思いやりの心 江戸しぐさ(越川 禮子 監修 池田 葉子 著 池田 葉子 絵)
“江戸しぐさ”って知っていますか? “江戸しぐさ”は、して気持ち良い、されて気持ち良い、見て気持ち良い、江戸っ子のいきで素敵なしぐさです。細い路地ですれ違うとき、相手に雨がかからないように傘をかしげる「傘かしげ」、腰を浮かせて、席を詰め、ひとつ分の席を作って譲り合う「こぶし腰浮かせ」、足を踏まれた側が、うっかりしていまして、と先に謝ってしまう「うかつ謝り」……、そんな江戸っ子の、互いを思い、気遣う、自然なふるまいの数々。今の時代にこそ生かしたい、マナーの原点です。
和をもってよしとする江戸時代。江戸町方の商人の実践哲学として「江戸しぐさ」は存在しました。本書は、人として心のままに自然に他を思いやるしぐさ、そのしぐさを裏付ける豊かな知恵や経験、そうして他と気持ちよく共生して生きていく喜び、楽しみを表現した「江戸しぐさ」を江戸時代の空気を楽しく伝えるイラストとともに紹介しています。
江戸しぐさの継承者である、本書監修の越川禮子さんは、「江戸しぐさは、して気持ちいい、されて気持ちいい、見て気持ちいいしぐさである」と言います。
「江戸では、一人で生きることをしないのです。みんなと一緒に、人の気配がある中で互いに助け合って生きていくことを考えているのです」。
その中で、自分の分際を知って、自分の役割を見極め、行動します。
江戸っ子が持っている心の深いところにあるもの、それが江戸しぐさです。考える前に体を動かし、皆を敬い、いつもニコッと笑い、気持ちを目で伝えます。何につけ無視することがいちばんいけません。
江戸しぐさは、時間をかけてじんわりと効いてくる漢方薬のように、私たちの日々、人間関係を良好に整えてくれる良薬です。