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第60回 マドロス陽一の写真便り その10 写真と編集者編


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僕はカメラマンのマドロス陽一こと長野陽一と申します。この度、5冊目の新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』(HeHe) という料理の写真集を出版します。その中にはku:nelで撮り続けてきた料理写真もたくさん掲載されています。それらは美味しさだけではなく、料理を通して取材対象者の暮らしやストーリーを伝える写真たちです。島々のポートレイトを撮るように料理も撮り続けてきました。そして料理写真はポートレイトだと考えました。それを“美味しいポートレイト”と名付けます。ここでは旅した島で見たこと感じたことや、写真の話をしたいと思っています。

http://yoichinagano.com/

 

第60回
マドロス陽一の写真便りその10
写真と編集者編

銀座ガーディアンガーデンで今月5日まで行われた長野陽一料理写真展「大根は4センチくらいの厚さの輪切りにし、」は、おかげさまで大盛況のうちに幕を閉じました。多くの読者の方々にもご来場頂き、ありがとうございました。

料理写真はレシピやエッセイなど普段は文章のとなりにあるものですが、今回はそこから写真だけを取り出して壁に展示するという珍しい写真展でした。
その多くの料理写真は編集部に協力を頂き、実際に入稿した写真原稿を展示しました。これは料理写真が「印刷されるために撮られていること」を見せることが狙いでしたが、多くの写真を同じ空間で並べたことで発見がありました。

今回の展示は、2003年から今年までの11年間という、長きに渡り撮られた写真で構成しましたが、全ての写真の色やトーンにブレがなく、まるで同時期に撮影されたような統一感があったのです。写真にも時代とともに流行があるため、時には明るく派手だったりその逆だったりと、被写体や媒体に合わせて多少は変化するものですが、僕の料理写真にはそれがありませんでした。

その理由のひとつに「料理写真では食材の色やトーンを守らなければならない」ということが考えられます。お米は白くなければなりませんし、お肉や魚、野菜などそれぞれの色や質感を誰もが知っているため、それをある程度再現しなければ料理が美味しそうに見えないのです。
また、僕がこれまで撮影した料理写真は全て雑誌に掲載されるためのものでした。当然ながらそれらには取材される明確な理由があり、そもそもそれは編集者やライターの方々が見つけ、考え出したものです。企画会議でさらに練り上げられたその内容に沿うように、カメラマンは現場へ同行し撮影するわけで、その料理の美味しさのヒミツは取材をしたいという理由に既に存在しているのです。そこで心掛けたことは、なるべく目の前の普段を丁寧に、写真に定着させることでした。アートディレクターや編集部からは美味しさを演出する特別なことは求められていないため、編集者とライター、なにより取材対象者のおもいを伝えることこそが大切だと思い、僕はこれまで撮影してきました。それが、もう一つのブレなかった理由であるように思います。

今回の写真展で本から飛び出した料理写真たちは、その分多くのことが写っている気がしてなりません。

新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』刊行を記念して「写真画報」「料理写真大全」の編集長、沖本尚志さんとトークイベントを紀尾井町のCOOKCOOP BOOKにて開催します。

平成26年9月20日
マドロス陽一
 

『長野陽一の美味しいポートレイト』刊行を記念して『写真画報』『料理写真大全』などを手がける編集者の沖本尚志さんとのトークイベントを紀尾井町の『COOKCOOP BOOK』にて開催します。
【日時】9月26日(金)19:30〜21:00 【場所】COOKCOOP BOOK キッチンスタジオ 【料金】1,000円 問い合わせはHPへ。