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ブスの瞳に恋してる♥ 第145回「大事なのは客観力」

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第145回「大事なのは客観力」

 
イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


息子・笑福を授かって1年3カ月がたち、断乳も成功。息子もどんどん歩き始めて、何を言ってるかわかりませんが、長い言語も話し始める。乳児から幼児に進化を遂げる中、出産後、妻と衝突しました。

理由は、保育園の送り迎えについて。妻はこの秋から深夜ドラマに出演する。出演を悩んでいたが、僕が出演を強く押した。原作もおもしろかったし、テレビ東京の深夜ドラマ枠と言えば名作も生みだしている。しかも「主演」。週に二日、育児のスケジュールもかなり考えてくれる中でのオファー。妻はレギュラー仕事以外は、結構セーブしています。そんな中でのドラマのオファー。僕は言いました。自分も育休を終えて仕事をやっているけれど、「一緒に話し合って、スケジュールを考えて協力するから、出た方がいい!」と。

妻は出ることに決めました。

当たり前ですが、ドラマは朝が早い。ということは保育園の送りを僕がやる回数も増えていく。僕は保育園に迎えに行くのも送りに行くのも好きだ。ただ問題が、僕も来年1月からの連続ドラマの脚本を引き受けてしまったため、かなりのハードスケジュールに。

息子・笑福は日によっては朝6時には起きる。妻が6時に出発してしまうと、僕しかいない。夜中までドラマの脚本を書き、寝てちょっとすると笑福が起きる。6時に起きてから9時に保育園に送っていくまで、全力で動き回る。この3時間で44歳のおじさんの体力が失われていきます。大体テレビ番組の会議は昼頃から始まります。笑福を9時に送っていき、会議に行く12時くらいまで原稿を書こうと思いますが、あまり寝てない状態で笑福と遊び、保育園に送っていくと、正直、僕の充電池は10%も残ってない。充電しないと動けない状態で寝てしまい、そして起きて焦る。会議に行き、夕方に息子を迎えに行き、妻が帰ってくるまでの間、笑福の面倒を見ながら、合間に脚本を書く。この忙しさは、僕の目線。妻は息子を寝かせてから、台本を覚えて朝起きて、笑福の朝食を作ってからドラマに出かける。そこにくわえてレギュラー番組も入ってくる。家の掃除洗濯・そして出来る限り笑福と向き合って育児。

知らず知らずのうちに、妻と僕の体力と精神力は限界近くに来ていた。仕事と育児。両立することが大変なのはわかっている。だけど実際にそこに立ってみると、言葉で「大変だ」という以上の大変さがそこにはある。でも、二人で望んで望んで授かった子供である。弱音なんて吐きたくない。妻だってそう思っている。

そんな中でのある日の夜。妻が僕に保育園の送り迎えのスケジュールを言ってきた。「木曜日は5時に行けるよね?」と言った。僕は「あれ? その日無理だよ」と言うと「え? こないだ、大丈夫って言ったよ?」とイラっとする妻。僕が「いつ?」と言うと、「ベッドの上で」。

僕が寝起きの時に妻はスケジュールを確認し、僕が空返事をしたようなのだ。僕は言ってしまった。「寝起きでそんな大事なこと聞かれても」と。すると妻は「だってあの日は寝起きの時しか聞けなかったじゃん」とイライラアップ。正直、その数日前から、妻の僕に対する言葉が強かった。そんな言い方しなくてもと思った。自分では「我慢」してるつもりだった。妻がため息とイライラした言葉を繰り返すので、言ってはいけない一番のNGワード「俺だって一生懸命やってるじゃん」と言ってしまった。言っちゃいけないってわかってたのに言ってしまった。

僕も気持ちのやり場がなく、自分の仕事部屋に入った。だけど、やっぱり、言ってはいけないNGワードを言ったことに反省し、リビングに戻ると、真っ暗な部屋の中に妻の影。その心霊現象のようなシルエットに「うわ!!」と言ってしまった。電気をつけると妻が泣きながら日記を書いている。真っ暗な中で泣きながら日記を書く。この行動には怒りと悲しみ、様々なものが混じって滲んでいる。だから謝った。「まずはごめん」と。「まずは」と付けてしまうあたりに自分のプライドが捨てきれてないのがわかるが、そこから、妻も謝り、とりあえずの仲直りをした。うちは喧嘩は次の日に持ち越さないというルールだから。

翌日。僕は、出産前に、ある女性から言われた言葉を思い出した。「出産後の女性の行動と言葉にへこんだり、怒ったりしちゃダメだよ。クレイジーなんだから」と言われた。妻は産後、産後鬱のような状態はなかったし、感情の起伏が激しくなり、僕に当たることはなかった。でも、断乳してからはイラつきも多かった気がする。ただでさえホルモンバランスが崩れているであろう中で、僕が背中を押して始めた仕事で時間的にも精神的にも追い込まれている。なのに、僕は自分のことだけ考えている。これ客観的に見たら??

僕は自分を客観的に見る客観力は高い方だと思っている。「自分が今ドラマの出演者だったらどうだろう?」と考える。そうすると、明らかに妻と衝突した時の僕は? 視聴者が超腹立つやつじゃん。格好悪い夫じゃん。

育児と仕事。時間的にも追い込まれてしまう時がこれからも来るかもしれないけど、そのたびに立ち止まって指さし確認。自分を客観的に見るようにしよう。連続ドラマ「笑う門には福きたる」で、俺はどう見えるのか? 格好いい出演者でいたいな。


【今回の気づき】

客観力を養おう



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。