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第1回 初めてのおそろい。


コロポックルの小屋

koropokkur

クウネル編集部の塚越です。人より多少サイズが小さいため、コロポックル系に属しています。目線も若干低いので、世界が広く見えて仕方ありません。ここでは、そんな重心低めな目線で見た毎日をお伝えしたいと思います。

 

第1回
初めてのおそろい。

先日ひさしぶりに叔母を訪ねました。母の姉にあたるその人は、昔から陽気で豪快。笑顔もかわいく、姪っ子、甥っ子からの人気も絶大な“姉御系おばちゃん”でした。しかし昨年、彼女の夫である叔父が倒れてから、自宅介護の日々。いわゆる老老介護です。歩くのが難しくなった旦那さんの世話を、ひとりで担っています。

そんな叔母を元気づけようと、母と私で何かプレゼントすることに。母が選んだのは薄いパープルが基調のヨットパーカ。しかもマルチボーダーです。80に手が届こうかという女性が着るには、明らかに若過ぎなデザインです。しかし。「これいいわ~。配色が気に入ったわ~。お母さんも買おうっと。書道教室にも着ていけるし」。上がり続ける母のテンションを下げるのもはばかられ、「どうかと思うよ」の言葉を飲み込む、ヨーカドー。

果たして、叔母に「いいもの買ってきたよ」と渡してみると。これまた大喜び。「あら、これ帽子(フードのこと)がついてるの?」「きれいな藤色だねえ」「縫製がしっかりしてるもの」。……ああ、良かった。叔母の笑顔に安堵します。

そして「それ、お母さんとお揃いなんだよ」と告げると、顔中パアッと光らせて、「そうなの? お揃いなの?」と、まるで子供のようにはしゃいだのでした。戦時中に少女時代を過ごした母や叔母の世代にとって、姉妹でお揃いの服を着ることは、とてもとても稀なことだったのだろうと思います。そしてとても贅沢なことだったのだろうと。70年目の初の“おそろ”。その明らかに若過ぎなパーカを挟んで、母と叔母がいつまでもはしゃいでいるのを、ふたりのお母さんになった気持ちで見つめた出来事でした。