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Airbnbで楽しむ、ニッポンローカルの旅03丘の上の窯元と瀬戸内海 #003

提供:Airbnb

穴場の絶景ハイク! 美しい瀬戸内海を一望

Airbnbに滞在することで、出会える旅の魅力を紹介していきます。
第3回目は、ヌードルライターの山田祐一郎さんをゲストに、
瀬戸内海を望む、岡山県の児島を訪ねました。
自然に囲まれた備前焼の窯元で出会ったのは。

目一杯眠るつもりでいたのに、ぱっちりと開いた目で時計を見るとまだ6:05。鳥のさえずりで目が覚めた。窓の外は少し白んできていて、ほのかに太陽の光が部屋へと注ぎ込む。

リスティングの庭から眺めた児島の市街地。

部屋を出ると、空気はやや冷たく、その澄んだ空気の中で、先ほどの鳥の鳴き声がくっきりと響く。少しだけ麓のほうへと歩くと、袋に包まれた果物、おそらくビワだと思われる木があった。手入れの行き届いた畑がちょこちょこと点在し、よく見ると、足元には桜の花びら。昨日は気がつかなかったが、桜の木も迎えてくれていたのだ。少し遠くを見れば、眼下の国道430号を、車が行き交っている。

2日目は児島のまちを巡る。出発前、「コーヒーでもどうですか」というカーキさんの勧めで、ご両親とともに外のテーブルでのんびりとおしゃべりした。

リスティングの冷蔵庫には養蜂で採取した自家製ハチミツが入っていて、滞在中、自由に味わうことができる。コーヒーと一緒にどうぞ、と言ってクラッカーもご用意いただいた。

会話の内容は他愛のないものだ。ちょっとした世間話なのに、それがとても幸福な時間だった。縁もゆかりもないまちにひとりやって来て、こうしてご縁ができて、談笑できるって、かけがえのない体験だと思う。

陶器から家までなんでもつくってしまう孝峰さん。「将来、山に展望台をつくるんだ」と意欲を見せていた。
笑顔が素敵な敬子さん。敬子さんの淹れてくれたコーヒーは格別だった。
敷地内の木には鳥の巣箱が取りつけてあった。

聞けば、カーキさんはこの日のお客さんのお迎えまでの間、少し時間があるそう。「鷲羽山へ行ってみたいんですが」と相談すると、車で連れて行ってくれるとのこと。ご好意をありがたく受け取り、途中、小さなパン屋に寄って朝食を購入し、一路、展望台を目指した。

鷲羽山山頂の手前にある展望台でモーニング。ここから10分ほど登ると山頂に着く。この展望台まで車で来ることができる。
地元岡山では知らない人はいない有名な老舗パン屋〈キムラヤ〉のコロッケパンのほか、ちょっと珍しい〈たくあんサラダロール〉というパンも買ってみた。

鷲羽山は鷲が羽を広げた姿に似ていることで命名されたそう。山頂〈鍾秀峰〉は標高133メートル地点にある。それほど高くはないので、普通に眺めがいい場所なんだろうなというくらいに思っていた。だが、実際、山頂に着くと、平謝りしたいくらい、見事な絶景だった。

もうすぐ山頂。遊歩道が整備されているので、スニーカーで気軽に登ることができる。
パンを食べた展望台が眼下に小さく見える。

270度くらいは開けている見事な眺望で、眼前に瀬戸大橋が飛び込んでくる。大橋の四国側はかすみ、その途方もない距離の長さを雄弁に物語っていた。大迫力の景色ではあるが、潮の流れは穏やかで、橋の下をすーっと滑らかに船が行き来する。大迫力と静。そのギャップがおもしろい。

リスティングへと戻る途中、下津井港にも寄ってもらった。カーキさんの父・孝峰さんに「現在は児島がジーンズのまちとして注目されているんだけど、もともとは下津井港のほうがこの辺りの中心地だったんだよ」と教えてもらっていたのだ。そんな興味深い話を聞いておいて、足を運ばない手はない。

下津井港は江戸から明治中頃にかけて北前船が出入りする岡山の海の玄関口としてにぎわった場所で、現在は漁業が盛んな港町の風情だ。旧道沿いにはレトロなまち並みが今でも残っていて、周辺を散策すると、白壁の建物や細い路地が好奇心をかき立てる。

旧道沿いは歩くだけで楽しい。
猫になった気分で細い路地を散策してみた。

ここでカーキさんはタイムアップ。リスティングへと戻ると、時刻は12:15になっていた。昨日、児島駅で落ち合ったのが13:00だったから、たっぷりおよそ24時間をこの場所で過ごしたことになる。野鳥の声にもすっかり慣れたなとステイの余韻に浸っていると、カーキさんが「記念写真を撮りませんか」と提案してくれた。〈鷲羽窯〉に別れを告げ、一路、児島の中心地へと向かう。

