マガジンワールド


食事革命 vol.6 食材の数に注目する。

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vol. 6 タンパク質補給術を考える。

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練習の前後には体幹ヨガ&ストレッチを必ず行う。
僕たちアスリートにとって筋肉のケアは毎日の歯磨きにも等しい。瞬発力と持久力の両方が要求されるサッカーという競技、とくに反応速度が期待されるサイドバックというポジションでは、全身の筋肉を総動員してパフォーマンスを発揮する必要がある。それに応じたケアなしには、闘い続けることはできないのだ。

日々のストレッチは、もちろん欠かすことはない。練習前と練習後は体幹ヨガとストレッチを組み合わせた動きを30分以上行い、筋肉に刺激を入れてカラダと対話することにしている。

もちろん、食事面から筋肉をサポートすることも常に念頭に置いている。その基本は筋肉の材料であるタンパク質の補給だ。

ここで、タンパク質の基礎知識についてざっくり触れておこう。筋肉は水分を除くと、ほとんどがタンパク質によって構成されている。当然、十分な材料が入ってこなければ、筋肉はどんどん分解されてしまうことになる。

カラダは必要に応じてある程度の栄養成分を作り出すことができる。たとえば、脂肪は糖質から合成されることもあるし、逆に脂質からエネルギー源の糖質を作ることもできる。ところが、3大栄養素のうち、タンパク質だけはそう簡単に自前で調達できないのだ。

というのも、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で合成することができないから。この9種類のアミノ酸のことを「必須アミノ酸」という。

具体的には、
・バリン
・ロイシン
・イソロイシン
・リジン
・メチオニン
・フェニルアラニン
・スレオニン
・トリプトファン
・ヒスチジン
の9種類だ。

20種類のうちひとつでもアミノ酸が不足するとタンパク質は合成できない。つまり、必須アミノ酸は基本的に食事から摂るしか方法はない。

筋肉は常に分解と合成を繰り返していて、栄養が足りなければ不足分を補うため、いとも簡単に筋肉が分解されて利用されてしまう。いくら筋トレをしても思うようなカラダづくりができないという人は、もしかすると栄養不足か筋肉を合成するだけの十分なアミノ酸が摂れていない可能性がある。

動物性+植物性、
肉と魚は4:6。

というわけで、食事でのタンパク質の補給はアスリートの命題といってもいい。補給量でいうと、一般の人なら体重1kg当たり1gのタンパク質で十分だろう。体重60kgなら1日60g。これは肉や魚を1食100gずつ食べればカバーできる量と考えていい。

ところが、日常的に運動をする場合となると話は別。体重1kg当たり1.4〜1.8g、アスリートならおよそ2gのタンパク質量が必要で、単純に考えると一般の人の倍。

食事スタイルを変える前の僕は、一度の食事につき、肉なら肉、魚なら魚と1種類の主菜を食べていた。でも、どうやらそれでは十分ではないことを石川三知さんからのアドバイスで知った。

ひとつの食材を大量に摂るだけでは多種多様な栄養素を賄えないという。タンパク質食材でいうと、鶏肉ばかり食べていても、それは鶏肉に含まれているアミノ酸しか摂れないということ。食材に含まれているアミノ酸の構成比率はそれぞれ違うので、タンパク質食品にしても、できるだけバラエティ豊かな品揃えをする必要があるというのだ。

筋トレでカラダづくりをする場合、タンパク質補給はもっぱら低脂肪高タンパクのささみから、という人が少なくないと聞く。でもそうした食事法はおすすめできないのだ。

ともあれ、このアドバイスを受け、現在、僕のタンパク質補給術は、動物性タンパク質を1〜2種類と植物性の1種類を組み合わせて食べるというものになった(もちろん、自宅での食事に限るが)。

たとえば、ある日の夕食のタンパク質補給源はサバの塩焼きに牛ヒレ肉のローストビーフ、そして冷や奴。またある日の夕食は、スズキのソテー、ホタテのオーブン焼き、豆乳ポタージュスープという具合。

以前に比べて食材の種類だけでなく、食べるタンパク質の量自体も格段に増えた。鶏の胸肉なら2枚、魚はフィレ状のものを2枚くらいは食べていると思う。

ただし、タンパク質の量を増やすと、自動的に脂質の摂取量が多くなってしまうことがあるので注意が必要だ。肉を食べるときは鶏肉か脂肪の少ない牛の赤身肉を選ぶ。幸いなことにイタリアでは和牛のような脂肪の多い肉を食べる習慣がない。スーパーで売っているのは新鮮な赤身肉の塊だ。それをシンプルなグリル料理で口にすることが多い。

また、ミラノにはイタリアの漁港で捕れた新鮮な魚が集まってくるので、これもまたシンプルに焼いただけのものを食べる。肉と魚の比率は4:6といったところだろうか。僕はもともと肉好きなのだが、魚を積極的に食べるようになってからは、食後の胃腸の感覚が軽いということに気がついた。

主菜の摂り方に関する僕のこの戦略は、量の調節次第で運動をする一般の人にも必ず役立つはずだ。


20種類のアミノ酸
筋肉、皮膚、血管などカラダの主要パーツを作るタンパク質はすべて20種類のアミノ酸から作られる。
分解と合成を繰り返す
筋タンパクの分解は運動中と欠食、合成は運動後、食事という条件によって促される。よって欠食は厳禁だ。
アミノ酸の構成比率
同じタンパク質食材でもあるアミノ酸が突出し、あるアミノ酸は不足気味というように構成比は異なる。



YUTO NAGATOMO

●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。現在インテル・ミラノに所属。2016/2017年のセリエAも開幕!

構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)