスと、鍼治療。そしてブンブン先生のように妻をアシストしてくれた色んな仲間達により、一番危険だった妊娠初期を乗り切り、無事、安定期に入れたのです。

ちなみに、ブンブン先生のすごさを一番表すもの。僕は髪にかなり白髪が出ていました。でも、ブンブン先生の治療を受けているうちに、白髪が止まり、黒髪になり始め、そして前髪の生え際のところが髪の毛が結構抜けていたのに生えてきたんです。

ブンブン先生は言います。「子供が産まれてきたら格好いいお父さんにならないといけないからね」

ブンブン先生と出会うきっかけになった、娘のYちゃんと知り合ったのはとあるパーティーでした。パーティーとか行くのが大嫌いな僕でしたが、なんかその日は行きたくなったのです。そんなことを振り返って思う。出会いに無駄なし。会わなきゃ人は繋がらない。

ブンブン先生はやたらと「出会いは縁だから」と言います。僕が好きな言葉。「縁と縁がつながって円になる」。やっぱり踏み出さなきゃダメだね、一歩。


 
今回の格言
縁と縁で円になる
「格好いいお父さんにならないと…」。響く言葉ですね! 信じると決めたら信じて、できるだけのことをする、という努力が実りました。愛情あふれる結婚生活の実話は、単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。