女神〔ミューズ〕(山口 路子 著)
彼のカメラの前で、体の中心を撃ち抜かれ、私はくっきりと存在する欲望を見た。「私は彼のミューズになりたい。マン・レイにとってのキキのような」―若き天才カメラマン<カタギリリュウ>と出会ったとき、私は普通の恋を捨てた。東京とパリを舞台に熱い愛の物語が始まる。
「私は目を閉じて、マン・レイが撮ったキキを思い浮かべた。挑戦的な微笑み、挑発の肉体。服にまで乗り移ったといわれる官能。そしてファインダー越しにキキを見つめる、マン・レイのぎらりと濡れた瞳。/腿の内側をつるりと汗がすべり落ちる。・・・・・・シャッター音が響き始める。体じゅうが熱く脈打ち、目を閉じたまま、私は力を抜いてゆく」
愛と官能が奔流となって走る、めくるめく恋愛小説。新鋭が書き下ろした愛と官能の長篇小説。