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食事革命 vol.3 食を武器にするということ

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vol.3 食を武器にするということ

これまで僕は自分の食事内容をプロの栄養士に見てもらった経験は一度もない。この企画が始まり、その初の体験をすることになった。管理栄養士の石川三知さんに、まず普段のありのままの食事をお伝えした。たとえば、昨年のある日の一日の食事内容がこれ。

 炊き込みごはんのおにぎり、卵焼き
 ごはん、鮭の照り焼き、豚とズッキーニとシメジの中華炒め、ブロッコリーのおひたし、具だくさん味噌汁、フルーツ
 ごはん、和風ソースの牛ヒレ肉ステーキ、ポテト、アボカドサラダ、ミネストローネ、フルーツ

一見、バランスのとれた食事のように思える。当時は僕自身、そう思っていた。ところが、だ。石川さんに言わせると、

「一般人の食事としてはすごくいいけれど、アスリートとしての武器にはなっていない」

とのこと。朝食はごはんと卵だけで代謝を促すビタミン類などが摂れていない。朝食を軽くしているのは朝あまり食べられないということかもしれないが、そう考えると夜のボリュームが多すぎる等々。

ただ、この時点では一日の行動と食事の相関関係までは報告していなかった。石川さん曰く、

「食べ物は食べ物だけでは存在しない。何時に食事をしてどうカラダを動かすかによって、そのときに必要な食事の内容は変わってくる」
のだそうだ。

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ある日の食事。上から、朝食、昼食、夕食。一般人ならばバランスのいい食事のように見えるが……。撮影/長友佑都

とにかくこのままでは何ともコメントしようがないという。それで、今度は行動記録と照らし合わせた食事内容を改めて石川さんに送ることにした。その内容は次の通り。まず、アウェイで試合のある日。

08:00 起床
08:30 朝食/卵、パン、オレンジジュース
09:00 バス、飛行機で移動
13:00 昼食/サラダ(レタス、トマト)、パスタ(チーズ、オリーブオイル)
17:00 軽食/パン、ヨーグルト、ハム、チーズ、バナナ
20:45 試合
23:30 軽食/フライドチキン、プロテイン、ハム
24:00 移動
04:00 就寝

[ 石川さんコメント ]

この日は試合だったので移動して現地に行ってランチとスナックを食べ、試合をしてその後またスナック。すべてご用意メニューなので選択の余地はないと思います。
昼食でレタスとトマトが摂れているのはいいことですが、フルーツなどのプラスαは欲しいところ。試合の前にカラダの酸化を防ぐフレッシュなビタミンを先に摂っておく必要があるからです。

同じ理由で、試合後のフライドチキンは避けるべきです。酸化したカラダに酸化した油脂を入れるのは火に油を注ぐようなもの。ここは揚げ物ではなく、消化吸収のいいフレッシュチーズなどのタンパク質を摂ってほしいところです。

続いて、その翌日のオフ日。

9:00 起床
9:30 朝食/パン、卵、オレンジジュース
11:00 サイクリングマシン25分、ジョギング15分、ストレッチ15分
12:30 シャワー
13:30 クラブハウスで昼食/ごはん、アボカド、スズキのソテー、クッキー、コーヒー
14:00 帰宅
19:00 外食での夕食/肉(牛サーロイン、牛もも)、トマトソースのパスタ、レタスサラダ、ハム、リゾット

[ 石川さんコメント ]

朝食はパターン化しているので、ここでブロッコリーやアスパラガスなどの野菜をプラスするといいでしょう。どちらも抗酸化力が高く、栄養価が豊富。カラダをいたわりながら動かせる食材です。

昼食はクラブハウスということですが、選択肢があれば野菜を取り入れるべき。試合前後で初めてちゃんと食べる食事。ここで野菜で嵩を増すことで胃腸の働きを促すことができます。たっぷりめの野菜のひと皿が欲しいところです。

夕食のサラダには苦みのある葉物野菜、エンダイブやベビースピナッチなどを加えるとよりいいでしょう。苦みのある野菜はポリフェノールが豊富で、排泄を促す作用も期待できます。

結論を言うと、今の僕の食生活では、栄養素の摂取量に偏りがあるのだという。ビタミンでは葉酸の摂取量が少なく、ミネラルでいうとカルシウムとマグネシウムが少ない。食材でいうと豆、芋、きのこなどが少なくて逆に突出しているのが穀類、果物、肉。こうして客観的に指摘されると、これまでの食事が「武器になっていない」という意味が分かる。

こうした指摘を受けて、いかに僕が漫然と食事をしてきたのかを実感した。そして改めて、食との向き合い方を変えなければと思ったのだ。


カラダの酸化
運動で体内に取り入れる酸素の一部は活性酸素となり、細胞を傷つけて疲労や老化を促す。これが酸化。
野菜で嵩を増す
低カロリーかつ嵩のある野菜を摂ることで食物繊維による腸の蠕動運動の促進作用が期待できる。
ポリフェノール
植物が光合成をするときに作られる成分で、苦み、渋みの元。強力な抗酸化作用があるとされている。



YUTO NAGATOMO

●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年、イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。

構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)