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BRUTUS 890号:花と花束。

BRUTUS 890号:花と花束。

BRUTUS No. 890

「女のひとが花の名前を沢山知っているのなんかとてもいいものだよ」とは、茨木のり子さんの詩の一節。もちろん、花の名前を沢山知っている男も、とてもいいもの。春の花がフラワーショップの店頭に咲き乱れる今、大切な誰かに贈るために、自分自身のために、とっておきの花を選んでみませんか。男女問わず楽しめる、花と花束の入門書を作りました。

岡尾美代子さん、坂口恭平さん、川瀬敏郎さんらに尋ねた「私の好きな花」。長島有里枝さんが撮影した東京花市場。世界的写真家・ジョエル・マイロウィッツの写真集『WILD FLOWERS』や花にまつわる映画の名シーンなど、カルチャーの中の花。花道の歴史と、その極北といえる花道家・中川幸夫の作品……。
ブック・イン・ブックは「FLOWER SHOP & BOUQUET GUIDE」。評判のフラワーショップ24軒に、5,000円のブーケサンプルを花の名前などのデータ付きで作ってもらいました。初心者のための、花の買い方、飾り方、長持ちさせるコツの解説も。

生活のなかにたった一輪の花があるだけで、部屋の空気はがらりと変わり、季節や時の移ろいがぐっと色濃く感じられる。この春、花のある暮らしを始めましょう。



CONTENTS


特集
花と花束。

私の好きな花。
岡尾美代子(スタイリスト)/坂口恭平(作家、音楽家ほか)/鈴木理策(写真家)
アダム・シルヴァーマン(陶芸家)、ラヴィ・グンワーデナ(建築家)/川瀬敏郎(花人)

ブルーノ・ムナーリの花教室。

いろいろなモノに花を飾ってみる。

東京花市場。
写真・長島有里枝

花屋の一日。

“WILD FLOWERS” in New York/Photo by Joel Meyerowitz

パリのフローリスト。

花と映画と男と女。

花屋の看板娘。

BOOK IN BOOK
FLOWER SHOP & BOUQUET GUIDE
春の花束を買いに。

佐助の花鋏。

山の花を生ける。
片桐功敦(花道みささぎ流家元)

花道の歴史。
井上 治(京都造形芸術大学准教授)

これも、花。
花道の極北、中川幸夫の花。

 

…and more!


From EditorsNo.890 フロム エディターズ

好きな花の話。

帝国ホテルに行ったらロビーに見事な桜が生けてあり、来客の目を楽しませていた。ホテルや百貨店、バーやカフェなどには決まって花を置いているところがある。ちょっと変わったところでは、五反田の焼き鳥『鳥茂』。トイレにはいつも百合の花が飾られている。このことを教えてくれたキュレーターズ・キューブの桝村旅人さんを連れて飲みにいくと、確かに百合の花があった。聞くと女将が近所の花屋で買って自分で飾っているのだそうだ。白百合は受胎告知で天使が持つ花、花言葉で「純潔」を意味する。トイレだからというわけではないのだろうが、どことなく感じのいい花だった。

澁澤龍彦の『フローラ逍遥』という美しい本がある。水仙、椿、梅、菫(すみれ)、チューリップなど馴染み深い花について、その名の言われから逸話まで、美しい図版とともに洒脱な文章で綴られている。似た本に荒俣宏の『花空庭園』があり、その前書きには「澁澤大魔王が〜挿絵に使えるような古い植物図を所持せるや否や、と、著者に下問あったのである。」とある。当時、荒俣さんは植物図譜を持っておらず、これをきっかけに集めるようになったのだそうだ。植物図譜と言えばレヴィ=ストロースの『野生の思考』は表紙に花の図譜が使われている。これはフランス語のパンセ(思考)に由来しており、表紙の花はまさに「野生のパンジー」なのだが、花が表紙の本を集めてみるのも面白いように思えた。

花は写真とも相性が良い。生け花は作品が残らないので写真に残す必要がある。前衛いけ花作家の中川幸夫は土門拳に写真を教わったそうだ。その中川の作品を掲載できることになり喜んだが、なかなか良い色見本がなかったため、銀座のギャラリーで本人が焼いたプリントを見せてもらった。そこには作品集で見たよりずっと艶めかしい「花の死」が写っていた。これは貴重な体験だったと思う。ほかにも長島有里枝さんに花市場を撮影してもらったり、巨匠ジョエル・マイロウィッツ(81歳)に名著『WILD FLOWERS』の話を聞けたことは嬉しい出来事。

花の面白さは見たままなのだから言葉を尽くして説明しても仕方ない。都会でも花は身のまわりの至るところにあるので、少し知るだけで日常もぐっと楽しくなる。花言葉を調べれば、その日出会った野花で簡単に一日を占うこともできる。お金もかからないし季節にも敏感になる。それ以上になにがある? 花の名前を言えるとモテるんだって。本当か? 茨木のり子さんの詩に「女のひとが花の名前を沢山知っているのなんかとてもいいもんだよ」という一節があったけど、きっと花の名前をたくさん知っている男も悪くない。

●町田雄二(本誌担当編集)



From EditorsNo.890 フロム エディターズ

花の名前、いくつ言えますか?

花市場の朝4時。カラフルな春の花が仲卸店の軒先に大量に並ぶ様子は圧巻!(誌面をご覧ください)。それぞれの花に、名前と品種名が書いてあるのですが、同じガーベラでもキューピッドやチークといったような品種名があり、見分けがつきません(汗! 微妙に色も形も違うのに、これまで、ざっくりと“ガーベラ”とか、“チューリップ”とか、“バラ”とかと呼んでしまっていてごめんなさい、と心の中で咲き誇る花たちに謝りました。たくさんある品種の中には、実はコストがかかったり生育環境の違いによって、たった1回しか作られない品種もあるそうで、まさに花って一期一会の世界。花屋さんで「あのときと同じ花束を」と言っても同じ花束は二度と作れないのです。

そう思うと、花の命って本当に儚い。花束って、最も贅沢なギフトかもしれません。だからこそ、きちんとセンスのよい花束をオーダーできるようになりたいもの。これまでは、メジャーな花か、大きめの花を指さしながら「このお花を入れてください」ということしかできなかった私のような初心者のみなさま! 今回担当した「FLOWER SHOP&BOUQUET GUIDE」では、各ショップの花束に入っている主要な花の名前をデータ化しています。「見たことはあるけれど、名前を知らなかった」、なんて花、みなさんはいくつあるでしょうか?(私は、この特集を終えて、春の花20種くらいは豆知識とともに言えるようになりました)。花の名前だけじゃなく、花束のオーダー法から、飾り方まで、ぜひ参考にしてみてください。

●川端寿子(本誌担当編集)



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