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第48回 夏を待つ


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第48回
『夏を待つ』

『夏を待つ』

最近また暖かくなった。ラジオから流れてくるブラジルのトロピカルな音楽を聴いていると夏が待ち遠しい季節なのだと感じる。
今年のはじめに石垣島や与那国島がある八重山諸島に行った。その中のひとつ、西表島は亜熱帯のジャングルやイリオモテヤマネコなど貴重な動物たちで有名な島だが、ここに来ると写真を撮りたくなる風景がある。

それは上原港と鳩間島の間にある珊瑚のかけらが山となってできたバラス島という無人島。島の大きさは直径30メートルほど。その白くて小さな丘は台風や季節風の影響で毎年形が変わるそうだ。

2006年、初めて見たバラス島はひょうたんのような丸い形をしていた。だが久しぶりに見ると、表面積はさほど変わらない(ように見える)ものの、かりんとうのような長細い形に変わっている。潮の満ち引きで海面に浮かぶ島の形は違うから満潮時の一番小さな状態を写真に撮りたいと思う。

いつか衛星写真のように全貌がわかるよう、空から真俯瞰で撮ってみたいと思うけど、小さなチャーター船に乗って白い点が徐々に近づいてくるのを感じるのもいい。真っ青な水平線に白い珊瑚の丘が浮かぶシンプルな風景だから太陽の角度によって色も形も全く違って見える。

船はエンジンを切り浅瀬に近づく。船底と珊瑚のかけらがこすれる音がじゃりじゃりと足下で響く。碇を下ろし、波が引くタイミングで上陸しなければならないが、白い珊瑚で反射した光が眩しくて、その瞬間は目を細めるだろう。

来た方向へ振り返るとうっすら見える西表島の山々、正面には鳩間島が浮かんでいる。かりんとうのような形した島の端から端までを歩き、大きさを身体で知る。まわりは海と空。そこには自分たちしかいないことを感じれば、もう何もすることがなくなる。碇を上げ、船は着いた時と同じようにじゃりじゃりと音をさせながら島を離れる。やはり遠くから眺めているのが一番美しいねと、小さくなるバラス島に手を振る。

久しぶりに訪れたバラス島での少しはやい夏を思い返し、本番の夏が恋しくなる。

『夏を待つ』

追伸
なにもすることはないと書きましたが、バラス島のまわりをシュノーケリングするツアーがあります!次、チャレンジしたいです。

平成25年5月20日
マドロス陽一