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ブスの瞳に恋してる♥ 第140回「感動、ファミリーヒストリー」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


NHKの『ファミリーヒストリー』という番組に妻・森三中の大島美幸が出演しました。この番組、見たことある人も多いと思いますが、その回のゲストの親から先祖、家系を調べ上げて、その人のルーツを見つけていこうという非常に優れた番組。妻のことを調べるため、スタッフが実家である栃木の田舎町に何度も通ったらしい。その番組で妻に伝えられたことは僕も知らなかったことばかり。

まず妻の名前の由来。妻が生まれた日が雪の日だったから「美しい雪」ということで「美雪」にしようとしたんだけど、妻の母が「冷たい感じがする」ということで「美幸」になったとか。それって知らなかった。

そして妻はイッテQという番組で「親方」と言われている。一緒に町を歩いていても、しょっちゅうちびっ子から「親方」と声をかけられる。ファミリーヒストリーの調べで、そんな妻の母親の先祖に力士がいたことが分かった。地元で人気の力士でとても強かったとか。妻は番組で親方と呼ばれ、何度も相撲を取り、時には相撲でケツを出されて泣く。そしてその夫である僕は数年前からお相撲さんと関係が濃くなり、その縁で息子の笑福は5月に横綱・白鵬に抱えられながら両国国技館で土俵入りをすることが出来た。これももしかしたら先祖の力士である人がくれた力士の縁なのか? だとしたら女性である子孫を「親方」と呼ばれるように仕組んだなんて、なかなかジョークのわかる人である。

もう一つ。番組で印象的だったこと。カレーライスだ。

妻の母親の母親、つまりは祖母は複雑な家庭だった。色んな事情があり、祖母と妻の母は血がつながっていない親子だったのだ。だからこそ本当の親子になろうと一生懸命だった。妻の母はカレーライスが大好きで、日々、祖母は娘が喜ぶ甘口のカレーライスを作った。そのカレーライスは妻の母にとって思い出の味だった。

2008年、妻の赤ちゃんが残念なことになってしまった時。もう二度と元気になることはないかもと思うくらい落ち込んでしまった。すると週末に妻の母が訪れて、妻と多くの会話を交わすことなく、料理を作ることになった。「美幸、何が食べたい?」と言った時に妻がリクエストした料理が「カレーライス」だった。

お母さんは大島家直伝の甘口カレーライスを作り、妻が食べた。そしてお母さんは帰っていった。ただそれだけ。だけどそのカレーを食べた妻は再び笑顔になることが出来た。多くの言葉を交わすよりも、あのカレーライスに大島家の人々の沢山の愛と思いが詰まっていて、だから妻があのカレーを食べて元気になれたのだと分かった気がした。あの時に妻に「カレーライス」と言われて、お母さんはどんな思いだったんだろう? 親子って不思議だなと思えた。

番組の終盤。妻の結婚について両親に聞くくだりがあった。僕と妻は交際日0日というふざけた結婚をしている。妻が結婚した時は22歳。とても若い。しかも妻の家の子供は妻と妹の女性二人。大事な娘を嫁に出すのは大きな決断である。

正直、そんなふざけた結婚の仕方をして、挨拶に行ったら、ご両親に殴られるかもしれないと思っていた。そしてご両親への挨拶の日。妻の実家、栃木の田舎町に行った。しかも不安だったので、森三中の村上と黒沢、芸人さんも10人ほど引き連れていってしまった。それだけで怒っていい。緊張しながら妻の実家の玄関を開けた。初めてお会いしたお父さんとお母さん。僕が家に上がり、正座をしようとした瞬間、お父さんの方が早く正座して「このたびはもらってくれてありがとうございます」と言った。かなり驚いてしまった。

あれから14年。お父さんは、あの時はああは言ったものの、内心怒ってる気持ちがあるんじゃないかと思っていた。僕のことを失礼なやつだと思ってるんじゃないかと。ファミリーヒストリーのインタビューでその時のことを聞かれて、お父さんもお母さんも口を揃えて言っていた。「美幸の結婚は無理だと思ってた」「だからもらってくれるだけでありがたい」と思っていたと(笑)。あの時の気持ちは本心だったんだと。

それを聞き、安心すると同時に、あらためてご両親に感謝しました。

NHK『ファミリーヒストリー』は僕の心のつかえまで取ってくれたいい番組だった。本当にありがとうございます。

ちなみにですが、話はそれますが、僕の思い出の母の料理はすき焼きです。中学・高校と6年間サッカー部に所属していたけど、一度もレギュラーになれずに終わっていった。高校三年の最後の夏、最後の試合が終わって家に帰った。お母さんは「6年間、お疲れさま」と言って、すき焼きを作ってくれた。あの時のことをすごく覚えている。

笑福がこれから大きくなって、一歩を踏み出したい時に……。妻もあのカレーライス、作る時、くるのかな……。と思ったりして。


 
今回の気づき
何が好きか? 何が嫌いか? すべてのことに理由があるのだ。
妻の妊活休業から出産までの日々を、夫の立場で詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』好評発売中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)も併せてお楽しみください。



鈴木おさむ
放送作家。テレビの放送作家業は1年間休業。ドラマの脚本や小説も数多く執筆。はじめての恋愛小説『美幸』(角川書店)が好評発売中。