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怒りのおさめ方(アルボムッレ・スマナサーラ 著 しりあがり 寿 著)

怒りのおさめ方

— アルボムッレ・スマナサーラ 著 しりあがり 寿 著
  • ページ数:248頁
  • ISBN:9784838725175
  • 定価:1,430円 (税込)
  • 発売:2013.01.31
  • ジャンル:自己啓発
『怒りのおさめ方』 — アルボムッレ・スマナサーラ 著 しりあがり 寿 著

紙版

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ブッダが言いたかった重要な教えのひとつが、「怒らないこと」でした。誰もがやっている怒りをやめれば、幸せになれると言います。

なぜなら、怒りは毒のように体中を回り、心も体もボロボロにしてしまうから。そればかりか、他人に伝染して、みんなが不幸になります。それは本当なのか?怒るなというけど、怒らないとダメなこともあるのでは?いい怒りと悪い怒りもあるはず?

漫画家のしりあがり寿さんが、日本テーラワーダ仏教協会長老のスマナサーラさんに、その辺のことを率直に質問したのが、この本です。

話題は、いつしか、イジメや自殺、竹島問題やチベット問題にまで発展します。怒りと現代が抱えている問題、そして、具体的に怒りをなくす方法も伝授いたします!





ずっとなんとなく仏教が好きだったんだよね。

修学旅行で観た色あせた仏像や緑に埋もれる山門、慎ましくどこか淡々としたお葬式、そんな仏教ぽい光景が好きだった。会社員時代、悟りの境地に憧れ仕事中なのに瞑想のマネをしてみたり。

そんな自分だったから、仏教の源に近い教えの長老とお話ができた対談は、憧れのアイドルに会えるかのような緊張でドキドキの時間でしたよ。長老はボクのどんな浅はかな質問にも柔らかく平易な言葉で答えてくださったし、時折のぞくチクリと鋭いユーモアには長老の人間的な魅力がいっぱいつまってた。

いやー刺激的だったなー、ボクなりにお話を伺っていろんなこと考えました。

例えば仏教が宗教というより人間学のようなものであること。そこには絶対的な力で人々を翻弄する「神様」なんていないし、限られた人しか触れられないこの世の秘密があるわけじゃない。あるのはただまっすぐ深く人間を見つめた結果の知恵でしかないということ。

あるいは、この世界は常に変化し続け、欲望が達せられることはない。自我など便宜上のフォルダーにすぎず、自我へのこだわりが様々なことの妨げになる。死は免れることはできないし、怒りもまた人生きていく限りついて回る、すべてすべてー考えてみれば当たり前のこと。そんなたくさんの「当たり前のこと」が、数千年もの間に鍛えられ体系たてて、伝えられたのが仏教ではないか?というようなこと。

昔と比べれば豊かになった現代、だけど人々は幸せじゃない。富や名声を得ても死を忌避し健康だけを守っても決して満たされないそんな現代に一番必要な宗教かもしれないというようなこと。

そして様々に思いを巡らす中、自分自身一番考えちゃったのが今回のテーマ「怒り」についてだった。怒ることはよくない。だけど僕にはホントに怒らないで生きていけるだろうか。自分の大切なものを奪われた時に怒らないでいられるだろうか?そしてさらに自分たちを滅ぼそうとする敵を目の前にした時、ホントに怒らないことは正しいのだろうか?(しりあがりさんのあとがきより)

いままさに自らの文化や故郷を守るのに、怒りを捨てて強大な敵に立ち向かっている人たちがいる。仏教の国チベットでは人々が他者を傷つけることなく、自らの身を焼き国の弾圧に抗議している。

彼らは彼らのやり方で大切なもの救うことができるだろうか。

これは今「怒らないこと」が試されているのかもしれない。それは決して彼らだけの問題ではない。彼らが火を放ってるのは自らの身でなく、それを傍観している世界中の人々の良心なんだろうな。そして彼らのやり方が失敗した時に失われるのは、彼らの「教え」だけでなく人類の「人間性」そのものかもしれない。

そんなこと書きながらも、今日は朝からパソコンの調子が悪くてイライラしてる。あーっ修行が足りないな。怒るなよ「自分」!どうせ実在しないんだから。