老化か? 病気か? それが問題だ。(細井 孝之 著)
日本人の平均寿命は男女とも80歳を超え、百寿を迎える人も珍しくありません。
今40歳の人はあと60年、50歳の人はあと50年の人生があります。
この一生を充実したものにしたい。誰もが思うことでしょう。
そして誰にも共通の二つのことがあります。一つは時間の流れは変えられないこと、もう一つは自分のからだは「手持ちの」自分のからだ、それのみであることです。
時間がたつほど、体の「さびつき」(酸化)や「こげつき」(糖化)が進み、同時に体内のホルモン環境が変わって行きます。
「人生50年」の時代には経験しなかったからだに対する時間の影響が「人生100年」ではさまざまな形で出てくるのです。
さびつきやこげつきは動脈硬化をはじめ、さまざまな病気のもとになりますし、病気の後押しもします。
また、体内のホルモンは成長、生殖、恒常性維持(体内の環境を一定に保つこと)に関係しますが、成長、生殖に関する役割がおわる年齢になると減少するものが増え、その結果恒常性維持のほうにも影響がでてきます。
これらのことが年齢とともに起こる変化=老化につながります。
老化の進み方は、人によってさまざま。「見た目の老化」に大きな差があることは久しぶりの同窓会に出れば一目瞭然です。
老化は加齢にともなって増加する病気のもとにもなりますが、老化それ自体は病気ではありません。ただし、単なる老化による変化と病気による変化の区別が難しいことは確かです。
病気の診断は自覚症状や診察した時の所見、検査値などによって下されますが、この診断はいわば便宜的なもの。病気、病名がまず存在するのではなく、体の中で起こっている変化が先にあります。その変化を医学的に整理した結果できたものが病気です。
脳梗塞、心筋梗塞、胃がん、肺がん、肺炎、骨折、けが、などのように病気であるかないかがはっきりしたものと、高血圧や糖尿病など見た目の変化はほとんどなく、診断の根拠となる血圧や血糖値に線引きをしてそれに基づいて診断される病気があります。線引きをする場合は、将来心臓や脳、腎臓などの内臓に影響がくる可能性が高いところで線引きがされます。
年齢とともに自分のからだに起こるさまざま症状、それらの中には病気との関連があるものや病気とは関係なく、加齢にともなって生ずるものも多々あります。
問題なのは、病気発見の重要なきっかけになるような大事な症状まで、「年のせいだから」と思って放置しかねないことです。
心配しすぎてもいけませんが、医療機関を受診してまず診察をうけるべき状態とそうでない状態の区別、心配の度合い、こういったことについて、参考になればと思いで作成したのが本書です。できれば受診でムダ足を踏みたくないのも人情です。心身に何か変化の起きたときに、それが医師に相談すべき現象なのか単なる老化現象か、ある程度の目安があればムダ足は減らせますし、何が起きつつあるか分かれば、心構えもできやすくなるでしょう。
リストアップした症状の中にはすべての人に等しく生じる老化現象から、一刻の猶予もならない重大疾患までたくさんの可能性があります。その数ある可能性の中からあなたの変化、状態を最終的に診断するのは専門医の仕事です。
本書は、体の不調に対しての対応法のちょっとしたヒントです。何か症状があった時に参考にすることはもちろん、普段何気なく過ごしてしまう大切な自分の身体に向き合う時のチェック項目としてそれぞれの症状の有無を確認してください。