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ブスの瞳に恋してる♥ 第128回「復帰初の仕事は海外ロケ」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


産後の仕事復帰のタイミングについて悩めるお母さんたちはとても多いだろう。

妻が2014年5月に妊活休業をしてから1年7カ月、出産してから半年、ついに芸人として仕事復帰をする日が来ました。この仕事復帰のタイミングについては色々と悩んでいましたが、長く休ませていただいた番組になるべく早い段階で戻らなければいけないと思っていたようです。本来なら妊活休業に入る時点で、レギュラー番組すべて「卒業」になってもおかしくないはずですが、「待っています」と言ってくれました。だから戻らないといけない。だけどそのタイミングについては1年経ってから……とか色々シミュレーションもしていたみたいですが、僕やマネージャーさん、スタッフさんと色々話し合った結果、産後半年で仕事復帰することに決めました。妻はせっかく復帰するならスタジオ仕事ではなく、体を張ったロケの仕事から復帰しなければいけないと強く思い、「イッテQ」のロケからの仕事復帰となったのです。「イッテQ」のロケからの復帰となると、海外ロケ。妻が行く場所はオーストラリアと決まりました。スタッフさんも最短のロケ時間で組んでくれたものの、行き帰りの飛行機も含めて5日間かかるわけです。

5日間、息子、笑福と離れる。妻は行くことは決定したものの、果たして本当にいいのか? と悩んでいました。まず5日間も離れて大丈夫か? という気持ち。そして9割くらい母乳で育てているので、妻の胸が相当張ってしまうだろうという心配と、帰ってきてからも母乳をあげることが出来るのか? という心配。

産後半年の復帰。しかも5日間海外に行くということに対しては、反対意見の人もいると思います。今復帰しなくてもいいだろうという意見があるのもわかります。ただ、妻が妊活休業する時に快く送り出してくれた人たちがいる。期限もわからないのに「待ってます」と言ってくれた人たちがいる。これって会社で考えたら最高の条件の職場なわけです。

そして、僕は現在、父勉中で、メインであるテレビの放送作家業を休止し、仕事を出来るだけ減らしている状態。普通のお父さんよりも育児に向き合える時間が長い。もちろん息子にとってお母さんが一番だが、息子と向き合っている時間が長いし、その時間が長いだけあって、僕に慣れてくれている。僕は悩む妻に「大丈夫だよ! このために僕も仕事を休んで、笑福と一緒にやってきたんだから」と後押し。

この5日の間に、妻のお母さんが栃木の実家から来てくれることになり、僕とお母さんで笑福の育児をすることになったのです。

ロケに行く日がだんだん迫ってくると、妻は息子におっぱいをあげながら「笑福ー! お母ちゃん頑張ってくるからねー」と決意を口にしながらも目からあふれそうな涙。息子はそれを見て無邪気に笑っている。

妻は知人にあるアドバイスを貰っていた。ロケが近づいたら、息子にカレンダーを見せながら、「お母さんはこの日に一回仕事に行っちゃうけど、4日したら戻ってくるからね」と教えた方がいいと。0歳だろうが、教えると子供は理解するのだと。妻は毎日息子に教えていた。理解したのかどうかわからないけど、カレンダーを指して教える妻の指を息子はじっと見ていた。

そして出発当日。僕は集合場所となっている日本テレビまで、息子と一緒に見送りに行ってきました。日本テレビに着くギリギリまで、息子におっぱいを飲ませている妻。おっぱいを飲ませながらも寂しそうな顔。

日本テレビに到着し、バスが待っていた。一緒にロケに行く女芸人さんが乗っているバスだ。

バスの前まで妻を見送る僕と息子。僕が「それじゃあ頑張ってきてね」と言って息子の手を取り、手を振るような仕草をさせると……我慢していた妻の目から一気に水分が離れる。

一気に1リットルくらい出たんじゃないかってくらい涙がこぼれ始めて「笑福――――! 行きたくないよ―――――」とついに言ってしまった。空港に向かうバスが目の前に止まっているのに、「行きたくない」と叫んでしまった。僕が抱っこしている息子を離さず、一向にバスに乗ろうとしない妻。僕が「早く行かないと」と言うと、一生の別れのように大号泣し「行きたくない」と駄々をこねる。そんな姿を見かねて、一緒にロケに行く森三中の村上やいとうあさこがバスから降りてきて、「大島さん! 気持ちはわかるけど、もう行かないと」と言って妻の体を離そうとすると、まるで小学生のように「エ―――――ン」と言って泣き出す。息子・笑福は笑顔だ。どっちが子供なんだと突っ込みたくなるような光景。

このままだといつになっても出発出来ないと思い、僕は息子を抱いたまま「せっかく行くならおもしろくしてこなきゃダメだよ」と言って背中を向けると、再び「エ―――――ン」と泣き出す妻。なんか僕がすごく悪いことしてる気もしたのだが、仕方ない。40歳以上の人にしかわからない例えになってしまうが、「いなかっぺ大将」並みの大号泣を見せた妻は、泣いたまま息子とお別れし、バスに乗り込んだ。

さあ、ここから1年7カ月ぶりの体を張った芸人としての仕事に挑む妻と、そして母親がいない状態で、息子、笑福と向き合う僕の5日間が始まるのだ。


 
今回の気づき
とある瞬間、母親は子ども以上に子どもっぽくなる。
妊活休業から妊娠に至るまでの日々をつづり、日本中の夫婦に感動を与えた単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』、大好評発売中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)も併せてお楽しみください。



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)の 出産までをつづった『妊活ダイアリー From ブス恋』「ブス恋シリーズ1~4」が人気。初監督作(脚本も担当)となる映画『ラブ×ドック』は2018年全国ロードショー。