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食事革命 vol.10 姉への感謝、そして新たな挑戦。

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vol. 10 姉への感謝、そして新たな挑戦。

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ミラノのキッチンで調理をする姉・麻步さん。市場で購入した新鮮な野菜、果物などが長友選手の食卓に供される。
撮影/長友佑都
明治大学に通っていた頃、僕は姉と同居していた。この頃から姉が僕の食事を作るというのが日常になっていたことは以前に述べた通りだ。この日常は今でも変わっていない。

料理がまったくできない僕にとって、姉のサポートなしにはここまで来ることはできなかったと思う。今回はその姉、麻步のこれまでの取り組みについて語っていきたい。

[ 麻步さんコメント ]

母が仕事に出ていたことから、長友家では幼い頃から私が食事を作ることが多かったように思います。大学時代は佑都と一緒に住んでいたので、そのときも私が料理を作る担当でした。

ところが国外に出て食生活は一変。チェゼーナにいた頃もインテルに移籍してからも、佑都は食事面でかなり困っていたようです。チームでの食事以外は毎回レストランで食べているとのこと。それを知った私は、決心をしました。

働いていた会社を辞め、食事を含めて佑都の身の回りの世話をするために、日本からイタリアへ渡ることを決めたのです。

“私がやらなきゃ誰がやるの!?”

そんな使命感に近い気持ちが、私の中に湧いてきたのでした。

パスタにピッツァにリゾット。当時は完全にイタリア人化していた僕の食事風景だったが、姉が来てからというもの、ガラリと食卓が変わった。

ごはんに味噌汁という和食にありつけることになったことが、なによりありがたかった。胃腸の弱い僕にとって毎日の外食はハードだったし、子どもの頃から慣れ親しんだ姉の料理は僕に安心感をもたらした。

姉がイタリアに来た当初、僕たちは一緒に住んでいたが、姉の結婚を機に別々に住むようになった。その後、姉は2度の出産を経験。こうした生活の変化によって食事のスタイルも変わっていったが、結局、姉の家族と僕が一緒に食事を摂るという習慣に落ち着いた。

食品数が格段に増え、
味付けにも変化が。

2016年を迎え、僕が食生活を変える決心をしたとき、もちろん作り手である姉にはいろいろなリクエストをした。管理栄養士の石川三知さんのアドバイスを参考にしたり、姉自身も新たにさまざまな勉強をして僕の食事革命に積極的に協力をしてくれた。

1食につき、タンパク質は動物性のものが1〜2種類と植物性のものを1種類、野菜は約10種類、豆、海藻、きのこ類などは1種類ずつが食卓に上るようになった。これまでと比べ、格段に食品数が増えたのだ。

[ 麻步さんコメント ]

主菜になる肉や魚は食べる当日、新鮮なものを選んで買うようにしています。石川先生のアドバイスによると、タンパク質は動物性のものと植物性のものを組み合わせて摂るとよいとのこと。それで副菜には植物性タンパク質の食材を取り入れるようになりました。

たとえば、豆乳ポタージュスープ、野菜と豆のサラダ、切り干し大根の煮物、納豆などなどです。野菜は常に十分な量と種類を準備し、いろいろな調理法で副菜に取り入れるようにしました。また、豆、海藻、きのこ類はチームの練習場での食事では不足することが多いので、とくに注意して取り入れるようにしています。

多くの食材を揃えて調理するということは、それだけ買い物の手間も調理の時間もかかるということだ。僕の分だけでなく、姉の家族の食事も用意するわけなので、その労力たるやとてつもないと思う。

そして食品の数だけではなく、味付けに関しても大きな変化があった。

[ 麻步さんコメント ]

よりよい食事を意識するようになって、添加物が多く含まれた調味料をやめて、ナチュラルな味付けを心がけるようになりました。それまでは白いごはんが進むようなしっかりとした味付けをしていたのですが、今は最小限の調味料で、出汁や新鮮なハーブ、柑橘類の搾り汁などを利用して風味を出す工夫をしています。

イタリアでは新鮮なハーブ類が豊富なので、風味付けの材料には事欠きません。また、日本ではゴマをよく食べますが、こちらでは栄養価の高いシード類のバラエティも豊富です。イタリアならではのそうした食材も料理のバリエーションを広げることに役立っています。

実は石川さんからこんな話を聞いたことがある。プロの食事指導者でも2週間の合宿が数回続くだけで大変な苦労をするという。同じ人物がずっと作り続けていると、必ずその人のクセが出てしまうのだとか。だから、石川さんのチームでは一度立てた献立を他の人間がチェックするのだという。

何年もひとりで僕の食事を作り続けてきた姉は、さまざまな試行錯誤を繰り返し、食事がパターン化しないように努めてきてくれた。姉には一生、足を向けて寝られない。

そして現在、更なる食への挑戦として取り組んでいることがある。加藤超也シェフという新たなパートナーを迎えて「糖質」の摂取改善に着目している。次号はその「糖質」について書きたいと思う。


豆、海藻、きのこ類
一見、地味なこれらの食材はビタミン、ミネラル補給に役立つ。少量を高頻度で食べるのがコツ。
新鮮なものを選んで買う
主菜の肉や魚は食べる当日、鮮度のいいものを購入。調味料でごまかす必要がなく素材の味が楽しめる。
栄養価の高いシード類
植物の種実にはオメガ3系脂肪酸、鉄分などのミネラル、食物繊維など通常摂りにくい栄養素が豊富。



YUTO NAGATOMO

●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。

構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)