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ブスの瞳に恋してる♥ 第138回「乳首ビーチフラッグ」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


息子、笑福が生まれて一年。もう一年たったのかと思いながらも、やはり父勉休業と題して仕事を減らしているので、中身は濃く、あっという間の中にも、意外と噛みしめながらこの一年を過ごすことが出来たなと思ったりしています。

そんな中、妻はまだ母乳をあげています。一応、一年たったら時期を見て断乳する方向だそうです。この断乳の仕方も今後の体にとってとても大事らしく、おっぱいマッサージの先生と話しながらおっぱいをやめるのだとか。「今日からやめ!」って感じでいいのかと思ってたら、そうもいかないんですね。

妻がそのうち断乳する時はくるわけですが、断乳したら、今、笑福とやってる鈴木家の遊びが出来なくなってしまうからちょっと寂しい。

一体、どんな遊びをしてるかというと、それは「乳首ビーチフラッグ」と名付けた遊び。AV嬢だらけの運動会企画でありそうなこの名前ですが、エロいものではない。これは父と子のコミュニケーションにとてもいいのです。

笑福はここ数カ月、母乳は飲んでいますが、回数も減り、ちゃんと飲んでる感じがありません。乳首はくわえるのですが、一分もすると口から離し、しばらく顔を左右揺らした後に、また気が向くと乳首をくわえる。母乳を飲むためというよりも、ある意味おしゃぶり的な扱いなのでしょうか。母親と子供だから乳首を使ったおしゃぶりに見えますが、これが大人の男と女だったら完全にわがままな男のペッティングになってしまいます。どれだけもったいぶるんだよ! 的なね。

妻は乳首を離した笑福に「もう飲まないの? 飲まないんだったらしまっちゃうよ」と言っておっぱいをブラジャーにしまおうとする。と、笑福はいきなりまたくわえる。その繰り返し。結局結構時間がかかる。そんな笑福を見ていておもしろい行動するなと思い、ある日、僕はとあることを実行しました。

それは、笑福が妻の母乳を飲んでいるけど、飽きて、乳首を口から離した時にあることをするのです。僕は妻の乳首に顔を近づけていくのです。そして「お前が吸わないならお父ちゃんが吸っちゃうぞ~~~」と言って、どんどん僕の口を妻の乳首に近づけていく。すると、焦った笑福が「これは俺のものだ」と言わんばかりな感じで、パクっと乳首をくわえます。そして近づいた僕の顔を「こっちにくるんじゃないよ」と言わんばかりに手で思いきり押し返す。この瞬間がとてもかわいい。

それ以来、この遊び「乳首ビーチフラッグ」をよくやるようになりました。笑福が妻の乳首から口を離す。すると僕が顔を近づけて「お前のミルクをいただいちゃうぞ~」と言って妻の乳首に口を近づける。妻も「笑福! お父ちゃんに吸われちゃうぞー」とあおる。すると笑福が急いでパクっと口にする。

これを何度も何度もやっていると、そのうち、僕が口を乳首に近づけていっても、笑福は興味ないフリをする。だけど結局、僕の口が妻の乳首ギリギリに近づくと、笑福は急にギリギリでくわえたりする。こんなツンデレな感じもやったりする。赤ちゃんなのに大人をモテあそぼうとします。

父と子供のコミュニケーションの取り方は様々ですが、正直、母と子に比べて父と子のコミュニケーションのパターンって意外と少ない。そのバリエーションの少なさゆえに、自分にガッカリしてしまうこともあったりする。でも、この「乳首ビーチフラッグ」を始めてからは、妻の乳首を挟んで、息子と僕と妻、新たなコミュニケーションが取れるようになりました。息子は僕と妻の体が近づくとやたら笑顔になります。笑います。だから乳首ビーチフラッグが始まると、嬉しそうなのです。

が、先日、乳首ビーチフラッグを始めると、僕の口が乳首に近づいても笑福は全然乳首をくわえてこない。ギリギリになってもくわえない。そしてついに僕がパクっとくわえてしまった。すると笑福はとても大きな笑顔で「ギャハハハハ」と笑う。息子の目には、父親が母親の乳首をパクっといっちゃった顔はどう見えたのか?

子供とのコミュニケーションの取り方は人それぞれだと思いますが、子供を楽しませようとするばかりに行き詰まってしまう人も多いと思います。だけど子供の頃、大人が楽しそうに遊んでることに憧れましたよね。そうなんですよね、単純なんですが、大人が楽しんでる姿に子供も笑う。自分たちが楽しめながら笑いながら出来ることって大事ですね。

乳首ビーチフラッグ、おすすめです! まあ、やる人少ないでしょうけどね。


 
今回の気づき
親が楽しんでる姿を子供は喜ぶ。
妻の妊活休業から出産までの日々を、夫の立場で詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』好評発売中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)も併せてお楽しみください。



鈴木おさむ
放送作家。テレビの放送作家業は1年間休業。ドラマの脚本や小説も数多く執筆。はじめての恋愛小説『美幸』(角川書店)が好評発売中。