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ブスの瞳に恋してる♥ 第132回「息子の分もしっかり食べなきゃ!」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


我が家に息子、笑福が来てくれてからというもの、生活は一変。だが、変わらないものがある。

それは妻の食欲。変わらないと言うか進化したと言ってもいいかもしれない。

妊娠中は厳しい体重制限により4キロまでしか太っちゃいけないと言われ、最終的に6キロくらいでおさえて、助産師さんに「がんばりましたね」と言われ、ストイックな一面も見せたが、子供を産んでからは、「おっぱいから笑福に栄養あげなきゃいけないから二人分だからね。笑福のぶんも」と言って、食欲も前以上に勢いがある。

我が家はご飯茶碗が茶碗じゃなくどんぶりです。僕が料理係なので、ご飯をよそう時に妻の方には僕のご飯よりも1.3倍くらいの量をよそってあげます。妻は僕が作ったおかずをおいしそうに食べてくれます。おかずを「うまい」連発で食べてくれるから気持ちいい。だが、おかずばっかり食べてしまいご飯が残る。少量残したおかずで最後にご飯を一気に食べるパターンもありますが、おかずだけ食べきったと思ったら、立ち上がり冷蔵庫に行き、卵を取り、それをかけてご飯だけ食べる。そう、まるでお米は別腹とでもいうように、デザート感覚で米を食べる。どんぶりで食べてるのに、朝からもう一杯おかわりする時もある。

僕は焼きそばが好きで、たまに夜ご飯に焼きそばを作るのだが、我が家の焼きそばはあるルールがある。妻にとって焼きそばはおかずなのだ。主食じゃない。ソースの付いたおかず。

だから焼きそばを作る時にはご飯も炊かないといけない。焼きそばを作り、その横に炊いたご飯も置く。焼きそばをご飯の上にかけるように置いて食べる妻は、これ以上はない幸せそうな顔をする。

先日、名古屋に行く用があり、帰りに東京駅でおいしそうなデミグラスソースハンバーグを売っていたので、買ってきて夕飯のおかずにした。妻はハンバーグを食べるや否や「うまーい! このソースがうまい」と絶賛。ハンバーグをご飯にのせてバクバク食べている。しかし、途中からあることに気づく。ソースがうまいという割には、ハンバーグをあまりソースにからめずに食べている。たっぷり絡めて食べた方がおいしいのに。その理由はご飯とハンバーグを食べた後にわかった。どんぶりにご飯の姿は残ってない。皿の上にはハンバーグの姿もない。あるのはデミグラスソースだけ。腹一杯のはずだ。すると妻は立ち上がりキッチンに行き、お湯を沸かし始めた。僕が「なにしてんの?」と聞くと「そんなにうまいデミグラスソースがあるんだから、パスタ茹でないわけにはいかないっしょ」と。

そう。デミグラスソースがうまいと感じた瞬間から、そのソースはあまり使わずにハンバーグとご飯を食べ、なるべくソースを残し、最後にパスタを茹でてからめて食べようとしていたのだ。僕が「食べすぎでしょ」と言うと妻は「〆だよ、〆」と言う。いやいやいや、〆というのは鍋とか食べた後に、炭水化物を取ってないから〆にご飯や麺を入れて〆るのだ。

ご飯とハンバーグを食べた後に食べるパスタは〆ではない。二人前はあるであろうパスタをソースにからめて食べる妻。僕を見て「笑福の分も体に入れなきゃいけないから」と言うが、僕から見てもすでに十分に入ってると思う。

ちなみに笑福は大量に飯を食う妻を見て、目を奪われている。「母ちゃん、あんたどんだけ食うんだよ」「俺の分とか言ってるけど、結局それあんたが食いたいだけだろ」とでも言ってるのだろう。

こないだ、通販好きの先輩からあるものが贈られてきた。大阪王将の餃子。これ通販好きの人の間では有名らしく、大阪王将の通販の餃子はかなりうまいとのこと。袋には「業務用」と書かれていて、一袋に50個も入っている。冷凍なので、必要な分だけ出して焼けばいいのだ。知り合いのグルメな芸人さんも絶賛していたので期待値は高まる。妻も「うまそうだな」と冷凍状態なのによだれを垂らしている。その夜、僕が焼いて妻と食べることにした。

50個入っている袋の中から何個取り出して食べようかと思い妻に聞いた、「何個焼こうか?」と。妻はちょっと考えて僕に言った。「50個」。え? 50個? 普通はここから取り出して焼くんでしょ? でも妻は言った。「うまいもんならペロリだよ」と。50個の餃子を三回に分けて焼いた。僕は居酒屋でバイトしてた時に餃子を焼きまくっていたので慣れてはいたが、50個を焼き家庭用の皿に一気にのせたが、その姿は圧巻。そして食べ始めると確かにペロリ。30分もかからなかったかもしれない。

妻がよく言う名言があるが、この餃子を食べている時もその言葉が飛び出した。「あ~、本当にうまいものって、食えば食うほど腹が減るんだよな」。よくわからないけどわかる気がする。

僕ら夫婦が餃子50個を食べる姿を凝視していた笑福だが、離乳食もよく食べる。こないだ鍼の先生が笑福を抱いたら「ずいぶん大きくなったね。笑福君、このままだと太っちゃうから、ちゃんと食べ物も制限しなきゃダメだよ」と言った。妻は「わかりました」と元気で言ったが、自分の食事も制限できない妻が息子に「食べすぎたら太っちゃうよ」と言えるのだろうか。もし「じゃあなんでママは太っていいの?」と言ったらどうするのだろうか?

そんな質問を言う日が確実に近づいてる気がする。


 
今回の気づき

本当にうまいものは食うほど腹が減る……らしい。
妊活休業から妊娠に至るまでの日々をつづり、日本中の夫婦に感動を与えた単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』、大好評発売中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)も併せてお楽しみください。



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。