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第86回「小さな喧嘩は仲良くなるための小さな修理」

ブスの瞳に恋してる
 
イラスト/ヤマザキマリ
イラスト/ヤマザキマリ
 
第86回「小さな喧嘩は仲良くなるための小さな修理」

普通の夫婦ってどのくらい喧嘩するのでしょう? うちはあまりしませんが、こないだしてしまいました。小さすぎる喧嘩。
 
二月の雪が降った日。すんごく寒かった。夜中の二時くらいに妻が風呂に入りました。最初、妻に「一緒に入るー?」と言われたのですが、原稿を書いている途中だったので「大丈夫でーーす」と言って入りませんでした。
 
ただ、原稿書いてる時、暖房つけててもすごく寒くて、仕事に集中出来ない。これはやっぱり風呂に入ろうと、服を脱ぎ、パンツも脱ぎ、風呂に行きました。一緒に入るから妻も喜んでくれるだろうと。
 
が、風呂に行ってみると、妻は風呂の中で本を読んでいました。漢方の本。勉強中です。全裸になった僕を見て冷静に……

「今、本読んでるからダメ」と言いました。
 
えーーーー!?

全裸なのにーーー。股間ブランブランなのに。だからスネました。スネまくりました。なので、もう一回服着ましたよ。この服を着る時のむなしさたるや、半端ないです。なんかこの気持ちを自分の中で回収出来ずに、服を着て、風呂に入ってる妻に「今から一人でバーに行ってきます」と言うと、妻は「スネて、そんなこと言ってんじゃない」と叱りました。
 
だけど、厳しくした後は優しくしてくれます。本を閉じて「じゃあ、入っていいよ」と一緒に風呂に入る許可をくれました。
 
一緒に風呂に入りました。やっぱり風呂はいい。体の芯まで温まる。
 
先に風呂を出て、ベッドの上で携帯をいじっていました。僕の中では小さなやすらぎ。すると、風呂をあがった妻が出てきて、僕に
言いました。風呂に入り、体を綺麗にしたあとの夜中の二時。

「今から一緒にゴミ捨てに行ってくれない?」
 
えーーーーーー!?
 
風呂入った直後じゃん。夜中の二時じゃん。
 
妻は次の日から海外ロケ。だから今のうちにゴミを処理してしまいたいらしいのですが、僕が「明日、やっておくから」と言うと「信用出来ない」と言います。風呂入った後に言うなよと思って、不機嫌アピールを出すと「じゃあ、私一人で行ってくる」と言います。そんなこと言うなよ。そんなこと言ったら、俺が行くしかないじゃん。
 
さらに不機嫌になりながらも「いいです! 俺が一人で行きます。手伝わないでください」と言って、一人で捨てに行きました。わざと重そうな顔をしたり、汚れるように持ったり。こういう時って不思議と、かわいそうに見せてやろうと思うわけですよね。
 
ゴミを捨て終わって、僕が相当イラッとしている空気に気づいているけど、妻は妻でイラッとしてる。
 
僕はベッドで寝ることを拒否し、暖房をつけてリビングで寝てやることにしました。今日は一緒に寝るものかと。
 
すると、妻は、そんな僕の反抗的な態度に腹をたてて「こんな寒い日に、そんなところで寝たら風邪ひくよ」と言うのです。僕は反抗期ですから「いいよ。風邪ひいたって」と言いました。そしたらですよ、なんと暖房切りやがったんですよ。暖房切ることないでしょ。
 
だけど、僕が絶対そこから動く意思がないことを理解すると、再び暖房はつけてくれました。ちょっとした優しさを見せる。
 
結局、その日はバラバラで寝て数時間。起きて妻がリビングに来て、目を合わせて同時に言いました。「ごめんね」と。そして抱き合いました。
 
何してんだ! って話ですよ。だけどね、思うわけです。僕らは他の夫婦に比べると家で一緒にいられる時間が少ない。だけど、妻が妊活休業に入ったら妻といる時間も増える。そうすると、おそらく、このような小さな喧嘩も増えるでしょう。だけど、この小さな喧嘩、喧嘩中は面倒だけど、仲良くなるための小さな修理なんだと思おう。
 
一緒に生活していれば小さなズレなんかいっぱいある。ズレに気づいているのに気づかないフリしてたら、その家が傾いてく気がしてね。
 
だから小さな喧嘩を沢山して小さな修理をしていく。これがよりいい夫婦になるための秘訣なのかもと気づけた2014年の冬。


今回の格言

小さな喧嘩は小さな修理
小さなズレがちょっとした喧嘩に発展することもあります。でも、それを「仲良くなるための小さな修理」と思えば、喧嘩もまた楽し。そんな「小さなズレ」の話は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!