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食事革命 vol.5 食材の数に注目する。

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vol. 5 食材の数に注目する。

イタリア人は外食で料理をシェアするという感覚を持っていない。基本的には1人でひと皿のパスタかピザ、あるいはメインの料理を食べるというスタイル。日本人からするとかなりボリュームのあるひと皿をぺろりと平らげる。

彼らは、「自分は今日これを食べたい」という気持ちでレストランを訪れる。他人の皿にフォークを伸ばし、つまみ食いをするなどということはしない。

その点、僕ら日本人はさまざまな料理を少量ずつあれもこれも食べたがる民族だと思う。懐石料理がいい例だろう。レストランでも当たり前のようにシェアをするのが常だ。

こうしたジャパニーズスタイルの食文化が、実は栄養学的に非常なメリットがあることを僕は改めて知ることになる。多種類の食材を摂ることは、それだけ多種類の栄養を摂ることにつながるということを知ったのだ。

きのこ、海藻、豆類が
圧倒的に不足していた。

「ナガトモは日本人じゃない。イタリア人だ」と何度となく言われてきた僕も、食事スタイルは日本人そのものだ。

イタリアに移籍したての頃は、ヘビーな外食続きですっかり胃腸が参ってしまった。それを見かねて、姉の麻歩が僕の食事の面倒を見るようになり、自宅で食事をする機会が増えた。

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主菜、副菜、汁物の他に、必ず酢の物やおひたし、煮物などの副々菜が食卓に並ぶようになった。撮影/長友佑都

パスタ一品がどんとテーブルに乗るのではなく、味噌汁やまぜごはん、漬物といったザ・和食が食卓に並ぶことも珍しくない。

以来、姉が工夫を凝らしてくれている料理で、それなりに多種類の食材を食べているつもりでいた。ただ、遠征などが入るとそれもままならないことが多かったのは事実だ。

ある日の僕の食事内容を見た管理栄養士の石川三知さんに、こんな指摘を受けた。

「食材と栄養素はリンクしています。食材の種類を増やすと、それに比例して栄養素を補給することができます。現時点の食事で圧倒的に不足しているのが、きのこ類、海藻類、豆類、種実類など。これらを積極的に摂ることで不足しがちな栄養を補充することができます」

確かに、一日のうちで摂る海藻は朝食のおにぎりに巻いた海苔だけ、豆類といえば味噌汁の味噌だけという日もあるにはあった。逆に突出して摂取量が多かったのが肉類や果物、穀類。つまりタンパク質と糖質のみ。分析結果を見せられるまで、自分では気づかなかったことだ。

しかし、きのこも海藻も豆も、どちらかというと地味な食材。付け合わせかトッピングというイメージがあり、決して一度に大量に食べる食材ではない。果たして取り入れる意味があるのだろうか? と内心僕は思っていた。

副々菜のごはんの供で
ビタミン&ミネラル補充。

ヒジキやシイタケ、切り干し大根などの常備菜を作り置きしておき、食事のたびに添えるようにしてみては、という石川さんのアドバイスが姉のもとに届いたのは、それから少ししてのことだ。

海藻を摂取するとカルシウムやマグネシウムなどのミネラル類が補え、きのこ類を摂るとビタミンDおよびB群が摂取できるということだった。

姉はさっそくこのアドバイスを取り入れ、食卓には海藻の酢の物、梅ヒジキ、切り干し大根の煮物など、副々菜とでもいうのだろうか、ちょっとした小鉢が添えられるようになった。

ただし、僕と姉の家族はそろって、食欲旺盛。もりもり食べるタイプだ。作り置きしようにも一度の食事で食べ切ってしまい、今のところ「常備菜」にはなっていない、と姉は苦笑している。

[ 石川さんコメント ]

食事を変えてから体調がいいと実感しているとのことですが、その理由のひとつは、食べる食材の品目数が増えたことだと思います。

ひとつのものを大量に摂る必要はありません。栄養素はどれかひとつを多く摂るのではなく、より多くの種類を摂ることが重要です。ひとつひとつの栄養素は網目のように繫がって互いの働きを助ける役割を果たします。

これはサッカーにたとえると分かりやすいかもしれません。ストライカーとキーパーだけでは試合になりません。11人の選手が連携して初めて、チームプレイが成り立つのと同じことなのです。

さて、今の僕は、きのこや海藻、豆、ナッツなどの種実類を毎日のように食べている。チームのクラブハウスでの食事では不足しがちなこれらの食材を、姉が意識して取り入れてくれているのだ。

だが、それだけではない。6月に一時帰国した僕は、オフ状態に突入した。シーズン中ほどストイックに食事に気を配ることはないのだが、たとえば今日、ホテル近くのスーパーで僕が買ったものといえば、

・サラダ
・オクラとワカメ、大根の和え物
・ヒジキの煮物

どうやら僕のカラダがこうしたものを欲しているらしい。改めてそんなことに気づいたのだった。


多種類の栄養
糖質やタンパク質は、ビタミン、ミネラルなど多くの微量栄養素の力でカラダに取り込まれ活用される。
常備菜
料理の手間を増やさずに、さまざまな栄養素を補充する常備菜は、3〜4日分作り置きしておくと重宝する。
互いの働きを助ける
たとえば8種類のビタミンB群はB1だけが働くということはなく、8種類すべてがチームのように連動して糖質やタンパク質の代謝に関わる。



YUTO NAGATOMO

●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。

構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)