幻影シネマ館(佐々木 譲 著)
●内容紹介
世界初の〈実在しない映画〉の本!
36本の幻の映画を、そのストーリーはもちろんスタッフ・キャストの魅力までをも縦横に論じた衝撃の書。これは壮大なフィクションなのか?
たとえば――ハリソン・フォードが私立探偵を演じる「ザ・バッド・コントラクト」(1991年作品)。著作権盗用問題で裁判中のため(訴えたのは、あのロバート・B・パーカー)いまだ未公開。〈だがわたしは、ロスアンジェルスの映画館のスニーク・プレビューでこれを観た〉。
(*「スニーク・プレビュー」とは、通常の映画上映のあとに、観客の反応を見るために未公開の新作を上映すること。何の映画かはあらかじめ情報は与えられない。)ここから50年代のハリウッドを舞台にした見事なストーリー紹介が始まる。共演は、美人女優にシャロン・ストーン、尊大で厭味な映画会社重役にジーン・ハックマン。ハードボイルド・ミステリ定番の名台詞もきまっている。〈わたしはつつましい人間だ。ライオンが奴隷を食う見世物しか娯楽がないのであれば、コロセウムに行ってポプコーンを買い、黙ってそれを観る〉。
――「椿三十郎」と「総長賭博」のハリウッド版リメイクから若きケビン・コスナーの主演作、そしてポランスキーの知られざる傑作、さらにはエロティシズム溢れるケン・ラッセルの問題作まで、観たことも聞いたこともない映画が36本。各映画に宇野亜喜良の素晴らしい挿絵を付す。魅力溢れる空想映画館。
●著者紹介
ささき・じょう 1950年生まれ。『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞をトリプル受賞。近年は『警官の血』『制服捜査』『笑う警官』など警察小説のジャンルで新境地を開いている。