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第12回 シーズンチケット


コロポックルの小屋

koropokkur

クウネル編集部の塚越です。人より多少サイズが小さいため、コロポックル系に属しています。目線も若干低いので、世界が広く見えて仕方ありません。ここでは、そんな重心低めな目線で見た毎日をお伝えしたいと思います。

 

第12回
シーズンチケット

ひいきのサッカーチームがあります。
地元に本拠地があるというだけで、
郷土愛に背中を押され応援し続け10余年。
年間チケットだって持ってます。

とあるスタジアムのメインスタンド、前から3列目。
ここが私の指定席。
年間チケットは毎年継続されるので、
基本、席のご近所さんたちの顔ぶれも変わりません。
同じ席に10年も座っていると、
さながら人間定点観察を行っているような気持ちになります。

斜め前方に座っていた小さな男の子。
ついこの間までお父さんの膝の上に抱かれて観戦してたのに、
いまやその横顔は、たくましい少年のそれに変わりました。

仲良くふたり並んで応援していたカップルは、
その睦まじい距離感のまま、それぞれの左手薬指に約束の印が加わりました。

二列前のお兄さん、ずうっとひとりで観てたのが、
最近違う席で女性と観戦しているのを目撃。
ちょっと照れながら、解説なんかしちゃったりして。
気づかないふりして、心でエールを送ります。

そしていつも素敵だなあと思って見ていた、ご高齢のお父さんと40がらみの息子さんのふたり組。今年はお父さんの席がぽっかり空いてしまいました。

この席から見えるのは、サッカーのゲームばかりではない。
人それぞれのドラマも、断片的ですが覗けたりするのです。
私のことも、どこからか観察している人がいるでしょうか。
その人を驚かすドラマ、目下思案中です。