旅の動機や目的はさまざまです。友人が嬉しそうに話してくれた旅先での話に耳を傾けたり、たった一枚の写真に心を揺さぶられたり、映画の一シーンに魅せられたり……。旅への思いがどんどん募っていく。あぁ、いつの日か、あの場所へ。そう思い立ったときに、旅はすでに始まっているのです。今号のブルータスは旅特集「SOMEWHERE SOMEDAY いつか旅に出る日」。そこに想いを馳せるだけで心が満たされる、ピースフルな目的地を集めました。
今回訪れた場所は日本から世界まで5箇所。
荒々しい海岸線と森に包まれるカルフォルニアの聖地、ビッグ・サー。
雄大な自然と、グラデーションに染まる大地を有する西オーストラリア州。
州を挙げて環境問題に取り組み、未来へ文化を紡ごうとするハワイ。
山と大地と海が織りなす景色と潜伏信仰の歴史に触れられる熊本県は天草。
日本全国から食いしん坊たちが足繁く通う美食の地、青森県の八戸。
旅に行きたいと思うことは、平和を願うことと同じ欲望なのかもしれません。どこかで理想の人と出会いたいと願うように、本当に心から行きたい場所を探す。またいつか、旅に出る日のために。
特集
SOMEWHERE, SOMEDAY
いつか旅に出る日。
BIG SUR ハンター・S・トンプソンのセルフポートレートに呼ばれて。
WESTERN AUSTRALIA 大地のグラデーションに染まる
HAWAI‘I 地球を見直すことができるところ。
旅上手のパッキング術 1 ── 相澤陽介
旅好きフォトグラファーの次なる目的地。
天草静かなる島々。
旅上手のパッキング術 2 ── 栗野宏文
Book in Book
朝をたのしむ旅。
旅上手のパッキング術 3 ── 平野太呂
LANDSCAPE HOTEL 世界の絶景ホテル。
八戸人情厚い美食の街へ。
究極のエコ・トラベル「 伊能ウォーク」入門。
TOKYO ESCAPE この夏の東京脱出計画。
…and more!
いつだったか、J-WAVEでジョン・カビラが旅に行くときは、いつもと違う香りのキャンドルを持っていくようにしている。と、言っていた。旅の記憶を香りにおさめるためだという。いいルールだと思う。香りによってふとした瞬間に蘇る旅の記憶は、写真でたどる旅の記録とは違って、不意をつかれる感じがたまらないですよね。
ビッグ・サーに訪れたら一度は泊まるべきだといわれるロッジ、〈ディージェンス・ビッグ・サー・イン〉で僕らを出迎えてくれたのは、桃の花のしとやかな香りでした。くわえて、ビッグ・サーを包みこむ潮風に燻されたレッドウッドの香りに訓市くん(野村訓市)はいたく反応していた。メローになると。この香りをビッグ・サー土産にと思い、せっせとスーヴェニアショップをまわってみたものの、キャンドルも石鹸も、収穫はなかった。仕方ないので記憶のフォルダに格納しました。これでいい。
音楽もまた、旅の記憶に不意打ちをかけてくれます。ビッグ・サーを移動中、訓市くんがiPhoneに入れた自身のありものから、ラジオ番組さながら、曲をセレクトしてくれてました。海岸線のカーブが続くころ、彼が選んだのはロバート・パーマーがカバーしたマーヴィン・ゲイの「Mercy Mercy Me / I Want You」でした。きらびやかなアレンジがいかにもロバート・パーマーらしいカバーです(そのゴージャスさが嫌いっていう人もいたりします)。1990年、夏のテーマソングとして長い間、ボクの記憶に刻まれていた曲でしたが、すっかりビッグ・サーの記憶として上書きされてしまいました。これもまたいい思い出です。
いつかどこかで桃の花の香りに出くわしたら、きっとビッグ・サーを思い出すはずです。ふとした瞬間に蘇る旅の記憶っていいものですね。旅に思いを馳せるいい機会かもしれません。これこそTraveling Without Movingーー(低いトーンで)こんばんは、野村訓市です。
アラスカの氷河、アフリカの大自然の写真。もしかしたら一生行くことがないかもしれない、と思う場所の写真に出会うとワクワクする。「旅フォトグラファーの次なる目的地」で石塚元太良さんを取材させていただいたときのこと。アトリエには、旅の写真が入った箱と6冊の本。ライフワーク的にアラスカの撮影をしているとのことで、見せていただいたのは、アラスカのゴールドラッシュ時代の家族の手記や写真が収められた『ALASKA GOLD』や、カヤックやキャンプの手引書『kayaking & camping in Prince William Sound』。後者の手引書を頼りに、カヤックに乗って、撮影スポットを探す旅へと繰り出しているとのこと。ときには熊に襲われる危険もあるそうで、熊よけの方法とかまで細かく書いてあり、アラスカの撮影旅行時には必携の一冊だそう。
誌面では、次に行きたい目的地として、ナミビアを紹介していただいたのですが、それに関連したアフリカ本として教えてくれたのが、ポーランド人のジャーナリスト・リシャルト・カプシチンスキが40年かけてアフリカ諸国を取材してまとめた『黒檀』。「アフリカを知る本として秀逸です。僕は、旅をする前に興味がある旅先の本を読むんです。そこを血肉化していく作業が旅なのかもしれない」と石塚さん。世界情勢的に旅に出られない日々が続くものの、これまで旅してきた人たちの写真や紀行文、さらにその土地の文化を描いた本を読むだけでも、脳内でも旅はできる。いつか旅に出る日のために、この一冊を通して、ぜひ好きな風景に出会ってみてください。
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