“世の中には2種類の本しかないという。読まなくてもいい本と、読んでもロクなことにならない本”。
「危険」とは本の内容ばかりを言っているのではありません。たとえ悪徳の書であっても、読み方次第では毒にも薬にもならないことも。翻ってどんな本であれ、読み方次第では人生を変えてしまう危険性をはらんでいるとも言える。価値観を転換させる読書案内「危険な読書」シリーズ3冊目となる今号は、毒々しい真っ赤な表紙が目印。ページを開く前の自分にはもう戻れませんので、あしからず。
社会問題、ホラー、政治、スポーツ、小説、ノンフィクション、詩、ビジュアル本、辞書……。様々なジャンル、角度から脳を揺さぶる読書体験へといざないます。付録の小冊子「理系読書99」は、思考をハッキングし、これまでの価値観を書き換えてしまう理系本をずらりとご紹介。
世の中にはまだまだこんな本があったのか!
そんな驚きをもたらす時間へとご案内します。
特集
危険な読書
骨太! 社会派ノンフィクション。
アメリカ社会の底辺からの手紙。
危険な作家 ①大江健三郎/②ウラジーミル・ナボコフ
自民党の2大潮流を辿る読書。
生きづらさと実録私小説。
国語辞典を読む。
人の形をしたメディア。
危険な作家 ③高原英理/④山尾悠子
ポップソングと江戸文芸。
この世は、クトゥルー神話。
奇妙な生き物が出てくる本。
危険な作家 ⑤アラン・ロブ=グリエ/⑥森泉岳土
書体敏感肌。
都市のカナリアたち。
スポーツは肉体を酷使するゆえ言葉を求む。/女陰、男根をめぐる言葉の旅。
“越境”するための読書。
ビジュアル系バカ一代。
Book in Book
理系読書99
危険な本屋大賞2018
NETFLIX for 2018-2019 NEW YEAR HOLIDAY
…and more!
世の中には2種類の本のしかないという。読まなくていい本と読んでもロクなことにならない本。そんな言葉で始める「危険な読書」シリーズも今年で早くも3回目。まず初めての読者に向けて書いておきますと、「危険な読書」とは政治的、思想的に偏った本であったり、エロ・グロ・ナンセンス専門のブックガイドではありません。過激な本も中には出てきますが、内容よりも、それをどう読むかの方が大切。一方で2018年のベストセラーなど、どこでもすぐに見つかるような本は登場しませんのであしからず。
巻頭は評論家の荻上チキさんとライターの武田砂鉄さんの「骨太! 社会派ノンフィクション』。ラジオの本番同様、よどみなく語る荻上さんと、それに理路整然と合いの手を入れていく武田砂鉄さんの対談は文字起こしがほぼほぼそのまま原稿になるという、精度の高い対談となりました。続く、ベトナム系アメリカ人である詩人のリン・ディンさんと小説家・川上未映子さんの対談は、リンさんの近著『アメリカ死にかけ物語』(河出書房新社)を題材に、トランプ大統領の元であえぐ、アメリカ社会の底辺を生きる人々のリアルな声を拾います。「アメリカはなんでも売り物にする。たとえそれがゲットーでも魅力的に見せてしまう。真実のゲットーは本当に酷いところなのに」というリンさんの言葉は、日頃、MVなどで見慣れた我々の“ゲットー”のイメージを覆す印象的な言葉でした。
少しマニアックな読書の楽しみについても紹介します。たとえば国語辞典を「読書」する人々や本の書体を敏感に感じ取る人たちなど。特に後者のページでは本文にそれぞれ本読み好みの精興舎書体、本欄明朝、凸版文久体、イワタ明朝体を使うなど、地味に手間暇をかけて作ってみました。書体を感じる“シックスセンス”を手に入れたら、読書する楽しみもより一層深まりそうな気がしています
毎度お馴染みの「危険な作家」は大江健三郎、ナボコフ、高原英理、山尾悠子、アラン・ロブ=グリエ、森泉岳土をピックアップ。「小説の楽しみにふたつある。『視る』楽しみと『よじ登る』楽しみだ」と書いたのは、作家・山尾悠子の作品を評した千野帽子さんの言葉。さて、よじ登るような読書体験をした人はどれだけいるでしょう? ぜひ味わってみたいものです。そしてフランス映画で「アラン」といえば、「ドロン」、ではなく「ロブ=グリエ」と答えた貴公はなかなかの趣味人。79歳の“暴走爺”が少女との交歓を題材にした小説『反復』はナボコフの『ロリータ』をある局面では凌駕していた、と執筆の滝本誠さん。ナボコフvsロブ=グリエ、危ないオヤジ対決の軍配はどちらに!?
読書は未知なる世界との遭遇であり、思いもしなかった自分自身を発見するためのものでありたい。世の中にはまだまだこんな本があったのか、そういう発見のあるブックガイドになれば良いなと思っています。本なんて毒にも薬にもならないと思っている人にこそ読んでもらいたい。凝り固まった己の殻を穿つ、そんな“弾丸”となり得る読書体験のすすめです。
今年の「危険な読書」は、真っ赤な表紙が目印。付録の小冊子は「理系読書99」です。『人間をお休みしてヤギになってみた結果』『ダンゴムシに心はあるのか』『四次元が見えるようになる本』など、紹介されている本は、一見するといわゆる“危険”のイメージからは遠いかもしれません。ですが、「これまで見ていた世界がまったく違うものに見えてしまう」「考え方を変えられてしまう」という点では、どれもかなり危ない本といえるのではないでしょうか。
たとえば、『Modernist Cuisine at Home 現代料理のすべて』は元宇宙物理学者が科学的な視点で“美味しさとは何か”を解き明かした本。分厚い大判のビジュアル本のような造りで、食材や調理器具の断面図が並んだ美しい一冊です。料理が苦手な人にとっては、目に見えない“美味しさ”を科学的に説明してくれるありがたい本になるかもしれませんし、「まごころを込めて作れば料理は美味しくなる」を信じている人は、幻想を打ち砕かれたような気持になるかもしれません。食卓に並ぶのはさまざまな化学反応が生み出した<化合物>であると考えてみると、日常の風景がちょっと変わってきませんか? この本にピンと来た人には『Cooking for Geeks』や『人間は料理をする』もおすすめです。
まずは、「自分は文系だから……」と構えずに、読んでみてください。ド文系の私でも面白く読めたので、ご安心を。
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