辰巳芳子の野菜に習う(辰巳芳子 著)
「いのちのスープ」で著名な料理家・辰巳芳子さんは、今年91歳になる。単なる料理家ではなく、「ひとはなぜ食べなければならないか」という哲学的な命題を追究、随筆家としての評価も高い。そんな辰巳さんがクロワッサンで連載した人気企画『いのちの食卓――野菜に習う』が、ようやく一冊の本にまとめられた。「肉や魚の料理は容易。難しいのは、野菜の扱い。日々、野菜料理を難なく食卓にのせられるかどうかが、家族の健康もしあわせも左右してしまう」というのが、辰巳さんの主張だ。レシピは多彩だ。春は筍ご飯から始まり、清々しい野草のサラダ、平凡なじゃがいもやニンジンも驚くほど鮮やかに供される。独自の「蒸らし炒め」の手法で炊かれた「煮サラダ」、丸ごとセロリを使った「セロリ・オー・ジュ」、やさしい味わいの「カリフラワーのスフレ」……もう一度、おさらいしたかったレシピ、この本でしか読めないレシピも収録。たっぷりの辰巳節が冴える文章も読みごたえがある。最後に、辰巳さんからのメッセージ――「野菜を味方にして暮らすことは、しあわせに通じています」。