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ブスの瞳に恋してる♥ 第149回「川の字といびき問題」

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第149回「川の字といびき問題」

 
イラスト・ヤマザキマリ

イラスト・ヤマザキマリ


僕は妻に言えなかったあることがある。それは……。

結婚して14年。息子・笑福が生まれてから、実は妻と僕と息子は同じベッドで寝ていない。笑福が生まれてすぐに、一緒に寝られるようにと、広めのベッドにした。が、今、僕だけはソファーで寝たり、違う部屋にマットレスを敷いたりして寝ている。なぜ一緒に寝ないのか? 不仲? 違う。その理由は僕のいびきだ。

僕はもともといびきをかくタイプではなかった。じゃあなぜいびきをかくようになったのか? 加齢? それもあるかもしれない。でも一番は太ったことだ。妻と結婚してグイグイ太っていくことにより、いびきが出るようになっていた。一度タニタのダイエットをやって痩せた時にはいびきはなくなっていたみたいだが、再び太り始めると同時にいびきも出始めたみたいだ。毎日出るわけではないみたいだが、とても疲れた時はいびきの音量も大きいようだ。笑福を授かる前はいびきも見逃してもらえた。あまりに大きい時は、何度か起こされたこともあるが、「まあ仕方ない」ということで、妻と一緒のベッドで一緒に寝ていた。

しかし、笑福を授かってからは変わった。最初の3~4カ月は自分で一緒に寝ることを辞退した。なぜなら赤ちゃんの笑福を僕と妻で挟んで寝ると、寝ぼけて僕が足でも笑福の体に落としてしまったらとんでもないことになると。ネガティブシミュレーションをしたら怖くなったので、首が座って、ちょっと体が大きくなってから一緒に寝ようということになった。

うちのベッドはマットにも結構こだわっているので、熟睡できるし疲れも取れる。逆にソファーで寝ると疲れたり、首を寝違えたりする。マットレスで寝ればソファーよりはマシだが、正直ベッドの疲労吸い取り効果にはかなわない。

なにより親子3人そろって川の字で寝たい。早く笑福の首が座って体がしっかりしてこないかなと願った。ちなみにだが、生後3カ月くらいの時に息子・笑福の寝顔を見ようと部屋に入ったら、妻の右足が思い切り笑福の体の上に乗っていたので、その練馬大根よりも食べがいのある大きな大根、いや妻の足をゆっくりと笑福の体から剥がしたことがある。

で、笑福が生後半年を過ぎ、体も大きくなってきたので、、妻から「そろそろ一緒に大丈夫かもね」とお許しをいただいた。いよいよ待望の川の字寝。word of river sleeping!と中一的な英語にしてみたが、とにかく、憧れの3人そろっての睡眠。

3人で寝た初日、途中で妻の手がとんとんと僕の体を叩き、僕は目覚めた。妻が言った「ちょっといびきがうるさいかな。笑福が起きちゃう」。僕は「気をつける」と言って寝たものの、いびきなので気をつけようがない。再び眠りに入ると、妻からの体のタップ。そして「いびき、うるさいなぁ」と。だからその日は諦めて、ソファーに移動した。

翌日、また3人で寝る。が途中で、妻の手が僕を叩きいびきの注意。そして僕だけソファーに移動して睡眠。同じ行動を数日繰り返して、妻から言われた「いびきがうるさいから、笑福がもうちょっと大きくなるまで無理かな」と。

そこで僕は思う。「大きくなるっていつだよーーーーー」と。「大きくなってもいびきがうるさかったらダメでしょーーー」と。妻が母親になった瞬間、優先順位の一位は子供であって、子供が生活しやすいようにするのは当たり前だ。だけど、一緒に寝れないなんて。

川の字で3人で寝れないなんて。僕はその日から、再び完全なソファー睡眠とマットレス睡眠をするようになった。いつか妻と笑福と同じベッドで寝られる日が来るのを信じて。

僕の周りには太った人が多い。実はお相撲さんで呼吸器をつけて寝ている人が多いと、知人に聞いた。その人もつけて寝ている。つけて寝るといびきが出ない。しっかり鼻呼吸をして、深い睡眠に入れる。僕もそれを勧められた。それで寝ればいびきが出ないわけだから3人で一緒に寝られるのだ。だが問題がある。一度呼吸器をつけて寝るようになると、それをして寝なかった日と体調にかなり差が出来るらしい。一度つけてしまうとそれがないといけない体になる。旅行に行くにもその呼吸器セットを持っていかねばならない。さすがにそれは面倒だ。だから僕は、妻と笑福と寝られる日が来ることを夢見て、一人寝ながら夢を見る。

と、ここまで書いておいて最初の一行に戻るのだが、僕が妻に言えなかったことがある。

ずっと言えなかったこと。だけど先日、それをお母さんが言ってくれたのだ。笑福が風邪をひき、保育園を数日休むことになったので、実家から妻のお母さんが助っ人に来てくれた。

お母さんが来た時は、妻と笑福とお母さん、3人で川の字で寝る。羨ましい。

こないだお母さんが助っ人に来てくれて、帰る時に、妻にあることを言って帰ったらしい。妻はそれを僕に言ってきた。「今日、お母さんに言われたんだけどさ……私もいびき、かなり大きいらしいね」

そう! そうなのだ! 妻もいびきが大きい!! それを言うに言えぬまま、ずっと過ぎてきた。

お母さん、言ってくれてありがとう。妻のいびきが大きくても笑福は起きることはない。だから、きっと僕が一緒に寝ても…と思うが、僕と妻のいびきがプラスされて、1+1が10になったら、さすがに笑福も起きるかも。そう思うと、まだ一緒に寝れない自分がいる。早く川の字で寝たいよ~~~~!


【今回の気づき】

夫婦だからこそ言いにくいこともある



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。夫婦ふたりで仕事と育児をこなす。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1〜4。