児島市街地へ繰り出す前に〈HÜTTE〉でランチ。一品一品手が込んでいて、すっかり心まで満たされた。ちなみにデザート、ドリンク付きで1200円。

児島の市街地でまず見ておきたかったのは、ジーンズのまちの象徴とも言える〈児島ジーンズストリート〉。〈旧野﨑家住宅〉から南のほうに広がる一帯の商店街に〈桃太郎ジーンズ〉をはじめ、地元のジーンズメーカーのショップが集まっている。味わいのあるビルもちらほら残っていて、まち歩きが楽しい。

顔はめがあれば無視できない性格ゆえにパシャリ。ジーンズ×パンダで「Gパンだ」。

その後、「きっとお好きだと思うので、ぜひ行ってみてください」というカーキさんの言葉を頼りに、アパレルショップ〈KAPITAL〉へも足を伸ばした。福岡の店にも行ったことはあるが、この〈瀬戸内児島赭(そほ)店〉はまったく在り方が違った。

旧児島公民館、図書館だった建物の外観をほとんど手を加えることなく利用しているため、文字通り、まちの空気に馴染んでいる。というか馴染み過ぎていて、知らなかったらここがアパレルショップだと気がつかないだろう。

入り口側にショップがあり、その奥が生産工場。ショップにはギャラリーレンタルスペース、セレクトブックストア〈SOHO BOOKS〉、そしておそらく全国唯一のバンダナのミュージアムまで併設している。

中に入ると一気にKAPITALの世界観が爆発。2Fではアウトレット品も販売されていた。

公民館・図書館といえば、市民が集まる場所。その延長にあるかのように、市民に、そして児島を訪れる人々に向けて多様なコンテンツが用意されているこの場所は、じっくり時間をかけて訪れるほどに楽しみが増すように思えた。

例えば〈SOHO BOOKS〉は東京の〈森岡書店〉店主がキュレーターとなり、写真集や画集、アートブックの古書をセレクト。単純に本を販売する場所ではなく、アート、写真、デザインといったものを体系として新旧織り交ぜて感じられる空間になっている。いうなれば、このストア自体、ミュージアムであるとも言えそうだ。

本のセレクトはもちろん、ディスプレイする棚の選定、その並べ方にも品と知性が行き届いていた。

バンダナのミュージアムも圧巻のひと言。ここでは1910年頃から1980年代頃にかけて主にアメリカの東海岸で生産されたアメリカを代表するバンダナブランド「エレファントブランド」にコレクションを特化。年代、デザインといった関連するカテゴリーごとに鑑賞できるよう工夫されている。

ほかではまずお目にかかれないような希少なものから、ぱっと目で見て楽しいものまで、多種多彩で、バンダナへの興味関心が大いに深まった。

1F、2Fそれぞれで、趣向を凝らしたバンダナコレクションが堪能できる。

帰る前にコーヒーブレイクしようと立ち寄ったのが喫茶店の〈サンレモン〉。70〜80年代の日本のレトロポップな世界観に、50’sのアメリカのダイナーを思わせる空気感を織り交ぜ、それを違和感なく調和させているキュートでポップ、ラブリーかつハッピーな、仮に“現代喫茶遺産”というものがあれば即指定したい稀有な喫茶店だ。

大通りには大きなレモンの看板。レモン色の壁にミントグリーンのアクセントカラーを合わせたファサードは、いい歳のおじさんさえもキュンとさせる。

コーヒー1杯でここまでの説得力を発揮する店って、なかなか稀有だと思う。

営業時間は朝8:00から夜の20:00まで。手頃な価格のモーニング、うどんやチャーハン、スパゲティナポリタン、なぜか佐賀県の名物・シシリアンライスや長崎県の名物・トルコライスもあり、なかなかバラエティ豊かな品揃えだ。スイーツ&ドリンク類もミルクセーキ、レスカ、パフェやケーキのほか、コーヒーも充実していて、いつ、誰が来ても満足できる内容だった。コーヒーは酸味が抑えられたビターな味わいで、レモンを連想させるカップがその味をいっそう引き立てた。

あまりの素敵ぶりに、ついつい長居してしまった。今度はランチに立ち寄りたい。

1泊2日の児島旅行。思えば、児島で過ごすという体験自体が人生初だし、ここで起こった出来事のすべてが初体験だ。カーキさんというホストを通して見た景色、口にした食べ物は、普段の旅と違って、とても近くに感じられ、児島というまちがなんだかもう他人に思えない。

そして、近いだけじゃない。経験したすべてが濃厚だった。風光明媚な自然があり、ジーンズというファッションがあり、独自のカルチャーがある。欲を言えば、ひとつひとつの出来事に、もっと時間を使いたかった。陶芸に半日、まち歩きに2日、そして滞在に4、5日。長く触れれば触れるほど、この「楽しかった」という感情は、きっと、もっとまだまだふくらむ。そんな余力を、児島に感じている。

Photo:tada text:yuichiro yamada

Guest Profile
山田祐一郎

やまだ・ゆういちろう●福岡県出身、現在、福津(ふくつ)市在住。日本で唯一(※本人調べ)のヌードル(麺)ライターとして活動中。麺の専門書、全国紙、地元の情報誌などで麺に関する記事を執筆する。著書に「うどんのはなし 福岡」。 http://ii-kiji.com/ を連載中。

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