マガジンワールド


From Editors No. 24 フロム エディターズ 2

From Editors 2

心地の良い休日の家に思うこと。
緩く畝る坂道を辿り、木立の隙間から水平線が煌めく高台の日本家屋が桐島かれんさんの休日の家だった。土蔵造りを改築したその建物には、太い梁が渡る天井、黒と白のタイルを敷いたキッチン&ダイニング、和室には緻密な手織りの絨毯、重厚な椅子やテーブル、アンティークのシャンデリア。さりげなく置かれた陶器、籠、布類から小さな雑貨まで、目に留まるもののひとつひとつが洗練されていて、確かに選ばれたものであることが伝わってくる。

美しく整えられた空間でも、どこか「これは仕方がないな」と思うものに出合うことがある。大抵は便利なもの、手軽なものや、選択肢が限られてしまうものなど。すべてをオーダーメイドできるわけではないから、目的に適うものの中から妥協点を探って選ばざるをえないし、それはよくあることだと思う。けれど、そういう「仕方なさ」の気配がしないのだ。

インタビューを受けたりお茶で一息入れたりする合間にも桐島さんは、ここに花を置こうか、ここにはあの絵を掛けようかと目を配っていた。桐島さんによると、ご主人であるフォトグラファーの上田義彦さんは時間さえあれば家中を隈なく眺め、手入れする場所を探し、DIYも得意らしい。そうやって美意識に溢れた場所を暮らしながら使いながらさらにブラッシュアップしてゆく。その結果の、すべてがしっくりと美しく調和する場所はとてもシックで、心地が良いものだった。

翻って我が家を見渡せば、「仕方がなかった」ものが少なくないのだけれど、ということは、まだまだ改善の余地があるということ。少しずつ、時間をかけつつ楽しみつつ。その先にはきっと、シックな世界の入り口があるのかも。

井狩由貴(本誌編集部)
 

改築時に天井を上げて抜けのよい空間に。縁側から海が見えるようにと庭木の手入れも欠かさず。時間も手間も惜しまない姿勢を見習いたい。
改築時に天井を上げて抜けのよい空間に。縁側から海が見えるようにと庭木の手入れも欠かさず。時間も手間も惜しまない姿勢を見習いたい。